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コード・ゼロ  作者: 黒雪
3/22

メア、入学

 こっちも遅れてしまいました・・・

 銀髪の少女、メアは、物珍しそうな、好奇に満ちた目で、高校を見渡していた。

 白い肌、蒼い眼、ところどころ跳ねた銀髪。

 身長はそれほど高くなく、華奢な体つきではあるが、その雰囲気は子供というには、少し違う。

 「紫苑達が学校始まってから、退屈だったからなぁ・・・」

 新入生、なのだろうが、全くそれを思わせない様子で、メアは軽い足取りで、高校を歩く。

 小さく欠伸と伸びをしながら、入学式の会場である体育館に入る。

 事前に通達されていた場所の辺りに向かう。

 とはいってもまだ開始まで余裕があったせいで、会場の中にいる人はそこまで多くはない。

 「んー、どうしようかな」

 しばらく暇ができる。

 この学校は能力者の育成が主軸となっているために能力者としての実力さえあれば入ることが出来る。

 実力主義なのは、この学校だけでなく、能力者の世界全体に共通して言えることだ。

 つまり結論。

 実力だけあり、性格に難のある人間も、少なからずいる。

 実際彼女は、そういう事に関して、ある意味ではよく認識していた。

 そのため、別に人と交流することが苦手ではないメアも、気楽に他人と話すことはあまり気乗りしない。

 「ふぅ・・・かといって「あいつ」は高校で呼ぶなって言われたしなぁ・・・」

 ため息を吐いた後、結局、指定された場所に座って、時間まで眠ることにした。

 が。

 何故かこういうときに限ってそれは上手くいかないもので。

 「あっ・・・」

 歩いていると、携帯端末を見ながら歩いていた他の新入生にぶつかった。

 相手は何かに集中していたようで、危機管理を怠っていたせいか、ぶつかった時の衝撃で、携帯端末を落としてしまった。

 「よっと」

 メアはそれが地面に当たる前に、空中で受け止めた。

 「はい」

 「あ、どうも・・・ごめんなさい、不注意でしたね」

 携帯の持ち主である、新入生らしき女子生徒が、素直に誤ってくる。

 「ん、私も気を抜いてたし、ごめんね」

 性格のいい人で良かった、と心の中で安堵しつつ、軽く笑ってみせる。

 「もう雪那せつな、こんなところで下向いてたら危ないでしょ」

 「ちょっと油断しすぎだよ?」

 「そうですよね・・・」

 雪那と呼ばれた少女はどうやら三人グループで行動していたらしく、後ろにいた金髪の少女と、茶髪の少女が雪那を注意している。

 「あ、そうだ」

 雪那はメアの方に向き直る。メアは席に向かおうとしていたが、その動作を止め、雪那の言葉に耳を傾けることにした。

 「私は真白ましろ 雪那・・・攻魔科です。よろしくお願いします」

 雪那が簡単な自己紹介をする。

 「ああ、私はミカヅキ・ローレライ。同じく攻魔科よ」

 「東條とうじょう 桜花おうか。二人と同じです。よろしくね」

 それに続けて二人も自己紹介をする。ミカヅキ、といった少女はおそらく外国人か、ハーフ、といったところだろう。今時、外の人がいるのは珍しい事ではない。

 メアも似たようなものだ。

 「へぇ、三人も攻魔科なんだ。女子の攻魔科の人数は少ないって聞いてたけど」

 「も?ということは」

 「うん、私も一応攻魔科なんだ。・・・あ、それと私はメア。よろしく」

 「メア・・・、貴方もハーフだったりするの?」

 ミカヅキがメアの名前に興味を示す。

 「んー、どうなんだろう。良く分からないんだよね」

 「分からない?」

 「私苗字無いしさ」

 「え・・・」

 全く気にしていない口振りでメアが言う。

 彼女にとっては気にするようなものでは無かったらしかったが、流石に苗字が無いのは、事例が無いわけではないが、珍しくないとは言い難い。

 それに気づいたのか、メアは頬をかきながら

