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コード・ゼロ  作者: 黒雪
10/22

演習戦

 昨日出そうとして、出し損ねました・・・

 先に飛鳥が仕掛けた。物理的損害は極力避けるために武器の使用は出来ない。一応体に実害が及ばないよう、予めシールドが展開されてはいるが。

 そして身に着けた損傷計測器の値が一定値を越えれば負けだ。

 だが飛鳥には関係無いらしい。

 彼女の手に二つの炎の扇が形成される。

 「・・・飛鳥、参りますわ!」

 風の波に合わせて炎が波状に広がっていく。

 だがそれは紫苑に当たる前に、障壁によって阻まれた。

 「・・・ま、今回は俺が支援かな」

 「おう、頼む」

 剱は特に身振り無く次の能力を行使する。

 空気が収束し、紫苑の周りで渦巻く。

 「さて、俺もやるか」

 脚に力を入れ、地面を蹴る。

 「走力「強化エンチャント」!」

 一蹴りだけで紫苑は距離を一気に詰める。同時進行で手元に空気の弾丸を生成する。

 物理攻撃は出来ないため殴打も使えない。紫苑のスタイル上、それはかなりのハンデになる。

 が、近接攻撃程の高火力は出す必要が無い。それを考えれば中距離でも当たる弾丸型にした方がよくもあった。

 飛鳥は紫苑が動いたのと同時に手を前にかざす。

 「術式結界「攻ノ型」」

 飛鳥の詠唱と共に飛鳥と風音を囲う様に炎の壁ができ、外側に炸裂する。

 「うお・・・」

 紫苑はブレーキをかけバックステップで距離をとる。

 が、バックステップした瞬間、今度は炎を貫いて一直線に風の槍が飛んでくる。

 それを腕に纏った真空波とぶつけ無理やり相殺する。

 「あぶね」

 「まだ・・・」

 相手の攻撃は間髪の無いものだった。

 着地と同時に風音が紫苑の懐に飛び込んでくる。さっきとは違って鋭い目つきだ。

 おそらく二人共前衛で、確実に紫苑を叩きに来ている。

 ・・・しかしそれを確認できるだけ、紫苑には余裕がある。

 脚にかけた強化はまだ解除していない。右足で地面を踏み鳴らす。

 紫苑を中心として衝撃が起こり、砂埃と砂利が散った。

 「・・・っ」

 「隙ありだ」

 紫苑が風音に向かって手を伸ばす。

 「させませんわっ」

 紫苑が能力を発動するのと同時に紫苑に向かって空刃が飛ぶ。

 だがキャンセルはしない。

 空気の弾丸が風音に当たる。紫苑にも直撃では無いが空刃が当たった。

 計測器の警告音はどちらも鳴っていない。

 紫苑の弾は胴体に当たったはずだが・・・

 (防護壁・・・あの一瞬で)

