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第2話 ポーション入り花茶

熊沢 花鈴(かりん)は酷い風邪をひいていた。しかも花粉症だった。


「あー。最悪…ツラ…ムリ…」

アレルギー外来もやっている内科に行った帰りだった。

この季節は花鈴にとっては悪夢のような季節だ。

外に出たくないけど、大学には行かないといけないし…

仕方なく外出する時以外は、部屋の空気清浄機前にずっといたい。

世間では伊豆地方で桜が咲いた、とかいろいろ話題になっているけれどこの美しい季節に外で過ごす事は苦痛以外の何ものでもない。

「せめて花粉症…治らないかなぁ…」

トボトボと歩いていると、可愛らしいカフェがあった。

「こんなところにこんなカフェあったかな?」

なんとなく、花粉から一時避難する気持ちでふらふら入店する。


「いらっしゃいませ!お客様。」

店員さん?

可愛らしい金髪オッドアイの子が席に案内してくれる。

眼福〜

妖精さんかな…

推せるわ〜

「こちら、メニューです。」


リモンのタルト…560ゴールド

ユスユスのパイ…800ゴールド

花リスの蜜がけパンケーキ…600ゴールド

サラリ鳥のソテーサンド…700ゴールド

夕焼けドリンク…500ゴールド

朝焼けドリンク…500ゴールド

本日のおすすめドリンク…500ゴールド

本日のおすすめランチセット…800ゴールド

本日のおすすめデザートセット…700ゴールド


「…サッパリわかんない。」

何?

実はここ、コンセプト喫茶?

「お客様ご説明させていただいてもよろしいでしょうか?」

「へ?あ…お願いします。」

「はい、当店は聖ロベリア王国の都市アスターの町外れにあるカフェこすもです。日本のお金は申し訳ありませんが、ご使用になれませんので共通硬貨をおもちでない場合には、何か代わりのものでかまいませんわ。」

「代わりのもの…?」

「このような物が多いですわね。」

店主はそう言うと、ビー玉やスワロフスキーのピアスなどを見せてくれる。

ふーん。

新しいコンセプトカフェかな?

こってるなぁ。

鼻をかみながら迷う。


「うーん、それならさ。これ、どうですか?」

見せたのは、片方しかないジルコニアのピアス。

今はこんなのしかない。

「一旦お預かりいたしますね。」

なぜか猫に見せる店主。

猫が、にゃーと返事をする。

「はい!問題ありません。こちらでしたら、2000ゴールドまでお召し上がりになれますわ。」

でも今…

食欲ないし…

お茶を…と思っていたら。

「あの、お客様。もし具合が悪いのでしたら、ポーション入りの花茶をお持ちしましょうか?」

「…では、それで。」

あったかいお茶なら飲めそう。


「こちら、ポーション入り花茶です。」

花茶の表面からは、湯気が花びらの形になって舞い上がっている。

どうなってるの?

とりあえず不審ながら飲んでみる。

「あ!美味しい…」

ちょっと薬っぽいが、ハチミツ入りのジャスミンティーのような味わいで飲みやすい。


少しすると、すぐに異変に気がついた。

なんと、匂いがするし味がわかる。

この季節は何食べてもボンヤリとしかわからないのに。

「?なんで?お茶がよかったとか?」

一時的に鼻が通ったのかな?

花粉症の時期は何してもダメなのに…


「でも、熱め下がったみたいだし…どうして?」

「お客様にお茶が効いたようでよかったですわ。」

「やっぱりお茶の効果ですか?」

「ええ、実は少し臨時収入がありましたので、回復ポーションを購入いたしまして…ポーションは、傷や怪我の治療以外にも致死性ではない病を治すのにも使えますから。」

ニコニコ当たりのように説明してくれるが、そもそも、ポーションがわからない。

まあ、民家療法なのかな?

「そうなのですね。」

「はい!あ、こちら当店のカードです。またおいでくださる時には、このカードに念じてくださいね。残念ながら、資格のない方はお連れいただけませんのでご注意下さい。」

「はあ…」

会員制とか資格とか…本当に凝ってるのね。

「残高は1500ゴールドございますので、またお越しの際はご利用可能です。」

「ありがとうございます。」

体調も良くなったし、そろそろお暇しようかしら。

「じゃあ…ごちそうさまでした!」

お店を後にする。


2週間後…

「ねえねえ!!今度のユニバ旅行カリンも行けるってホント?!」

「えへへ!ホントホント。」

「エー!!めっちゃ嬉しいんだけど!花粉症酷いから無理っぽいって言って無かった?…そういや、もう箱ティッシュ持ち歩いてなくない?」

「うん!実は何故か治っちゃって…」

「何ソレ〜よかったじゃん。」

「そ、だからさ。旅行前にみんなでお花見しない?」

「いいね!…実はさ、春のイベントはカリン来れないからみんな遠慮してだけど…これからはバンバン行けるね!」

「…ありがとう。」

みんなやっぱり我慢させていたのか。

優しい友人達に感謝しつつ…


でも、今は花鈴もあのお店が日本ではないと確信している。

だから、大切な友人でも治った理由は秘密なのだ。

きっと話しても夢と思われるだけだろうしね。

皆様、読んでいただきありがとうございます!

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