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コード・ゼロ  作者: 黒雪
5/22

伏線

 早めの更新です

 同時刻。

 「メア・・・メア・・・」

 良く通っている公園のベンチに座り、雪那は自身の端末を使って今朝あった少女の事を調べていた。

 もちろん、一般に使用されている携帯端末ではなく、もう一つ所持している、厳重なセキュリティーをしいた特殊なデバイスだ。

 とはいえ見た目は何の変哲もない携帯端末なので、外で使っていても不自然に思われることは無い。

 「雪那、どんな感じ?」

 ミカヅキが横で雪那に問う。

 「・・・駄目ですね、全く情報が出てこない」

 端末の電源を落とし、雪那は溜め息をついた。

 「・・・ふーん。でも、全く出てこないって、逆におかしいよね」

 「確かに。意図的にデータが消されているとすれば・・・やはりただものではなさそうですね」

 「・・・私達が言えたことでもないけれど」

 ミカヅキが苦笑いを浮かべる。

 「まあ、ここじゃ裏のある人なんて珍しくないだろうからね」

 桜花もそれに肯定する。

 「まあ、万が一の事があれば、その時は私達が対処すればいいじゃない。そのために「私達」がいるんだから」

 「そう、ですね」

 ミカヅキに応えるように、雪那は頷いた。


 次の朝。何も変わらない朝が来る。

 「・・・ふぁ」

 気だるげな欠伸をしながら身支度を進める。

 部屋の窓からはレトロストリートが見える。まだ早いのに、レトロストリートの店にはぽつぽつと灯りがともり始めている。

 その景色を眺めながら紫苑は手早く朝食を済ませ、部屋を出た。

 レトロストリートを通り、学校に向かう。

 剱とは生活パターンが違う所為か、登校時に会う事はあまりない。

 メアが高校生になる前は、メアは紫苑の登校中によく付いてきていたりはしたが。

 周辺にあった時計をみて、紫苑は言う。

 「ん。この調子ならいつも通りに着きそうだな」

 

