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黄金の瞳のルカと精霊の呪い  作者: 山口三


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21/88

踊るルカとダンの同級生


 翌日、パイに言われた通りに蒸留所へ出向いたルカは唖然としてその場に立ち尽くした。


 (小さい髭が踊ってる‥いやいや、小さい人が踊ってる)


「ほれ、あんたもこっちへ来て踊らんか!」


 精霊はルカに気づくと手招きした。―俺に踊れって? そう思ったのに足は言われるがままに精霊の方に向かって動いていた‥精霊の前に立って同じように踊ろうとすると「違う、わしと並ぶのじゃ」と精霊は自分の横を指した。


 並んでチラチラと横を見ながらルカは動作を真似てみた。


「もっと足を高く上げて! 手は頭の後ろじゃ!」


 運動神経がいいルカは1、2分で同じように踊れるようになった。踊れるようになってくると周囲に気を配れるようになった。どうやら蒸留釜が出すわずかな音にリズムを取って踊っている様だった。


「ふむ。若者よ、お前は筋がいい」


 コクリと頷き満足そうに髭を撫でながら精霊は言った。


「わしはウイシュケの精霊じゃ。お前はニッパーだな。何しにここへ来た」


 床にペタンと座った精霊の隣に、ルカも腰を下ろし言った。


「俺はルカです。ロージアン家の呪いを解きに来ました」

「ふむ。そうかね。せっかく一緒に踊ってくれたのだから何か教えてやりたいが、わしに言えるのはここの酒は美味くないということだけじゃな。ここは水がいかんのよ」精霊はじぃ~っとルカの瞳を見つめながらそう言った。


「水・・ですか。それは残念ですね」

「ああ、残念な事だ」

「ありがとうございました。一緒に踊れて楽しかったです」ルカは立ち上がった。


 情報が得られなかったのは残念だったが、意外にも踊りが楽しかったのは嘘ではなかった。ルカが去ろうとすると後ろから精霊の声が追ってきた。


「わしは甘いものが好きじゃぞぉ」


 ルカは頷いただけで、そのまま立ち去った。

 

(甘党で辛党か)ルカはなんとなく彼が好きになった。




―――



 あの精霊にお菓子を買って持っていこう。


 ルカは城から馬車で25分ほど離れた街へ来ていた。お菓子屋を探して歩いていると大きな建物からダンが出てきた。ルカの場所から3軒ほど離れていたせいかダンはルカに気づいていなかった。


 ダンが出てくるのを見計らったように一人の少女がダンに近づいて行った。


「あらダニエル、偶然ね! そうだ丁度良かったわ、卒業論文の事で相談したいことがあるの」

「マリーナ、ええと・・今から?」

「用事があるなら明日でもいいわ」

「いや、無いよ。図書館でも行こうか?」

「カフェでお茶をご馳走するわ、相談に乗ってもらうんですもの」


 二人が立ち話していると後ろから3人の青年が近付いて来た。


「ダニエル・ロージアンじゃないか。マリーナとデートかあ?」


 真ん中がニヤニヤしながら初めに声をかけた。続いて右、左もしゃべりだした。


「マリーナ、そんな奴とくっついても苦労するだけだぜ、伯爵家って言ったって貧乏の没落寸前なんだから」


「そうそう、お前の家の財産狙いに決まってるだろ。その本だって盗んできたんじゃないのか?」


 マリーナの顔に怒りが浮かんだ。彼女は黙っているタイプではないようだ。


「エルトン! 何言ってんのよ、私から誘ったのよ。財産狙いだなんて!」

「ヒュ~私から誘ったのぉ? 今夜どうってぇ? 大胆だなぁオイ」

「なっ!」


 マリーナは3バカその1に掴みかかろうとしたがダンが制止した。


「まるで5歳のガキだ。成り上がりの子爵家じゃ息子のしつけもまともに出来ないみたいだな」


 今度は3バカの真ん中がキレた。真ん中がエルトンらしい。


「何だと、誰が5歳のガキだ!」

()()()()()()()()()5歳のガキだ!」


 ルカはどこでも良く見かける光景だな、と黙って見ていたが、真ん中がダンの胸倉を掴み、殴りかかろうとしているのを見て止めに入ろうとした。


(さすがに暴力はだめだな)


 ところがルカより早くエルトンの腕を掴んだ男がいた。


「そこまで。暴力はダメだよ」


 腕を掴んでエルトンを見下ろした男は笑いながらそう言った。まばゆいブロンドでお洒落なスタイルを決めたスマートな男は、ダンが落とした本を拾い上げながら、


「はい。ちょっと汚れちゃったね」

「ランバート先輩、ありがとうございます」


「先輩、あんな奴の肩を持つことはないですよ。先輩に何の得もないじゃないですか」

「んー僕は野蛮なのは嫌いでね。それに‥エルク家だってロージアンの息子に傷をつけちゃ城買収の障害になるんじゃないの? たとえ些細な障害だとしても、君のお父上が何とおっしゃるか・・」


 痛い所を突かれたのかエルクは取り巻き二人に合図した。


「ふん、俺を侮辱したことは先輩に免じて許してやる」

「ふん」

「ふん」


 3バカは来た方向へ帰って行った。


 ランバートはダニエルの肩に手を置き華麗な笑顔で言った。


「ダニエル、僕は所用で半年程この街に滞在しているんだ。で、君の城に興味があってね。エルク家が欲しがる城が見てみたいんだよ。よければ今度招待してほしいな」


「分かりました、折を見て連絡します」


 ランバートが去った後、ダンもマリーナとカフェに向かった。


 (何だあのキザな野郎は!? あれをキザと呼ばずして何と呼ぶ!)


 近くまで来ていたルカはあっ気に取られながらランバートの後姿を見送っていた。


 


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