 風音の支援系能力の方が早かったらしい。

 「紫苑、一回下がって」

 「ん・・・ておい。さっきからお前何やってるよ」

 後方でずっと立ち尽くしている剱に紫苑が後退時に突っ込む。

 「ああ、紫苑一人でやれるかなって。傍観してた」

 「働けよ!?」

 「冗談。あの二人、いっつも行動パターン変えてくるから、観察をね」

 紫苑を見て、剱は愉快そうに言う。

 「おお、それで何か分かったことは?」

 紫苑は二人を牽制しながら、前を向いたまま話す。

 「そうだね、紫苑単騎で行っても今回は結構固めてるから、効果は薄そうだね。さっきみたいに相討ちになって終わる」

 「ふむ」

 「後、飛鳥はあれだけ炎使ってくるからいいけど」

 「ん?」

 「本領が発揮できないと俺と紫苑って、絵面的に地味になるなー・・・て思った」

 「今それ言うか!?」

 小声ながらも紫苑は語感を強めて言う。

 「まあ、何もしてないわけじゃない。今から二人を分断する。紫苑、飛鳥の方は任せるよ。俺は風音を相手しよう」

 「お、おう・・・ようやくまともなことを・・・おし、了解だ」

 話を済ませると剱は即座に仕掛けを起動させる。

 「なっ・・・!」

 無数の障壁が地面を這うように飛鳥と風音の間を突き抜ける。

 「展開」

 そしてそれは、二人を引きはがす様に拡大していく。

 「っ!?分断される・・・飛鳥!」

 「つられないで風音!無理に壊そうとしても隙をー」

 「見せるだけだよなぁ?」

 剱が障壁を展開させてからの紫苑の行動には迷いが無かった。

 展開されると同時に動き、相手の一瞬の動揺を逃さない。

 能力が制限されている状況下において、能力の多彩さを持つ飛鳥に正面戦闘は不利。

 だからこそ、先手を取ることは必須条件だ。

 右手でフェイントをかけ、左手を起点にして魔力の奔流を発生させる。

 能力を発生させるための元素、と言っていい因子が生成する未解の力。それを能力に変換せずに放ったところで、効果自体はあまりない。

 だが、この演習のルールでは別だ。

 この演習の敗北条件は計測器の数値が一定値を超える事。そして測定の基準は「魔力で構成された」シールドへの負荷値。

 ただの魔力の奔流でも、放出量が多ければ計測器は「強い魔力値の攻撃を受けた」と判断し、警告音を鳴らす。

 結論から言うとただの裏ワザだが、これだけ縛られた条件の中で勝つにはこのくらいなければ紫苑はジリ貧な状況を延々と繰り返す羽目になっているだろう。

 魔力の奔流は飛鳥にも感覚で捉えられた。それが不可避であることも。

 だがそこで敗北を受け入れないのは、戦う者の才覚か、それとも「総合一位」、としての意地か。

 飛鳥の瞳に紅に燃える焔の様な光が灯る。

 それを紫苑が認識するころには既に爆炎が発生し、二人を飲み込んだ。

 周囲に熱風と砂埃が吹き荒れる。

 その光景にフィールド外にいる生徒全員が一斉に目を見張った。

 剱と風音、陽花は静かにそれを見つめている。

 煙が晴れ、二人の姿が現れる。そして、双方の計測器が赤いライトを光らせ、ざらついた警告音を鳴らしていた。

 しばしの硬直と静寂。

 そして。

 「あっぶねぇなお前!防護シールドごと吹き飛ばされるかと思ったわ!」

 急に紫苑が冷や汗を浮かべて叫んだ。

 「あら、この演習の制限はシールドの許容範囲を超える過度の攻撃を禁止する、でしょう?ちゃんと調整しましてよ・・・限度ギリギリにね」

 「何やられた奴がどや顔してんだよ」

 「ただの敗北なんてしたくありませんので。結果的には貴方も敗者ではありませんか」

 「すいません一色センセー。次から物理ありでいいっすかねー?」

 流れるように口喧嘩を始めた二人に、剱や風音も苦笑する。

 「とりあえずあんたらフィールドから離れなさい。後物理は却下。私が怒られるから。以上」

 陽花は面倒そうに溜め息をついて、手で払うようなジェスチャーをした。

 それに二人ははっとして横を向いた。

 「ああ・・・まだ終わってなかったな」

 「そうでしたわね。まだ、あの二人は終わっていない」

 

 「さて・・・それじゃ私達も、決着、つけないとね」

 「そうだね。手っ取り早く済ませようか。あの二人に見せ場は取られちゃったし」

 「ふふ。・・・じゃあ、少しだけ・・・「魅せた」方が良いのかな?」

 剱が肩をすくめて笑みを作るのに同調するように風音も可笑しそうに微笑んだ。

 対比するのが違っているのだろうか。やはり温度差が激しい。

 再び戦闘態勢を取る。が、先程のセリフはどこえやら、二人は全く仕掛けない。

 「どうしたんだい?来なよ」

 「・・・そんな事言って。私、剱君の「少し」意地悪な所、知ってるから」

 二人共、その場に直立したまま笑顔でやり取りを交わす。

 戦場フィールドとは思えない異常な光景だ。

 「・・・でも、そうね。解除している方が、隙を作るから・・・」

 そう言って風音は目を閉じる。

 「・・・乗ってあげる」

 刹那、風音が急激な速さで動いた。

 風音が前に進むと、風音の足場が小爆発を起こした。

 前に進む度に無数の爆発が連鎖的に発生する。

 爆ぜる、爆ぜる、爆ぜる。

 風音はそれを見切るように、紙一重で躱しながら剱との距離を詰めていく。

 (遠距離から攻撃しても障壁に阻まれて終わり・・・損傷を受けている私の方が火力で負ける可能性もある。となると)

