悩めるロージアン卿
第2部
ロージアン卿は頭を抱えていた。
あれからもう10年だ。呪いに関する調査は行き詰っていた。10年の間、様々な方法で呪いを解こうと尽力した。わずかな望みがあれば何でも試してみた。
だが全て失敗に終わった今、もう他から力を借りるしかない。
しかし先立つものは・・・そう金だ。残念ながらロージアン家には金がない。
ロージアン家の領地は広大だが痩せた土地がほとんどで領民からの税収は期待できない。
長男がウイシュケという酒の蒸留所を経営しているが、経営状態はかんばしくない。
ロージアン家はこの国でも有数の歴史ある家柄だが現在は没落の一途を辿っている。
アラン・ロージアン2世は金庫から細長い箱を取り出した。金庫とは言っても何も入っていない、名ばかりの飾り物。この箱の中身と少々の証券。後は価値のないガラクタばかりだ。
箱の中にはサファイアがはめ込まれた美しい短剣が入っていた。柄の装飾も見事で、500年ほど前の当主が特注で作らせた物らしい。
その当主はロージアン卿と同じ名の、アラン・ロージアン。同じ名前のご先祖様が大事にされていた家宝を自分も特別に大切にしてきた。だからこそどんなに苦しい時もこれだけは手放さずにおいたのだ。
だがとうとうこれに別れを告げる時が来たのかもしれない。
家の大事には変えられないのだから。