落ち込むパイと猫の耳と尻尾
「はぁ~ひと踊りした後の甘いものは美味い!」
水筒のお茶を飲みながら高級菓子店の焼き菓子を3人は食べていた。
「味がしない・・」
「パイは肉食だもんな。今度はチキンも用意するさ」
「ふむ。美味しくはある。しかしここに留まらない」
精霊はパクパクとお菓子を口に放り込みながら胸のあたりを軽く叩いた。
「妖精、お前は何しにここへ来た?」
(また来た! その質問)
パイは今度は正直に答える事にした。
「あたしはルカの助手で呪いを解く手伝いをしに来たわ」(これでOKね、今度は正直に答えたわ)
パイはちょっと胸を張って見せた。
「ふむ。妖精、わしは甘いものが好物じゃ」
(ええっ、正直に答えたのにそれだけ??)
気落ちするパイを見てルカは「また明日来よう。ウイシュケの精霊、また明日に」そう言ってパイの肩を叩き、精霊には手を振った。
「ふむ」ウイシュケの精霊も肉付きのいいぷにぷにした手をルカ達に向けて振った。
蒸留所を出る時にルカたちが感じた工員達の視線は生暖かいものだった・・。
「また明日来るよ~」
「えっ、明日もですか?!」
「‥‥」
―――
城前の石橋に座って足をブラブラさせながら湖を眺めているパイは大きなため息をついていた。
「パイ、そんな所に座って落ちたら危ないよ」
パイが振り向くとダンが立っていた。
「あたし猫だもの、ちょっとやそっとじゃ落ちたりしないわ」
「へぇ~君ってネコの妖精だったの?!」
いつもはネコ科だ、百獣の王だと意気込むパイが今日は素直に猫と認めてつぶやいた。
「自由に変身できるの?」
「ううん、出来ない。精霊石の力で変身してるから回数に限界がある。でもこんな風にすることはできるよ」
そう言うとパイの頭から黒い猫の耳がピョコンと現れた。
「わぉ、黒猫なんだね。ね、触ってもいいかな?」
「いいわよ」
パイの毛はすべすべしていて柔らかく手触りがとても良かった。
そこへレナードが馬に乗って帰ってきた。
二人のやり取りを見て、馬から降りたレナードもパイの耳をそっと触った。
「尻尾も長くてとっても素敵なのよ」
イケメン二人に撫でまわされて得意になったパイは尻尾も二人に披露した。
「犬と違って毛が細いんだね、ツヤツヤでとっても綺麗な尻尾だ!」
レナードもパイを優しく褒めた。
パイの気分はすっかり良くなった。気分が良くなると頭も冴えてきた。
「そうだ! ダン、あたしにアップルパイの作り方を教えてくれない?」
「ん? いいけど」
「じゃあ早速今からキッチンに行きましょうよ」
パイはウキウキしながらキッチンへ向かった。