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黄金の瞳のルカと精霊の呪い  作者: 山口三


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フローラとローレル


「あの・・フローラは私の姉です。私はローレルと言います」泣きはらした赤い目に豊かなブルネット。だがよく見るとフローラより少し内気な印象を受ける。


 ルカはローレルの言葉に自分が何をしにここへ来たかを思い出した。


「失礼しました。私は治安警備隊から参りましたステュアートと申します。こちらは同じくバイオレットです」


「ああ、お待ちしておりました、中へどうぞ」


 客間にルカ達が通されるとほぼ同時にまた玄関のドアが開いて誰かが入って来た。


「ローレルどこ?」


 今度こそフローラだろう。ルカは客間から顔を出した。


「ルカ! どうして私の家にいるの?」

「俺は治安警備隊の人間だからね。依頼の件で来たんだよ。話を聞かせてくれるかな?」

「もちろんよ、ちょっと待っててお茶を淹れてくるわ」


 ルカに会えてフローラは嬉しそうだったが、客間のソファに妹と二人で腰掛けた時には不安げな表情が戻ってきていた。


「妹のローレルがパン屋に勤めているって話したわよね? パン屋の朝は凄く早いのよ。早朝仕事をして昼前に戻ってきたら部屋にあの文字と記号が描かれていて・・」


 怯えるローレルをなだめてフローラは警備隊に相談に行き、その足で職場の本屋へ休みを貰う為に事情を話に行ってきたのだという。


「ご両親はお留守ですか?」


 バイオレットが優しくローレルに尋ねた。


「父は商用で国外にいるんです。母は私達が幼い頃に亡くなっていて・・」そう話しながらローレルの手はブルブルと震えていた。


「私も殺されるんでしょうか? 人に恨みをかう覚えなんてないのに・・うっ、うう」


 泣き崩れるローレルの肩を優しく抱きながらフローラが励ました。


「大丈夫よ、ルカが来てくれたんだもの。食べ物の腐敗事件だってルカが解決したのよ。ね? ルカがローレルを守ってくれるでしょう?」


 妹を不安にさせまいと必死に強がって見せるフローラだったが、ルカに訴えかける瞳には不安が色濃く滲んでいた。


「ああ、指一本触れさせない。ところで君たちは双子なの?」


 二人は同時に頷いた。


(やはり今までの被害者の身元ををもう一度確かめなくては・・嫌な予感がする)



 警備隊本部に戻ったルカはすぐこれまでの被害者の家族構成を調べた。嫌な予感とは得てして当たるものだ。

 最初の被害者のジョン・カテルは兄・妹の二卵性双生児。次の被害者も同じ。男女だったから似ていても双子だと気づかなかったのだ。

 交友関係など、外の情報ばかりに気を取られて家族構成をしっかり把握していなかったのもまずかった。


 だがサイモン・シーランは双子ではなかった。しかしサイモンを挟んでローレルとフローラはやはり一卵性双生児。見た目もそっくりだ。


「ねぇ、トッドってパイの双子の兄なんでしょ? 妹に嫉妬してロアになってしまったのよね」


 頬杖をつきながら隣に座ったバイオレットが聞いて来た。


「そうだ。風の精霊との間に誕生した双子の妖精だと母親が言っていた」


「残念だけどトッドが犯人と見て間違いなさそうね。母の愛を奪った憎い妹を殺してやりたいけれど母が悲しむから、同じ双子の片方を殺して回ってる妖精のサイコパス」


「母親の愛情がパイに奪われるっていうのは誤解なんだけどな・・」


「それが理解できないのがサイコパスなんじゃないかしら。母親が奪われるって妄想が悪化したらパイも危険なんじゃない?」


「その前になんとか捕まえないと」


「ただサイモン・シーランの事件だけが引っかかるわね・・」


「サイモンには死に別れた双子の兄弟でもいたのかもしれんな。これは別の者に調べさせよう。サイモンに老化の現象がなかったのは双子じゃなかった事がゆえんかもしれないし・・。ミッチェル家には警護の人間を派遣したから、ルカは一旦帰った方がいい。パイにも・・話した方がいいんじゃないか?」


(アンカテル隊長の言う通りだ。パイを危険に晒さない為にも真実を伝えた方がいい)


 ルカが考えているとバイオレットも隊長に賛同した。


「私もミッチェル家に泊まり込むわ。私も()()()から。隊長の言うようにあなたは一旦帰った方がいいわ」


 


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