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北側の地下にて


 北側の改修工事が終わった。


 早速ルカとダンとパイ。いつもの3人が地下に降りて行くことになった。


「おおー見事に綺麗になってるな。前にダンと来た時は危なくて進めなかったのにな」

「あ・・うん」


 大昔に伯爵家の騎士団の詰め所だった場所は舞踏広間として華麗に復活していた。広間の隅には昔そこで使われていたであろう簡素なテーブルや椅子、騎士団の旗がまとめて積み上げられており詰め所だった名残をとどめていた。


「立派な旗だな」

「丈夫な織物だね。これ持ち帰ってどこかに飾ろうかな」

「ねーねー地下に降りる階段はこっちにあるよ」


 階段から先の工事はまだだったが、日が当たらない地下はそれほど痛んでおらずそのままにしてあるようだ。


 地下に降りると埃っぽくカビ臭い空気が3人を迎えた。

 

 地下には3つの牢屋があったがそのうち2つは倉庫代わりに使われていて、大きくて頑丈な長櫃(ながひつ)(チェスト)がいくつも置いてあった。


「鍵はかかってないね。そんなに重要な物は入ってないのかな」


 ダンがチェストを開けて行った。


 古い衣類が入った物。刀剣や盾、篭手や鎖帷子が入った物、古い時代の鍋や料理の本まで様々な物が出てきた。


「結構あるなぁ。それだけ歴史があるってことかー」

「なかなかお目当ての日記が出てこないね」


 埃にまみれながらチェストを開けては中身を出していった。ダンは中身をまたチェストに戻す役割にチェンジした。

 奥の櫃を開けていたパイが嬌声を上げた。


「見てこれ~!」

「おっ、あったか?」


 パイがチェストから取り出したのはどうやら花嫁衣裳のようだった。淡いピンク色のドレスにはパールが散りばめられ銀糸で凝った刺繍が施されていた。

 花嫁のベールも入っていて、パイはそれを頭に乗せてドレスを当てて見せた。


「ねーすっごく綺麗だね。靴も手袋もある。でも使われた形跡がないね。結婚やめちゃったのかな」

「お前が結婚するとき、それ貸してもらえ」


 まったく興味がなさそうなルカの態度にパイはむっとしながら次のチェストにとりかかった。


 8割ほどのチェストを開けた所でようやく目当ての日記が出てきた。

 それは7代ロージアン卿のローダス・ロージアンの物だった。


 次のチェストにも日記と思しき物がぎっしりと詰まっていた。


「これどうする? いちいち上に運んで読むの面倒だよね?」


 そこで3人は上の広間に捨て置かれている椅子と小さめのテーブルを運んできて地下で日記を読むことになった。


 パイがそのローダスの日記を読んだ。


「彼には子息が3人いたみたい。子供が全員男子で良かったって書いてある。ルカが言ってたようにロージアン家の呪いは女性だけに発動するからかな?」


 日記を書いてない先祖もいたが、執事の日記や騎士団の日記も混ざっており読み進めるのは大変な時間と労力がかかった。


 


「ふぅーーっ目が疲れるね」


 パイは目をごしごし擦って言った。ルカが使っている精霊石の小型ランタンは2個目の精霊石も寿命が来て割れてしまった。


「ジョージから石を貰ってくるよ」ダンは精霊石を取りに本城へ戻った。


「ねぇルカさ・・」

「うん? 何か見つけたか?」

「ううん、ダンの事なんだけど」パイはいつになく真面目な顔をしてルカに話しかけた。


「ルカは本当にダンの事を友達で、弟のようにしか思ってないの?」

「突然何を言い出すんだ」

「だって・・バイオレットの誘いだって断ってたじゃない。いつものルカならそんな事しないでしょ? バイオレットは美人だし、グラマーだし・・」


「ちょ・・待て待て、俺は美人でグラマーなら誰とでもって聞こえるぞ。それに何で俺が断ったって知ってるんだ?」


「豊穣祈願祭でダンスした時、あたし上から見てたんだよね。まぁ・・話してる内容も聞こえたし」

「確かにバイオレットの誘いは断ったが・・」


(そうだ、バイオレットは付き合うには申し分ない女性だと思う。同じニッパーだから仕事にも理解があるだろうし、何より魅力的だしな。それなのに何で俺は断ったんだ?)


「俺は自由気ままでいたいから、かな」

「今までだって自由気ままに女の子と付き合ってきたじゃない。バイオレットとだって恋愛くらいできたと思うけど。あたし何でルカが断ったのか不思議なの」


「ただいま、精霊石多めに貰って来たよ」


 パイとルカの話は中断され、また3人は日記を漁り始めた。


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