 ※遅刻ギリギリ


 「や、紫苑。おはよ」

 教室に入るとすぐに剱が反応した。

 「おー。あ、一色センセもおは・・・」

 「はあぁぁぁ・・・」

 丁度剱の横にいた陽花にも挨拶しようとした、のだが。

 当の本人はそんな気力もなさそうに、自分の机に突っ伏していた。

 「朝来てみたらこのザマだよ」

 「そこ。年上に向かって失礼よ」

 顔だけを傾けて、陽花は剱を睨む。

 「えーと、何かありました?」

 一応原因を知るため、気に障らない程度の口調で問いかける。

 「新入生の事でね・・・」

 「新入生?」

 「何かまた異端児がやってきたみたいでね」

 そう言って、陽花はまた溜息を吐く。

 「まあ多少特殊な子なら、別に問題はないんだけど」

 「けど?」

 陽花はそこまで言うと、二人にだけ聞こえる位の声量で

 「・・・コード持ちがいるのよ」

 呟くように言った。

 紫苑と剱の眉が一瞬動いた。

 「・・・コードか」

 コードというのは、魔人街、というより、人工島全域に存在する能力者達の特殊部隊だ。

 能力者で編成された正規の部隊はもちろん存在する。

 その中には、対狂魔であったり対悪魔の部隊もいるという。

 だが、それでもコードと正規部隊では絶対的な違いが存在する。

 「でもま、一色センセがそこまで気にしなくていいんじゃ」

 「・・・あのね、正規部隊・・・いえ軍部がコードの事なんて呼んでるか知っているの?」

 陽花が呆れたような、疲れているような顔で言う。

 「・・・「無秩序の傭兵集団」でしょう」

 剱が嘲笑を浮かべながら答えた。その嘲笑がどこに向けられたものなのかは、二人には簡単に予想ができた。

 二つの勢力の絶対的な違い。それは、コードには、法の力が働かない。詰まる所無法集団である、という事だ。

 その存在は極めて危険で、その存在を知る一部の者達からは、否定的な意見が多い。

 だがそもそも、法で縛れる程度の能力者に、コードは与えられない。

 危険であるが、その存在があるからこそ、この人工島がかろうじて「平和」だと言えているのもまた、変わらぬ事実である。

 「・・・ええ」

 「あ、まさか皮肉とか言われたんすか?」

 「・・・」

 図星だった。

 「・・・お疲れ様です、一色 陽花先生」

 妙にかしこまった言い方で、剱が陽花をねぎらう。

 「ああ、はいはい」

 「そういやコードって言っても、それは一つだけなんすか」

 現状、コードは1から7まで存在する、と言われている。

 「そこまでは分からないわ。なんせコードの詳細を知っているのは実質そのコード持ちだけの様なものだし」

 「まあ、そうっすよね」

 「あ、ちなみに」

 何かを思い出したように、陽花が顔を上げる。

 「メアもこの学校に来たんでしょ。あの子の事だし、何か言ってなかった?」

 「メアですか?」

 「コード持ちの事かー・・・あ」

 紫苑がはっとして剱の方を見る。

 剱も理解したようで、二人の視線が完全に合う。


 『面白い子はいたなぁ』

 『名前は・・・真白 雪那だったけ』


 ((うわぁ・・・思い当る節しかねぇ))

 「やっぱり、覚えある?」

 「ええ、まあー」

 紫苑が答えようとした時、チャイムが鳴った。

 「・・・と、長話しすぎたか」

 陽花はまだ怠そうにしているが、ゆっくり体を起こした。

 「ま、また聞かせて」

 「了解です」

 そう言って陽花は上着を着なおし、教室を出た。

 「・・・まさかコード持ちが、ねぇ」

 「調べておくよ」

 「頼む」

 いつもに増して二人の声が暗い。

 だがどちらかというと、緊迫とは程遠い、どこか楽しげな雰囲気だった。

 「じゃあ、終わりに校門前な」

 「ん、そうだね」

了解、のサインをして、二人は自分の席へ戻った。


 二時限目、メアは特別演習場に来ていた。

 カリキュラムの構成として偶然だったが、入学式の次の日から攻魔科特有である「攻術」の訓練が行われる事になった。

 訓練といっても最初なので、基本的な実技テストだ。

 「あ、メアさん」

 メアが声の方向を向くと、雪那とミカヅキ、桜花の姿があった。

 「ああ・・・えっと真白さん」

 「雪那でいいですよ」

 「私はミカヅキって呼んで」

 「じゃ、私も桜花でー」

 呼び方を選んでいるメアに、雪那は柔らかく笑いかける。

 攻魔科のクラスは二クラスあり、攻術の授業では合同で行われる。

 おそらく三人はもう一つのクラスなのだろう。

 

