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091 帰還して

 リョウズ物流倉庫で聞いた話が意外過ぎて、そのあとの演説は、なんだか思ったほどうまくできなかった。

 用意した言葉はすべて伝えたし、反応も上々だった。


 だが、俺としては消化不足。

 いろいろ考えさせられたことが影響したんだと思う。


 帰りの車の中で、俺はずっと公共料金の一斉値上げについて考えていた。

 中央府がなぜそんなことをしたのか。


 それだけ運営資金がないのかもしれない。

 全国から富が集まってくる特区で、そんなことになっているとは思えないが、可能性の一つとしては考えられる。


 中央府だって馬鹿じゃないだろう。

 そんなことをしたら、配送料の値上げとサービスの低下に繋がることくらい理解しているはずだ。


 それでも推し進めるほど、切羽詰まっているのか? 俺はそうは思えない。

 リョウズ物流倉庫側は中央府と話し合いを続けていたが、取り付く島がないほどだったという。


 中央府の意図は、一体何なのか。


「宗谷様、ご自宅に到着しました」

「……えっ? ああ、もう着いたのか。ありがとうございます」


「宗谷様、先ほどのことで悩んでおられるのですか?」

 奉活中はあまり干渉してこなかった天城さんが、そんな言葉を投げかけてきた。


「そうですね。なぜ中央府はわざわざ特区の住民の不満を(あお)ることをするんだろうと考えていました」

「私も中央府の人間ですが、詳しく知りません。管轄は中央局だったと聞いています」


「中央府の中にある中央局ですか」

 美奈代さんが出向しているところだ。


「大きなプロジェクトが動いているらしく、物入りなのかもしれません。もっとも、それで公共料金が値上げされては本末転倒ですが」


「物入りですか。それはまた」

「噂ですが、複数の特区にかかわるプロジェクトだとか」


「そんな規模ですか。だとすると……」

 本当に物入りなのかもしれない。


 いずれにしろ、俺にできることは何もない。

 俺は礼を言って、車を下りた。




「ただいま」

「おかえり、タケちゃん。疲れたでしょう?」


「う〜ん、そうでもないかな。これでも体力がついたからね」

「それでどうだったの? はじめての奉活は」


「うん、とても楽しかったよ。でも最後に行った『リョウズ物流倉庫』だけど、母さんから聞いた話の意味が分かったよ。なんとかしたいけど、どうしようもない……そんな感じだね」


 リョウズ物流倉庫だけではない。ガスや水道局だって被害を受けているらしい。

 このままだと、公共料金の値上げは不可避。


 これは特区に住む人全員に関わる問題だ。

 特区で売る品物の価格に上乗せしなければいけない状況がやってくる。


 なぜ中央府はそんなことをしたのか。

 そのことをずっと考えているけど、答えがでない。


「我が家はいいけど、男の子を持った親は大変ね」

「えっ、どうして?」


「タケちゃんがいるおかげで、我が家は税金の優遇措置があるでしょう?」

「うん、よく分からないけど、かなり負担は少ないんだよね」


 同じように税金をかけると、「払えません」と出て行ってしまうことになりかねない。

 最悪、国から出て行ってしまうこともありえる。


 特区の税金が高いから、男性が続々と他国へ移住しましたなんてことになったら、特区のトップは総入れ替えだろう。


「みんながみんな、高給取りとは限らないからね。これ以上家計の負担が上がると、住むのが厳しいって思う親も出てくるんじゃないかしら」


「そうか……そういうこともあるのか」

 母はもとから、自力で特区に住めるほどの給与を得ている。特区に住める実力があるのだ。


 他の家庭は様々。男の子を産んだからこそ、特区に移住してきたと言っていい。

 通常なら、外から通ってきた方がいい仕事に就いている家庭もあるだろう。


 その場合、特免措置があるからなんとかやっていけているはずだ。

 もし様々な公共料金が値上げされたら、生活レベルを下げなくてはいけなくなる。


 周囲の目をあるし、母親は厳しい選択を迫られることになる。

 たとえば、財閥などの庇護を求めるとか。


 そういえば、真琴、裕子、リエの家はどうだろうか。

 母親が特区に住める許可を持って住んでいる。他の女子の家もそう。


 みな特区に住む権利を持ち、その上で住むことができる経済的余裕がある。

 だが、それほど余裕があるのだろうか。


 高校のクラスメイトもそうだ。

 これ以上特区に住むのは経済的に厳しいなんて言い出す親もでてくる可能性が……ゼロではない。


 なにしろ、値上がりするのは公共料金なのだ。圧縮させることは実質的に不可能。

「母さん、美奈代さんは?」


「今日は休みだから、家にいるわよ」

「ちょっと聞きたいことがあるから、行ってくるよ」


 美奈代さんは同じ家に住んでいるが、生活空間が別れているので、普段はあまり顔を合わせない。

 廊下を渡って、美奈代さんたちの居住区へ行く。


「武人くん、何かしら」

「今日奉活先で、複数の特区にまたがる大きなプロジェクトがあるって聞いたんですけど」


「ええ、私もいま、その件で動いているの。まだプレスリリース前だけど、特区にある問題を解決するため、抜本的な改革をしようという動きよ」


「抜本的な改革……?」

 もしかしてそれが公共料金の値上げだろうか。いやそれは改悪だ。


 たしか、天城さんはこう言っていた。

 大きなプロジェクトが動いているので物入りだと。そのせいで公共料金を上げるのかもしれないと。


 待て、何か引っかかる。

 複数の特区に関係して物入り。それだけのお金が動くプロジェクトで、美奈代さんがいうには抜本的な解決となれば……。


「もしかしてネオ特区計画ですか?」

 正解だったようだ。美奈代さんの目が大きく見開かれた。


「知っているの!? 東京特区内だとまだ、中央府中央局と一部の有識者しか知らないはずなのだけど」

「ええ、ちょっと小耳に挟んだもので」


 公共料金値上げに、ネオ特区計画が絡んでいる?

 でもなぜだ?


 よく分からないが、何か嫌な予感がする。




12月は色々と忙しいので、半月先まで予約投稿しました。

多くの人は関係ないと思いますが、総文字数と公開文字数が違うと言ってくる人がいますので、ここに書いておきます。

現時点で4~5万字多く計算されていると思います。

それでは引き続きよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] >多くの人は関係ないと思いますが、総文字数と公開文字数が違うと言ってくる人がいますので、ここに書いておきます。 そんな人が居るの!?
[一言] 反政府ゲリラ編?! 中央府に反省を促すダンス!!
[一言] 脳内お花畑過ぎて、ちょっと… 権力闘争と無縁で来た訳ではないでしょうに。
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