285 ポスター販売(1)
三月の中旬。
ついに俺のポスターが販売された。
といっても、いまは予約分の発送を優先して行うようだ。
これから購入する人は、発送まで一週間ほど待ってもらうことになる。
そして気になるポスターの中身だが、以下の感じになっている。
【Aタイプ:フォーマル武人】
なんというか、カッコイイ俺。それ以外の言葉が思い浮かばない。
黒のスーツにダークな背景。ビシッと決めたポーズ。俺って、こんなに凜々しいのかと再確認させられた。
大人のスーツを着て、真剣な顔をするだけで、年齢が二、三歳上がった印象を受ける。
同年代の女子学生が思い浮かべる、「あこがれの理想像」がここにあるのではなかろうか。
さすがに自画自賛が過ぎるか。
【Bタイプ:制服武人】
制服姿の俺は、伊月高校の入学パンフレットに散々登場している。
いささか食傷気味だろう。
どのようなコンセプトで行くのかと思ったら、年相応の無邪気さを前面に押し出した形になった。
「いつ撮った?」と不思議に思うほどの一瞬を切り取っている。
俺が爆笑した瞬間を撮影しているのだ。
といっても、下品に笑っている感じではない。
いい笑顔である。目尻が下がり、優しさが顔によく出ている。
Aタイプと比べてギャップに萌える人が絶対に出ると思える一枚だ。
どちらかというと、大人の女性に刺さりそうだ。
【Cタイプ:カジュアル武人】
カジュアルという言葉に騙されてはいけない。どこぞのメンズコレクションで、ランウェイを歩いている姿を想像してほしい。
ゆったりとしたコート、首にかけたマフラー、その下に見える高級そうなシャツ。
どれをとっても、一級品と分かるものを見事に着こなしている。
「これ、本当に俺?」と首を捻りたくなるほどだ。
ファッションモデルも真っ青と思えるが、これは正真正銘、俺である。
これは多くの世代に刺さると思う。
多くの女性が、この姿の隣を歩く姿を妄想すると思う。
買わずにはいられない、罪作りな一枚である。
【Dタイプ:等身大武人】
最後は清潔感溢れる白シャツ姿の俺である。
ある意味、一番シンプル。これといって、特徴のない一枚だが、実はこれ、サイズが厳密に計算されていたりする。
そう、実物の俺と寸分違わない大きさにしてあるのだ。
それゆえ、他の三枚に比べて姿が大きくなっている。
バストアップのみで、四種類の中で、一番甘いマスクをしている。
背景も白、シャツも白。ゆえに一番目立つ。
シンプル過ぎるゆえに、俺が輝いているとも言える。マニアな一品である。
【シークレット:ラフな武人】
そしてこれはおまけバージョン。大きさはポストカード大で、普通の写真台紙に印刷されている。
等身大武人のときに来ていた白シャツの前ボタンを外し、胸襟を開いた状態の一枚だ。
コンセプトは、『休日、自室でくつろぐ武人』となっている。
実際、こんな格好でくつろぐことはないが、日曜日午後のけだるさがうまく出ている。
あえてカメラ目線を外し、見られていることに気づかない風を装っているところもポイントが高い。
あと、妙に肌色が多かったりする。
これはAからDまでの全種類を購入した人用の特典で、一般には告知していない。
届いてからのお楽しみというやつだ。
予約分の発送ははじまったので、早ければ明日の午後には第一陣が到着するはずである。
「……というわけで、売り上げの振り込みは来月末になるみたい」
姉にそう説明したら、口から魂が抜けていた。
姉には、受験勉強に集中してほしかった。
ゆえにポスターの詳しい話をする機会がなかったのだ。
一応、進捗は伝えていた。
ただ俺には、中・高の班員という頼もしい味方がいたため、姉も安心してみていたという。
「というわけで、明日あたりから、SNSとかが賑やかになるかも。この前、告知動画で『情報解禁だよ、届いたら見せてね』って言っておいたし」
そう言ったら、姉はなぜか非常に沈痛な表情をしていた。
受験も終わり、あとは卒業式を待つばかりで、心穏やかなはずなのに。
ちなみにいま、姉の手にはサンプルでもらったポスター四種類と、シークレットであるおまけポストカードが握られている。
俺が持っていても仕方ないので、姉にあげることにしたのだ。
「ねえタケくん……ポスター一枚、いくらで販売したの?」
「できるだけ安くと思ったんだけど、最終的に一枚三千円になったんだ。どうしてもこれ以上は下げるの難しくてさ」
全種類購入すると一万二千円になる。
ポスターにそれはさすがに厳しいだろうと思うのだが……。
「タケくん、販売サイト見たけど、全部完売してるわよ」
「マジで? ……うわっ、本当だ」
販売をはじめて五時間くらいだろうか。綺麗にみんな『Sold Out』の表示が出ている。売り切れだ。
「再販は?」
「しないつもり。あまりこういうのは無制限に売らない方がいいって聞いたし」
専門業者ではないので、無限に売り続けるわけにはいかない。どこかで販売を取りやめることになる。
ならば最初から割り切って、売り切ったら終了を徹底しておいた方がいいと考えた。
「まあ……売ろうと思えば、毎年でも撮影して売れるものね。ポスターじゃなくてもいいわけだし」
「そういうこと。それに俺は本来の仕事っていうの? イベント会社を運営していかなきゃだから」
ポスターは地方在住の女性に需要があったのと、会社の運転資金作りとしてはじめたものだ。
これで心置きなく、『本業』に専念できる。
学生の本業は勉強という野暮なことは、いいっこなしの方向で。
「明日……SNSをチェックしておくわ。タケくん、ポスターありがとうね」
「いいえ、どういたしまして」
明日は俺もチェックしておこう。どんな反応になるのか、楽しみだ。
ようやくポスターが発売されましたね。
次話は届いたときの反応をお送りします。
さて、本日、7件目のレビューをいただきました。
ありがとうございます。本当に嬉しいです。
男女比ものというのは、「出オチ」に分類されるもので、物語の冒頭からタイトルを回収しているため、そこからどう展開させていくのかは、作者の個性に左右されるのかなと思います。
「~~は建国を目指す」のように、タイトル回収がもっと先にあれば、そこに至るまでの過程を楽しめるのですが、タイトル回収後から物語が始まる場合、読者をどう楽しませるのか、結構手探りなのではないでしょうか。
というわけで、感想とレビューはいつでも受け付けていますので、面白かったと思った方は、物語を一緒にもりあげてください。お願いします。
そして書籍版もありますので、よろしくです!
現在連載中の「一炊の夢 ~エリートリーマンのやり直し~」もよろしかったら読んでください。
それでは引き続きよろしくお願いします。