 間もなくしてテストが始まる。

 内容としては能力者の持つ能力の強さ、「干渉力」と、能力の多様性、「汎用性」の測定だ。

 メアはとりあえず、平均より少し高めの数値が出るように「調整」して、テストを終えた。

 「ふぅ・・・」

 能力を使えば、精神力を消費する。運動をすればスタミナを消費するのと同じ原理だが、精神力が一時的にでも消費されるのは、微妙な倦怠感を感じさせる。

 「お疲れ、どうだった?」

 近くにいたのか、ミカヅキが話しかけてきた。

 「ん、まあ平均値よりは高かったし、上々かな」

 そう言ってメアは、高校専用に使用されているタブレットに表示された数値を表示した。

 「そう?私も似たような感じね。汎用性には自信があったし、そっちはかなり高い数値が出せたわ」

 ミカヅキは結果を見ながら、満足そうに言った。

 確かに汎用性においては、彼女の数値はトップレベルのものだった。

 しかし。

 このミカヅキという少女も、雪那と同じ立場の人間なのだとしたら、メアと同様に手加減している可能性は十分にある。

 心の中でそう思いつつも、メアはそれを表には全く出さない。

 「お疲れ様です」

 「お疲れー」

 そんなやり取りを交わしていると、テストを終えた雪那と桜花が、二人の所へ来た。

 「お疲れ。雪那は・・・む、やっぱり好成績ね」

 ミカヅキは雪那の成績を見て感心している。

 「いえ、この程度まだまだです」

 と言いつつも、数値だけで見れば雪那は現状総合トップなのだが。

 「良く言うよね、横でやってる身にもなってほしいよ」

 同時にやっていた桜花が、溜息をつきながら言う。

 「そういう桜花はどうなの?」

 「ん、まあまあかな」

 桜花は伸びをしながら答えた。

 「ま、一応皆いい結果だったみたいだね」

 メアが賞賛の意味も込めて笑う。

 「ま、そうね」

 三人は小さく頷いた。

 「そういえば・・・攻魔科は女子が少ないって言われてたはずだけど、思ったより多いね」

 メアは周りを見て、なんとなく思ったことを口に出した。

 「まあ・・・ここの所、この人工島では戦力の増強が重視されている傾向にありますし」

 「それと、能力者社会が男女関係なく実力至上主義だからってところかな。それでも男女比は四対一位だけど」

 「あとは、別に攻魔科だからって将来の選択肢が絞られるわけじゃないから、護身術にとか、医療関係に興味のある人なんかもいたりするんじゃない。

 ・・・最近街でもちょくちょく悪魔が出没してるらしいしね」

 「・・・ふーん」

 昨日否も似たことを口にしていた。

 「メアも気を付けてね」

 ミカヅキがメアに注意喚起を促す。

 「ん、そうだね」

 一応、返事をしておく。

 今のメアからすれば街中に出る悪魔など、羽虫程度にしか思っていないのだが。

 その後、終了のチャイムが鳴るまで、四人で世間話をしていた。


 そんなこんなで、一日のカリキュラムが終わった。

 「怠い」

 「毎日聞いてるよ」

 校門前で紫苑と剱の二人はいつものやり取りを交わしながら、レトロストリートまでの道を歩いていた。

 桜の綺麗な時期ではあるが、残念ながら二人はそんな街の景色を愛でるような雅な人間ではないらしかった。

 淡々とした足取りで否のいるカフェに着く。

 「否、ただいま」

 「あ、おかえりなさい」

 中に入ると、否がいつも通りの笑顔で出迎える。

 「おかえりー」

 カウンターにはメアもいた。二人より早く終わっていたたようで、先に来ていたようだ。

 「明日は休日ですね」

 「あ、そういやそうだな。ようやく休める・・・」

 見掛け通りだが、紫苑は勉学が苦手な部類の人間で、かなり疲労した様子でカウンターのテーブルに顔を乗せている。

 「俺からすれば退屈な休日より何かしらあった方が楽しいんだけど・・・少し「外」にでも行ってみるとしようかな」

 「別にそれはいいけど、一人で侵蝕区域に行ったりしないでよ」

 「流石にそんな面倒になりそうなことはしない」

 「・・・俺は暇だけどな」

 「それはいつもの事だろ」

 剱が冷静に突っこむ。

 それを否定せず、紫苑は大きな溜息を吐いた。

 「何かおもしれ―ことねーかな・・・」

 そう紫苑がぼやいている時、入口のベルが鳴った。

 扉が開き、一人の女性が入ってくる。紫苑と剱にはよく見知った、というよりいつも顔を合わせている人物だ。

 「一色センセ?」

 「・・・邪魔するわ」

 そこにいたのは、私服姿の陽花だった。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 最近投稿ペースがかなり乱れている気がしますが、とりあえず早く出せました。

 今週はコードゼロを集中的に投稿しようと思っています。

 この話もかなり頭の中では作りあがってきたので。

 というわけで、今回もありがとうございました。

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