ロッシと共にアルパル王国へ
ダンがが聖なる泉の噴水で呪いを転移させたちょうど同じ頃、ルカの体から青黒いシミが消えて行った。
翌朝は体が軽くなり頭痛も体の痛みも嘘のように無くなった。
(もしかして、パイ達が成功したのか!?)
起き上がって鏡を見たルカは自分肩をさすりながらしみじみと感じていた。
(今回は本当にだめかと思ったな・・)
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パイ達はアルパル王国に帰るために準備をしていた。
「お城の人たちにおみやげを買っていきたいよね」
「そうだね、バイオレットにも買って行かないとね」
「俺も付いていくぞ」
ロッシはルカが心配でたまらないのだ。それはダンも同じだった。いくら精霊がルカの呪いは解けたと言っても実際に見て確かめるまでは不安で仕方なかった。
「警備隊は大丈夫なの?」
「少しだけだ、ルカが無事なのを確認したらとんぼ返りする」
「約3日の旅は結構きついよ・・」
パイは最初に旅した時を思い出しながら言った。
ロッシは「俺は普段鍛えているから大丈夫だ」と笑って答えた。
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「こ・・この石橋を向こうまで歩くのか!」
ほらやっぱり! 絶対みんな思うのよ。
城へ続く長い石橋を見たロッシが驚愕するのを見てパイは心の中で言った。
だが今回はパイ達の到着を見計らって城から馬車が迎えに来てくれた。馬車の中からルカが手を振った。
「おーい、おかえり~迎えに来たぞ~」
荷物を積み馬車に乗り込んだ4人は再会を喜びあった。
「ロッシ! あんたも来てくれたのか」
「お前が回復したのをこの目で見たかったからな。しかし痩せたなルカ。でも元気になったんだな?」
「おう、体はなまっちまったがまた鍛えるさ」
「良かったあ。ルカは不死身だね!」
ダンはみんなのやり取りを嬉しそうに見ていた。その目にはうっすら涙が光っていた。
「ダンもありがとな。領地の仕事を放ってまでビタリに行ってくれて」
「うん、ルカが元気になって良かったよ。ほんとに良かった」
拭いても拭いても流れる涙をどうすることも出来なくてダンは両手で目を覆った。
「なんだお前、泣くなよ。俺は生きてるんだぞ」
「うん、良かったよ・・生きててくれて・・」
「ルカ、いい友達がいてお前は幸せだぞ」
「ああ、そうだな」
ロッシはダンの肩を叩いた。
ダンからは呪いが転移した事をルカに言わないで欲しいと口止めされていた。
この若い男はそれほどまでにルカを大切に思っているのか。この土地に来てからルカとダンの間に一体どんな絆が生まれたのだろう?
その晩はルカの快気祝いとロッシの歓迎を兼ねて賑やかな晩餐会が開かれた。晩餐会と言ってもロージアン家の台所事情では豪勢な・・とまではいかなかったがバントリー夫人が腕によりをかけて素敵なディナーを用意してくれた。
少し遅れてバイオレットも参加した。ルカはロッシにバイオレットを紹介した。
「へーこんなべっぴんさんのニッパーが居るのか」
「あら、ロッシは女性をいい気分にさせるのが上手なのね」
「スチュアートさん、どんどん飲んで下さいね。これはうちの蒸留所で作られたウイシュケです」
「こっちは私が持ってきたワインです。沢山ありますからどうぞ」
レナードの隣にはフランシスが居た。城に呼んだのは初めてなのか、両親にフランシスを紹介している場面も見られた。
今夜はまるでお祭りだった。そしてみんなが幸せそうだった。
「もう遅いし、今日は泊まったほうがいいんじゃないか?」
帰り支度をしているバイオレットにルカが声を掛けた。エマ夫人も宿泊を勧めた。
「そうしたいけど、明日は仕事で行かなければいけない所があるのよ。エマ夫人、今夜はご馳走様でした、またお邪魔させていただきますわ」
バイオレットを見送りにルカも外へでた。
「気を付けて帰れよ。まぁ君は強いから心配はないか」
「そうね、でもルカにならもっと心配されたいわ」ヴァイオレットは艶やかな流し目でルカを見た。
「それは・・」
「前にも言ったでしょ? あなたを愛してるのは精霊だけじゃないって」
そう言ってバイオレットはルカの首に腕を回してルカにキスをした。
「バイオレット~これ兄さんが・・」
ダンがレナードから託されたウイシュケのボトルを持って外に出てきたのは、ちょうどバイオレットがルカにキスしている時だった。
「あ・・ごめん。タイミングが悪かったね・・」ボトルを持ったままダンは城に駆け戻って行った。
「見られちゃったわね。うぶなイケメン君・・」
ダンが走って行った後姿を見ていたルカはバイオレットの腕を首からほどいた。
「俺も行くよ、今日はありがとう。おやすみ」
ルカはさっさと戻ってしまい、一人残されたバイオレットは肩をすくめた。
「つれないわね。おやすみのキスを返してくれたっていいのに」




