アフターファイブの資料室・再び【挿絵あり】
この回はセリフのみでお送りします。
「おーいたいた」
「……まだ就業時間中ですよ、いるに決まってるでしょ。何の用ですかアーチーさん。あ、用はないですよね暇人ですもんねアメリカンニートですもんね」
「アメリカンニートって何だよ。俺は無職じゃねえぞ。しっかし今日はまた一段とあたりがキツイなタクミ。あの時笑ったのまだ根に持ってんのかよ。で? 尻は治ったか?」
「ぎゃあセクハラっ! 最低! アーチーの馬鹿!」
「それだけ元気なら大丈夫だな。そんなタクミに俺様からプレゼントだ。ほら受け取れ」
「む……なんですかこれ」
「『門番の魔女』になったお祝いだ。魔女や魔法使いといえば魔法の杖だろ?」
「これ杖じゃなくて魔法少女的なステッキですよね、おもちゃの」
「『仮免』なんだからそれで十分だろ? 遠慮しねえで持ってみろよ、ほら。意外と種類があって選ぶのに苦労したんだぞ。大切に使えよ」
「いや使わないから、子供のおもちゃだから、私大人だから」
「おー、チープな感じがタクミによく似合ってんぞー。やっぱ俺様の目に狂いはねえ。それにほらここ、箱に『あなたも魔法少女に変身よ♡』とか書いてあるぜ。ま、タクミは少女っていうにはかなり無理があるけどな。いや待てよ。どことは言わねえが、ちっとも育ってねえから少女でもいけるか」
「むきーっ!!」
「タクミ、魔法のステッキは人を叩くものじゃないぞ。ほらここのボタンを押すんだ」
「……真面目な顔して何言ってんですか。突っ込むところはそこじゃないでしょローガンさん」
「痛えじゃねえかタクミこの野郎! ったく力任せに殴りやがって。結構硬いんだぞそれ」
「一度ならず二度もセクハラするからだよっ! というか真面目な話、成人男性が一体どんな顔して買ったのこれ。サンタの時といい、私を揶揄うためなら手間暇を惜しまないよね。ほんっと馬鹿っ!」
「アーチボルドはタクミが好きだからな。構わずにはいられないんだろう」
「えーヤダ迷惑」
「ちっ即答かよ。俺だって嫌だぜ。つるぺたはお呼びじゃねえよ」
「うっさい! もういいから出てけっ! このっ!」
「だから魔法のステッキで叩いたらダメだタクミ」
「……ローガンお前、さっきからタクミより食いついてんな。気に入ったんだな魔法のステッキが」
「俺の周りは男ばかりだったから、こういう女の子用のおもちゃを近くで見たことがないんだ」
「……じゃあ触ってみます? はいどうぞ」
「ああ。 (ピロリロピロリロキュルルルル〜♪) なるほどここが光るのか。結構大きな音もするんだな。(シャララ〜〜ンシャリン♪) ああ音が変わったな。光の色も変わるのか……うん? どうした二人とも」
「……ぶふっ、ぎゃははははは!! は、腹が痛え。真顔はやめろ真顔は! 俺を殺す気かローガン! タクミを見ろ笑いすぎて痙攣してるぞ……ん?」
「……ぷふっ! やだもうローガンさんてば、か、かわ、カワイイ!! 可愛すぎるっ!!」
「はあっ?! 出たよ女の『カワイイ』が。なんでもかんでもカワイイとか言ってんじゃねえよっ!」
「だってカワイイもん」
「もん、じゃねえ! 可愛くねえつってんだろ! 大体、野郎とピンクのステッキの組み合わせのどこに可愛い要素があんだよ、馬っ鹿じゃねえの。ったくローガンはローガンで『呑気で何も考えてなさそうな笑顔が可愛い』とかいうし、お前らの可愛いの基準は俺様にはわかんねえよ」
「……え? えっとそれって」
「ああ。タクミは可愛いぞ」
「うえっ? あ、ありがとうございます……えへへ」
「おいこら。ローガンお前はいいかげんそのステッキを離せ。その絵面でほのぼのとした雰囲気を醸し出してんじゃねえぞ二人とも」
「そうだな。俺が持つよりタクミが持つ方が『カワイイ』からな」
「!!」
「……その辺にしとけよローガン。お前意外とタチが悪いのな、絶対面白がってるだろ?」
「面白がってない。俺は本当のことしか言ってない」
「あーはいはい。そういやタクミ、お前今ここの『仮眠室』で寝泊まりしてるんだって?」
「あーうん。こないだのあれ、庭にてんこ盛りの転移物の処理がまだ終わらなくて。ローガンさんがかなりの数、銃でぶっ飛ばしちゃったでしょ? アレクシア様の魔法で凍ってるうちはよかったんだけど、溶けたらもう庭全体がスプラッタのバイオハザード状態で、おまけにかなり臭いが酷くて。ちょっと生活するのは無理なの。家守の守護は匂いまでは遮断してくれないんだもん」
「すまん」
「あ、いえ、ローガンさんのせいじゃないですよ。むしろ私の方がごめんなさい。もっと早くなんとかできてれば、あんなことにはならなかったのに」
「ちゃんとできたじゃないか。あの時タクミが門を閉じてくれなかったら、俺は今ここに存在しない。そういえばまだ礼を言ってなかったな」
「えっ?」
「ありがとうタクミ。タクミは充分凄いことをやり遂げた、誇っていい。よく頑張ったな」
「! はい! ありが (ピロリロピロリロキュルルルル〜♪)…………くっ」
「ぶはっ! 何ボタン押してんだよ、全く外さねえなタクミは! 最高だぜ!」
「くうう、何よぉ。それもこれも、アーチーがこんなもの寄越すのが悪いんだからぁ。うう……」
「あ」
「調子に乗りすぎだアーチボルド。魔法のステッキを持って帰れ」
「ぐすっ。もういいです。物に罪はないし、せっかくのお祝いのプレゼントだから貰いますよ。魔法のステッキ、ありがとうアーチーさん」
「お前……っあーくそっ! やっぱ気に入らねえっ!!」
「……彼、なんで怒ってるんですか?」
「やっぱりタクミが好きだ、ってことだな」
「気に入らないのにですか? アーチーさんこそよくわかんないですね。それよりローガンさん、とっくに終業時間が過ぎてるので上がっていいですか? アルの様子が見に行きたいです」
「俺も転移物回収の進捗が気になるから一緒に行こう。ということだアーチボルド、お前はどうする?」
「…………俺も一緒に行く」
「えっ、ついて来るんですか?」
「悪いかよ」
「別にいいですけど、アルに齧られてもしらないよ?」
「余計な心配すんな。んだよっローガン、可哀想なものを見るような目で見るんじゃねえ!」
「素直になれない天邪鬼は大変だな」
「うるせえよっ! ポン、じゃねえ肩を叩くなっ!」
(To be continued……?)
「魔女の門、門の魔女」の連日投稿はここまで。一旦完結表示にしたいと思います。
ノベルアッププラス版にはもう少し続きがありますが、なろう版ではそちらとは違うお話を(タクミとローガン時々アーチボルドのゆる〜い関係を中心に)新たに書き進めているところです。目処が立ち次第連載を再開したいと考えていますので、その折にはまたよろしくお願いします。
拙い作品をここまで追いかけて読んでくださった方、評価して下さった方、とても励みになりました。本当にありがとうございました。




