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別れと再会の花畑

 数年の月日が経ちました。




 アナタが居なくなってから、ワタシは一人でアナタと出会った場所で、勿忘草の花を見に行きました。

 初めの年は、アナタが隣に居ない事がとても寂しいと思う日々でした。しかし勿忘草の花を見ると、不思議と悲しくはなかったのです。

 アナタは今も、ワタシの隣で見てくれているのでしょうか?




 アナタの死を受け入れられた今。ワタシには分かります。




 ワタシにとって、アナタが重荷にならぬよう、あのような言葉を残したのでしょう?




 アナタはいつも、ワタシの事を思ってくれていたから。

 アナタは、ワタシがアナタ以外の人を思う事を許し、そして願ってくれていたのでしょう。


 でもアナタは本心では、快くは思わないのでしょう?

 隠していたつもりでしょうが、アナタはとても嫉妬深い人だったから。

 だからワタシは、誰かをアナタ以上に思う事は出来ません。

 アナタがワタシを思ってくれただけ、ワタシはアナタを思い続けます。




 ワタシにとってアナタは、世界で一番愛おしい人だったから。

 ワタシはアナタに、どれだけ救われたことでしょうか。

 だからこそワタシは、アナタに救われた分だけ、誰かを救いたいと思えたのです。




 毎年、勿忘草の花を見る度に、アナタとの思い出の日々が、色鮮やかに浮かんできます。




 アナタは今、どのような場所に居ますか?

 向こうでも上手くやれていますか?

 まさか心配でワタシの傍に、ずっと居たりはしてないですか?

 アナタは心配性だったから、たまにワタシの様子を見に来てくれていた事でしょう。




 けれども安心してください。

 ワタシも近々、アナタの元へと逝く事でしょう。


 アナタの事です。本当は嬉しいはずなのに「まだ早すぎる」と怒るでしょう。


 ですがどうか許してください。アナタに会いたいという思いを我慢して、ワタシも長く生きました。

 アナタを失って以降、アナタの姿を忘れた事など一度もありません。

 アナタの笑顔も声も。髪や瞳の色も、昨日のように思い出せます。

 しかしアナタも、随分とケチな人ですね。一度くらい、夢の中にでも、会いに来てくれてもよかったじゃないですか。

 コレではしわくちゃなワタシの事を、アナタが分からなくなってしまってるのではないかと不安になります。

 今の老いたワタシを見て、幻滅してしまうのではないかとさえ思ってしまいます。




 でも、きっとアナタの事です。ワタシがどんなに老いたとしても、ワタシを受け入れ、見つけてくれるでしょう。

 ワタシが愛したアナタです。アナタは笑顔で迎え入れてくれるでしょう。




 アナタのおかげで、ワタシの人生はとても素晴らしいものになりました。

 残り僅かな余生です。

 アナタとの思い出に浸るくらいは、許してくれるでしょう?




 最後にアナタとの思い出の場所で、この世を去りたいものです。


 ワタシも随分と、我儘になったものです。


 そろそろ疲れました。

 眠ってしまいましょう。






 おや……?

 勿忘草の花畑で、アナタが笑いかけてくれてくれている。

 やっとワタシの夢に、出てきてくれたのですね。

 随分と待たされたものです。


 そんなワタシの気など気にもせず、アナタがそっと手を伸ばすから。

 ワタシはその手を取り、羽のように走り出す。

 この光景はまるで、あの頃のようですね。






「貴方の人生はどうでしたか?」




 アナタがワタシに問いかけてくるので。


 ワタシは笑顔で答えます。






「とても良い人生でした」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 読了しました。前々から読んではいたんですけど感想書けてなくて、遅れてしまいました。申し訳。 お兄ちゃんの方とテイストが違い過ぎてびっくりしました。短編ということで、話の流れがわかりやすく…
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