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雨混じりの雪

作者: 埃川 彼芳乙


 早く暖かくなって欲しいなぁ



 人間らしい、と言われましても、今のところ私には何の事やらさっぱり(わか)りは致しません。

 そうじゃありません?だって、人間らしい、なんてお言葉に基準も何も有りはしないでは無いですか。何を(もっ)て人間らしいなどと皆様方は(おっしゃ)られているのでしょうか。

 聞くところに()りますと、理性的なお方を指すお言葉であったり、論理などというものを度外視した感情的なお方を指す場合もあったり(最早(もはや)、この時点で矛盾していらっしゃる事にお気付きでしょうか?)この他にも、知性的であったり、貪欲(どんよく)であったり、白黒ハッキリ付けられない曖昧(あいまい)模糊(もこ)とした部分であったり、社会的であったりと、人間らしい、というお言葉には多種多様な意味合いが有る様でして、でも如何(いかん)せん愛情と言った部分には、人間らしい、というお言葉は当て()まらないみたいでございます。優しさも(また)(しか)り。

 この様な書き方だと、まるで人間には愛や優しさが無い様に思えてしまうかも知れませんけれど、そんな事は無いのだと私は信じております。(ただ)、私の周りの方々が皆一様(みないちよう)に仰る人間らしさというものが、たった今挙げたものに該当していただけで御座います。私の世間が狭いというだけやも知れませんが、聞いてきましたところから判断しますと、人間らしい、というものはどうやら汚いものに使われる傾向がある様に感じられます。ともすれば、愛や優しさは綺麗なもの。崇高(すうこう)なものだという人間の希望的な考え方なのかも知れません。だから、人間らしい、というお言葉の中には愛や優しさと言ったものは入っていないのだと私は思います。

 何をこんなどちらでも良い事をうだうだと考えているのかと言いますと、十一月に降ります雪時雨(ゆきしぐれ)を見たからで御座います。

 あなたのふんっ、と鼻でお笑いになる姿が容易に想像付きますが、それも当然の反応だと私は思います。

 その景色を見たからと言ってどうして、人間らしさ、という部分に繋がってくるのかてんで分からない、そう仰りたいのですね?

 それは私にも(わか)らないのです。可笑(おか)しいでしょう?

 判らないとは言いましたけれども、何と無く分かりそうな、そんな気がするので御座います。だからこそ、こんな事をグダグダと考えているのです。


 雨の混じった重たい雪…。

 べたべたと粘着質でいて冷たい(みぞれ)……。

 雨とも雪とも付かない中途半端な存在………。()じり()。そう、そうです。これです。

 人間らしい、というお言葉の真意はここに有るのでは無いかと思われます。

 単純に日々を過ごすよりも、裏に何かを含んだ生き方が。

 対峙(たいじ)するお方に()って接し方が変わる多面性が。

 本当は怒っている癖に笑っている姿が。

 只、笑っているよりも泣き笑いの(ほう)が。

 混じり気、こそが、人間らしさ、なのだと思います。

 そんな複雑で面倒臭いものを()(そな)えているからこそ、(たま)に見る真っ直ぐなものに()かれて感動を覚えるのではないかと思うのです。

 例えば、映画やドラマ、音楽の歌詞に小説の一節。将又(はたまた)、雄大な景色。そういった真っ直ぐでいて純粋な混じり気の無いものに憧憬(しょうけい)を抱き、胸をときめかせて居るのです。

 しかし(なが)ら、そうありたいと望んでは現実との違いに悩まされたり、苛立ったりしているのです。それも全ては沢山のものが内で(ひし)めき合って混在(こんざい)しているからに違いありません。

 それを皆々様方は本能的な部分でお分かりになって()られるからこそ、人間らしい、といった表現の中に綺麗で純粋なものはなく、どちらかと言えば(みにく)く汚らしいものばかりを並べ立てては腹癒(はらい)せをしているので御座いましょう。

 本当は綺麗で居たいのにそうはせず、人間らしい、なんてお言葉に付加価値を付けては満足なさって、挙げ句それが腹癒せと来ましたら何とお言葉を申し上げれば良いか、私には判りません。


 人間と言うのは何だか天邪鬼(あまのじゃく)の様に感じられます。


 雨混じりの雪がそぼ降る中、これを受け取るあなたを想像して私は笑ってしまいました。



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