お葬式
その日は内輪でアラン・ロージアン1世の簡単なお葬式を挙げた。広い庭園の一角にお墓を設けたのだ。墓石はふたつ、アランの隣にリリーの名を刻んだ墓石が配置された。
子孫たちの祈りが捧げられ墓石に花輪が掛けられるとしめやかに執り行われた葬儀は終了した。
そこへ来客がひとり訪れた。
「あれ、お葬式だったの? どなたが亡くなったのかな?」
黒衣を纏った家族を見てポール・ランバートは驚いていた。
ダイアナが前に出て来て、「ダニエルのお葬式よ」と無表情でポールに告げた。
「な、なんだって! 一体どうして? この間まで元気だったじゃないか!」
ロージアン卿は狼狽しているポールを書斎に案内した。
「ダニエルが死んだなんて・・この城を買い取る意味がなくなってしまったじゃないか・・」ポールは崩れる様に書斎の椅子に座りこんだ。
「え? 何かおっしゃいましたかな?」
「もうこの城は必要ない。ホテルもやめだ、改修にかかった費用は返済して貰いましょう。ダニエルに免じてすぐに返せとは言いませんよ。」
ポールは冷たい口調でロージアン卿に契約の破棄を伝えた。
「いえいえ、すぐにでも全額お支払い致しますぞ」
「えっ」
ポールは訳が分からなかった。ダニエルの死にショックを受けていた上にロージアン卿は契約破棄の申し入れを平然と受け止めている。全額をすぐに支払えるだと?
ロージアン卿の態度は虚勢を張っているだけだと踏んだポールは、後日使いの者を寄越すから支払いを済ませるよう卿に取り付けた。
そうしてダニエルがいない城なんて用はないとばかりにさっさと城を出て行った。
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「やっぱりダンを脅迫するために城を買おうとしてたのね」
「でもダイアナとして生きてるって知ったらどうするだろう?」
「その時はその時ね、今の私たちはポールよりお金持ちだもの。大抵のことなら迎え撃てるわ!」
「ヒュ~ダイアナ、かっこいい!」
城のバルコニーからポールが帰る姿を見送っていたパイはルカとダイアナを残して城の中に戻って行った。
「これで兄さんもフランシスとの仲を認めてもらえるわね。彼女の家族は兄さんが嫌いなんじゃなくて、フランシスが苦労するのを心配しているだけだもの」
「そういえば君はここの本当の家族なんだろう? 養子じゃなくて」
「あっ、そうよ。性別が変わってしまったからそういう言い訳を考えただけ」
「やっぱりそうか。君たち家族は良く似てるから養子って聞いて意外だったんだ・・ところで明日は新月だ。俺が傍に付いてるから・・部屋に入れてくれよ?」
「ええ、私の傍に居てルカ・・」ダイアナは不安と期待が入り混じった目でルカを見上げた。




