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黄金の瞳のルカと精霊の呪い  作者: 山口三


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依頼の内容


 ガーーーン

 突然、銅鑼を叩いたような音がした。


 ルカが部屋から顔だけ出すと、向かいの部屋からパイも出てきた。するとルカにタオルを持ってきてくれたメイドのエレンが階段を上がってきて言った。


「お夕食でございます。下の食堂にご案内致しますので、どうぞこちらへ」


 エレンに付いていく途中、この城には使用人が少なく手が足りないので食事の知らせは銅鑼を叩いているという説明を受けた。―今後は銅鑼が聞こえたら食堂へおいで下さい・・。


 食堂にはもうロージアン家のメンバーが席についていた。


 ルカは夫人のエマの隣。40代後半で有能な秘書のような風貌の婦人だ。50台を前にしてもダンと同じ深いブルーの瞳は知的な輝きを失ってはいなかった。


 パイはレナードとダンの間に収まった。レナードも弟のダンとは違った魅力のある人物で、整った顔立ちに聡明そうなブルーグレーの瞳が印象的だ。まさに好青年といったところだろうか。


 イケメン二人に挟まれてパイはかなりご機嫌な様子だ。食事でボロを出さないといいが・・・。


 まず夫人がダンの無礼を詫びた。食事は和やかに進み、ルカの仕事の話で盛り上がりを見せた後デザートで締めくくりとなった。デザートは焼き立てのアップルパイにアイスクリームが添えられていた。シナモンの香りがたまらない。


「おっ、うまいですね。このアップルパイ」

 

ルカが舌鼓をうつと、「それはね、ダンのお手製なんですのよ」隣の夫人がダンを見ながら言った。


 (貴族のお坊ちゃまがお菓子作りか・・・優雅なもんだ)


 ルカはどうもダンが気に入らなかった。まぁ初対面で頭から水をぶっかけられれば無理もない話しだが。


「へぇーじゃぁこのアイスクリームもダンが作ったの?」パイはアイスクリームだけを口に運びながら上目遣いでダンに質問した。


「これはうちのコックが作った物だよ。バントリー夫人っていうんだけど、彼女の作る料理はなんでも美味しいんだ。アップルパイも彼女に習ったんだ」ダンの笑顔からはバントリー夫人への好意が滲み出ていた。


「お前、それ食わないんだろ。俺に寄越せ」


 ルカはアップルパイだけが残されたパイのお皿を引き寄せた。それを見たダンは少し驚いていたが、満更でもない表情でアップルパイを平らげるルカを見ていた。


「あなた、飲みすぎですよ。これから依頼のお話をされるんでしょう?」


「ん、ああ。そうだな」伯爵は残念そうにグラスに残っている琥珀色の液体を眺めた。




 食後、伯爵の書斎に案内されたがパイも一緒に行くと言ってきかなかった。伯爵は一緒で構わないと、パイの同席を快諾した。


「それで、依頼の内容はどのようなものでしょうか?」

「実はロージアン家には呪いが掛けられているのです。その呪いを解いていただきたいのです」


 ルカは目を瞬いた。呪いなんて物語の中でしか聞いたことがないし、それをまたなぜニッパーである自分に?


「呪いですか・・一体どんな呪いで、誰にかけられたのですか?」

「それが・・誰に掛けられたか分からないのです。そしてどんな呪いかは・・お話できないのです」


 そんな荒唐無稽な話があるか!


「しかし、それでは雲をつかむような話で・・」


 伯爵は話を続けた。


 ロージアン家に呪いが掛けられたのは、もう400年以上前の事だという。それ以降土地は痩せ作物の収穫量も減り、領地とロージアン家は徐々に衰退していったという。


 (それで城がこんな状態なのか・・)


 そして具体的な呪いだが、話してしまうと話した本人、聞いた相手、双方に災いが降りかかるから言えないらしいのだ。


「記録が残されているのです。災いが降りかかる事を知らないで話してしまった何代も前のご先祖様と、話を聞いた祈祷師は熱病で3日も経たないうちに死んでしまったという・・」


 そこでロージアン家にはいくつかの家訓が作られたが、何代も経つうちにはその意味合いも薄れていった。忘れた頃にまた家訓を守らなかった先祖がいて、今度は突然話すことができなくなってしまったという。その先祖は口がきけないまま一生を終えたらしいのだ。


 災いが降りかかるかもしれないリスクを冒して呪いの内容を聞くのは危険すぎる。しかし何の情報もないままで呪いを解くなんて・・・成功する見込みはゼロだろう。


「ニッパーであるあなたなら、この土地の精霊や妖精と話が出来る。彼等からきっと何かヒントを得られると思うのです」


(そうだ、この呪いは自分のせいでもあるのだ。家訓を無視してエマと結婚した事。二人目の子供を望んでしまった事。もっと慎重になるべきだった・・。)


 アラン・ロージアンは後悔の波がまた自分に押し寄せてくるのを感じていた。


「お願いします、もう他に方法が見つからないのです。出来ることは何でもしました。もうあなた達におすがりするほか。それに・・・十分な報酬も用意してあります」


 提示されたのは1年は優に遊んで暮らせる額であった。治安警備隊の安い給金に比べたらびっくりするような額だ。しかし本当に十分か? 呪いなら自分に跳ね返ってくることも考えられる。即答は無理な案件だった。


「一晩考えさせてください。明日お返事しましょう」


 


 








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