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黄金の瞳のルカと精霊の呪い  作者: 山口三


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修復された石橋


 その日からロージアン家には精霊の加護が消え、カラド・ロージアン以降領地の維持が大変な苦労を伴っていったことが他の日記からも判明した。逆を言えばよく今まで持ったものだと思える。


「なんかあたし・・・この呪いって解くのが不可能に思えてきたんだけど」

「ふぅーーー参ったな」


「精霊がエネルギーを使って実体化したら普通の人間にも見えるようになるんだね」

「ああ、俺もそれは知らなかったな」

「妖精にはそれ出来ないよ」


「その精霊・・可愛そうだね。愛する人をひたすら待ち続けて消滅してしまうなんて・・」


 ダンは下を向いてぽろぽろと涙をこぼしていた。


「わっダン! 泣いてるの?!・・でも確かに可愛そうだよね・・あたしも悲しくなってきたよ」


 パイはダンをぎゅっと抱きしめて自分もわんわんと泣き出した。


「おいおい二人とも・・まずはアランの行方を探そうぜ。それとどうやったら償えるか女王様に聞いてみるしかない」


 そうルカは言ったものの500年近くも前に消えた人間を一人、どうやって探したらいいのだろう?


_____



 日記の調査はひとまず終了した。

 既読と未読の日記は分けてチェストに戻し、今度は図書館にある歴史資料からアランの足取りを掴めないか手分けして探すことになった。


 パイはアルバの街の妖精や精霊から話を聞いて回り、ダンは図書館に通い詰めた。ルカは首都でアランが国外に出た形跡がないか公的記録を調べ始めた。


 呪いを掛けられた原因の報告を受けたロージアン卿とレナード、エマ夫人も総出でアランの行方を追っていた。ロージアン卿とエマ夫人は残った日記を読みなおしどこかにアランの話が出てこないか調べている。

 今日はレナードとダンがアルバの図書館に向かう予定でいた。


「ウィじゃなかったダン、図書館に行く前にちょっと寄りたい所があるんだ」

「ウィ? うんいいよ」

「じゃあその前にちょっと・・」


 レナードが向かったのは城の庭園だった。あまり手入れが行き届いてはいなかったが庭は春の花が咲き乱れていた。


 レナードは花を摘みに来たらしかった。ダンはすぐレナードの行き先に思い当たった。


「バラを摘むの? 赤い薔薇かな?」ちょっとイタズラっぽい笑顔でダンは言った。


「ん? あ、ああ」


 レナードは照れて赤くなりながらも素直に認めた。赤とピンクのバラを摘んでいるとピンクのバラに枝替わりした白い蕾があるのにレナードは気づいた。


「ほう珍しいな。先祖返りしたのかな」

「先祖返りって?」


「バラは交配で色々な種類が生み出されるだろう? その交配したバラの片方だけの特性を持った枝が稀に出たりすることがあるんだ」

「じゃあ、交配に使ったバラも原種じゃない限り、その前の前のご先祖様が現れるってこともあるの?」

「そう。あるな」

「へぇ~兄さんがバラに詳しかったなんて知らなかった。どんな花が咲くか楽しみだね」


 沢山のバラを摘み花束にしてレナードは寄り道先の酒店へ向かった。



__________



「えーとこの500年近く前の大地震の頃からアランが消えたんだったな。うん、地震の記録は残ってるな」

「被害は相当だったみたいだね。城前の石橋も損傷して一時期は城が孤立してしまったみたいだ」


 図書館で古い文献を調べていたレナードとダンは石橋が描かれた挿絵を発見した。


「だから裏手に湖へ降りていけるスロープを作ったのか。この石橋って・・こんな風に真っすぐだったかな?」

「あれ、ほんとだ。何なに・・・崩れた部分を迂回して新たに作った部分と繋げたって書いてあるね」


「そうか、だから石橋がおかしな角度でカーブしてるのか。だけど崩れた方の残りの橋はどうなったんだ? そんなものないよな?」


「無いように思うけど・・これも調べてみた方がいいかもね。兄さんそろそろ蒸留所に行く時間だよ」

「よし、今日はここまでにするか」


 ダンが城に戻ると早くから首都に出掛けていたルカも戻ってきていた。


「どう? アランが国外に出た形跡はあった?」

「無かったが・・身分を偽って平民として出ていたら記録が残らないからもう追跡できないな」


「そうか・・こっちは地震の時に石橋を修理したことが分かったよ。それから・・地下にあった花嫁衣裳を持って湖へ行ってみるのはどうかな? アランは精霊とちゃんと結婚しようとしてたって言えると思うんだけど」


「そうだな、アランの行方が分からない今は何でもやってみた方がいいな」


 その足で二人は地下へ行き衣装が入ったチェストごと運び出して湖へ行ってみた。


 そこで水の精霊の女王に呼び掛けてみたが返事は無かった。

 ルカはチェストからドレスを取り出して振って見せた。


「これがアランが用意した花嫁のドレスだ! 話しぐらい聞いてくれてもいいでしょうが!」


 すると湖の対岸方向からザザザザザーーっと波音が響いてきた。それと共に女王の声が響いた。


「それがアランの用意したドレスという根拠は何だ? もしそうだとしてもあ奴が娘を置いて逃げた事実は変わらぬ! つまらぬ物を見せるな! とっとと失せろ!」


 女王の声は湖面を震わせ、対岸から聞こえてきた波音は2mほどの津波となって物凄い速さで押し寄せてきた。


「これ・・は、やばいぞ! ダン逃げろーー」


 










 


 




 

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