 「あ、名前はあるし、そんなに気にしてないから。そこまで意味深な理由でもないしね」

 と笑った。

 「そうですか・・・」

 詮索は無かった。

 「あ、そろそろ・・・じゃ、また後で会えたら」

 時計を見て、メアは三人に手を振りながらその場を去る。

 雪那も小さく会釈をした。

 「・・・」

 「どうしたの雪那」

 メアがいなくなった後、雪那が暗い顔をしているのに気が付いて、桜花が雪那に声をかける。

 「メア・・・どこかで聞いたことがあるような気がしまして・・・」

 

 指定された席に座って、メアは頭を抱えていた。

 「うー、まずったかなぁ・・・」

 メアは溜め息を吐きながら、雪那の見ていた画面を思い出す。

 「あれ、今朝の事件の事だったよね・・・」

 しかも、ニュース面、というのとは違った。その事件に関して詳しくまとめられた、報告書、といった方が正しい文面だった。

 「・・・訳アリはお互い様、なのかな?」

 周りには聞こえない程度の声量で呟く。だが情報量があまりにも少ないせいで、これ以上考える事は無駄の様な気がしてくる。

 最終的には開始まで、眠っておくことにした。


 丁度開始のチャイムで目が覚めた。簡略化された入学許可の儀やら、校長の話やらが淡々と進んでいく。

 予想はしていたが、退屈なものだった。

 もう一度眠ろうかと目を閉じようとしたのと同時に新入生総代の声が聞えた。

 ついさっき聞いたばかりの、透き通った高音の声。雪那だった。

 「あ、あの子総代だったんだ」

 確かに不思議ではなかった。人柄も良さそうな印象を受けたし、多彩な事に秀でている優等生、といった感じだった。

 メアとは別の意味で、緊張も感じられない。

 「・・・ま、退屈はしなさそうかナ?」

 メアが小さく笑みをうかべる。

 未知のものに対しての、好奇心がメアの中に沸き立ってきた。

 

 入学式、SHRを終えて、慣れない空間から解放されたメアは、伸びをしながら、校門にもたれていた。

 雪那達とは同じクラスでは無かった。

 今は、人を待つためにここで待機しているという状況だ。

 「・・・あ、紫苑お疲れー!」

 「俺もいるんだけどね」

 「お疲れメア」

 足音に反応して、校舎の方向を向くと、紫苑と剱がメアの方に向かってきていた。

 しれっと無視された剱は、特に気にすることなく紫苑の横ですまし顔をしている。

 「どうどう?新しい制服ー」

 華麗にメアが一回転し、あざとくウインクを決めてくる。

 「あーあー、かわいいかわいい」

 「ん、似合ってんじゃね?」

 「ふふっありがとー」

 おそらくこのありがとうは紫苑の誉め言葉に対してのものだろう。

 「それで、高校の感想は?」

 「ん?んー、まぁ別に特には・・・」

 とそこまで言って、メアは口を止める。

 「あ、でも、面白そうな子はいたなぁ」

 「面白そうな子?」

 「ん。・・・多分、私達と同類」

 メアのその言葉に紫苑と剱は、顎に手を当て

 「まあ、ありえない事ではないのかな・・・」

 「いや俺らと同類、っていうのは、そいつらに失礼な気もするんだけど」

 苦笑いを浮かべて、紫苑が言う。

 「一色センセに明日聞いてみるか?」

 「いや、それなら管理人さんの所に行くとしよう」

 「あ、それはサンセー。否のお菓子おいしーから」

 「理由がなんか違ってる気がするが・・・そうだな、そうするか」

 紫苑が剱の提案の方に乗る。

 「さて、それじゃ行くか」

 そう言って、紫苑が道に出る。二人もそれに続く形で、歩き始めた。

 

 

 これの投稿後にペンネーム帰る予定です。

 それはおいておいて、零落者の方でも言っていますが、七月の中旬まで投稿ペースが落ちます。

 こんな調子ですが、よろしくお願いします。

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