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コード・ゼロ  作者: 黒雪
15/22

あの場所で

 「計画」前日。紫苑は再びあの場所を訪れる。

 偶然か必然か。そこにいたのは独り怯える雪那の姿があった。

 第七区の外。侵蝕区域入りさえしなければ下級の悪魔しかいない筈なのだが、今は違う。

 七区、と定義された範囲から少し離れた所に捨てられた廃屋が点在する地域がある。その廃屋の一つで、数人の男が集まっていた。

 「・・・ちっ。流石にこれだけジャミング波を飛ばしていると通信は無理、か」

 「仕方ないだろう。なに、これで最後だ。後は日が経てば俺達の仕事は終わりだ」

 「当初とは大分違うがな」

 「感応装置が回収する前に無力化されているとは。カモフラージュはしていたはずだが・・・」

 「軍の連中が動いたとは考えられん。例のコード、という奴らか?」

 「有名ではあるな。・・・そもそも、それも考慮しての変更なのだから」

 「しかし面白い話だな。あのバケモノを歩兵一小隊規模で用意するなどと。そこまでする必要があるのか」

 「そこは知ったことではない。後数日で我々のお役は御免だ」

 「だな。・・・ここで長居する理由もない。行くぞ」

 男達は話を終えると暗い中何処かに去っていった。

 男達が廃屋を去った後。一つの影が廃屋の屋根の一つに降りた。

 「・・・見つけた」


 数日後の週末。

 「やー明日から休みだけどさ。二年になってからまともな休日が無いように感じるのは俺だけ?」

 「・・・まあ。紫苑は何かと面倒事に巻き込まれるからね。俺は大して変わらないかな」

 紫苑と剱は放課後、街を歩いていた。

 「今日一色センセ早く帰ってたし、あの人も大変だな」

 「良くもまああんな老害の掃き溜めみたいなところで生きてられるよね。そういう意味では本当に尊敬するよ」

 「せめて違うところ評価してあげて?」

 二人は今日は何処にも寄らずただ真っ直ぐ帰宅しに向かっていた。紫苑の家の前に着くと、扉の前で二人は柵にもたれた。

 「そういえば・・・飛鳥や風音も休んでいたね」

 「ああ、確かに。珍しいよなバカ真面目なのに」

 「・・・二人同時に、か。このタイミングで、ねぇ・・・」

 剱は確定かな、と目を細めた。

 「ん。ようやくあちらも動いたって事か」

 「遅くはないが早くもないね。それにこれだと・・・ま、いいか」

 剱は何か続けようとしたが、首を横に振り話を切った。

 「・・・で、最終確認だが。お前の予想では明日、なんだな?」

 「ああ・・・そうなんだけど、ね」

 紫苑の確認に対し、剱の反応は歯切れの悪いものだった。

 「まだ少し引っかかる。強化された狂魔程度俺達なら造作もないが」

 「が?」

 「あまりにも軽薄過ぎる。組織一つの計画にしては大雑把だと思わないか?」

 「そぉか?テロとかってそういう物じゃねぇの?大体いつも何だかんだ解決すんだろ」

 「・・・それは紫苑だからこそ、なんだけどね」

 気の抜けた紫苑の返事に剱は苦笑した。

 「それじゃ、ここで。また明日」

 「おう」

 紫苑は剱を見送った後、部屋に入った。

 「・・・と。帰ってきたものの」

 鞄を下ろし溜め息をつく。

 「暇だ」

 

 服を着替え、紫苑は外に出た。特に意味は無かったが。

 「・・・あ、そうだ」

 何かを思いつき紫苑は歩き出す。騒ぎから一週間と経っていないが、街の人々はまた何事もなかったように表に出ている。それを通り過ぎて、人気の少ない通りに入る。

 騒音は小さくなって、また別の音が聴こえてきた。

 「・・・!」

 その音に紫苑はすぐに反応した。誘われる様に紫苑はその音の方に向かった。

 音は徐々に鮮明になっていく。バイオリンの音だ。

 着いたのはあの時の公園だった。

 「・・・」

 無言で公園に入った。

 聴こえてくるのは美しく妖艶なバイオリンの音と、微かに吹く風の音、木々の音。

 そしてその中に、真白 雪那は居た。

 彼女がバイオリニストとしてその才を認められ、称えられる所以を改めて感じさせられる。

 紫苑もその空間を邪魔しないよう静かに公園に入ったのだが。

 その瞬間、バイオリンに注がれていた雪那の視線がふと上を向く。

 音が止んだ。

 紫苑はまるでこの空間の音が消えたような、そんな錯覚におそわれる。

 雪那本人も、初めて会った時と、何処か雰囲気が違う。

 足を止めている紫苑に雪那は優しく微笑みを浮かべた。

 「・・・まさか、本当に来てくれるとは思いませんでした」

 「・・・ん?」

 「いえ、何でもありません。お久しぶりですね紫苑先輩」

 どういう意味か、と紫苑が訊く前に雪那は話し始めた。

 「ああ。またここで会ったな・・・というか、俺がつられて来たんだけども」

 苦笑しながら雪那に近付く。

 「けど珍しいな。平日はこの辺に来てもいないのに」

 「そうですね。・・・でも、明日は弾きに来れないので・・・」

 「・・・そうなのか?」

 何故か、は察しがついた。

 「ええ。用事が出来てしまって・・・」

 「・・・」

 「・・・」

 沈黙が続いた。雪那の表情は晴れなかった。

 「・・・先輩は、以前私が強い、と。そう言ってくれましたよね」

 おもむろに雪那が口を開いた。

 紫苑は相槌は打たなかった。

 「そんな事、無いです。私は。もう何度目か分からないのに、それでも・・・私は怖い。怖くて・・・何かにすがらないと自分を保っていられないんです・・・」

 微かに、バイオリンを持つ手が震えていた。

 何が、とは雪那は言わない。言えないのだろう。コードという名を持っていようが、雪那が一人の少女であることに変わりは無い。独りでその葛藤を抑えるのは、辛いものがあるのだろう。

 「・・・事情は詮索しない。まだ会って日も浅い俺にそんな事言う資格も無いだろうしな。けどまあ」

 俯いている雪那の頭をそっと撫でた。

 「・・・!」

 「気負い過ぎんなよ。失敗より成功をイメージした方が物事上手く。・・・まあ偉そうな事言えた立場じゃないが、先輩からのささやかなアドバイスって事で、な?」

 「・・・」

 紫苑がそう言うと、雪那は紫苑を見つめて、固まっていた。

 「ど、どうした?あ、さっき頭触ったの不味かった?他意はない事をご理解頂けるとー」

 「・・・ふふ」

 雪那の口から、笑みがこぼれた。

 「やっぱり、先輩は不思議な方です。あまり会った事が無いのに、何故だかこう・・・信用出来て。こんな私の話にも耳を傾けてくれて・・・」

 そう言いながら雪那はバイオリンを片付け、立ち上がる。

 「ありがとうございました、話を聞いて下さって。・・・また、先輩の事も教えて頂けますか?直ぐでなくていいので、いつか」

 そう言い残すと、雪那は公園を後にした。

 「・・・直ぐに分かる」

 雪那がいなくなった公園で、紫苑は独りで呟いた。

 きりがいいので微妙に少ないですが、とりあえず出せました。コードゼロで何に悩むかって全てにおいてそうですがサブタイトルなんですよね。なんだか後々被る事が多発しそうで・・・あらすじもまた然り。

 という事なのでそこは大目に見て頂けると。

 それでは、今回もありがとうございました。

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