 地雷の解除された場所で動きを止め、指を地面に沿わせながら走らせる。

 指の向きは剱。その指になぞらえるように衝撃波が発生し、地を這って剱を襲う。

 剱はそれを障壁によって防いだ。

 衝撃波は剱の目の前で壊れる。

 無論剱も何もせず傍観を決め込む気はない。

 その場に立ったまま、障壁を周囲に展開していく。砂埃に紛れた奇襲の対策だろう。

 だがそれで風音は止まらない。

 動く障壁を壊して、踏み台にして、躱して、壊して、一気に距離を詰めにかかる。

 二人の距離は約五メートル。

 その洗練された立ち回りに剱は感嘆を込めた苦笑をこぼす。

 「流石だねぇ・・・あれを捌けるなんて。風音ってほんとに学生?」

 「ここなら・・・届く!」

 風音の手に突風の槍が生まれる。

 「結合」

 剱の速攻詠唱で、周囲の障壁が一点に集中する。

 だが、風音に躊躇の色はない。

 槍をそのまま障壁に喰い込ませる。

 そして槍は勢いを増し、障壁を貫いた。

 「あれを抜くかぁ・・・まぁでも」

 風音が障壁を破ったと同時に、剱は笑顔で言った。

 「今回は俺の勝ちだね」

 「—―――っ!?」

 槍が剱に触れるより先に、風音の計測器が警告音を鳴らした。

 「・・・発生条件は障壁の崩壊。条件が満たされた瞬間に大量の魔力を放出する。・・・ま、俺も警告音が鳴らないギリギリ位の距離だったけど」

 「・・・最初から、それを狙って・・・!?」

 風音は驚愕を隠し切れない様子で言った。

 「まあね。紫苑があれだけやってくれたおかげで、準備の時間は問題なかったよ」

 剱の言葉に、風音は力なくへたり込んだ。

 が、すぐに顔を上げて

 「やっぱり、敵わないなぁ・・・」

 と、苦笑ながら笑顔を作ってそう言った。

 「いやいや、かなり危なかったよ?」

 「剱君はまた・・・あんなに余裕の戦い方見せられて僅差、なんて言える訳ない」

 「ふふん?まあでも、いい勝負だった」

 剱が風音に手を差し伸べる。風音は優しくその手を取った。

 「うん。・・・ありがとう」

 そしてその手で軽く握手を交わす。

 「「・・・」」

 その一末を外野で見ていた約二名は無言でそれを眺めていた。

 「なんというか・・・ね」

 「いい好敵手兼友人って感じだな。温厚な」

 「確かにそうですわね。・・・まぁ、相性がいいんでしょう」

 飛鳥の声は何処か尖っていた。というより。

 (あれ、何か拗ねてる?・・・ああ、一応こいつでもそういう意識はあるんだな)

 紫苑は飛鳥を横目で見ながらそう解釈する。

 もし紫苑の思惑が聞えていたとすれば、ほとんどが「お前が言うな」と思っただろう。

 (んー・・・何かフォローした方が良いのかね・・・よし)

 紫苑はほんの僅かに考えた後。

 「あー、俺は一応、お前の事いい奴だなーって思ってるぞ?」

 考えてこれだった。

 「な・・・何を急に」

 だが、返ってきたのは意外と素直な反応。

 実際彼女が紫苑に対して抱いているのは実力に対しての対抗心であって、それ以外で紫苑を嫌悪している訳では無さそうだ。

 「お前みたいに強い人間がこんなとこにいて良かったって意味だ。・・・ま、俺はお前が嫌いじゃない。

そこんところよろしくって事で」

 「・・・そうね。また来週・・・楽しみにしているわ」

 紫苑の最後の語尾は若干煽り気味のイントネーションだったが、飛鳥は言葉の意味だけを受けとった。

 「それじゃこれにて終了。号令は・・・いいわ。はい解散」

 教師としてそれでいいのか、とさえ思ってくる程の適当な陽花の合図で演習が終わった。

 最近一話三千文字を基準に調整している・・・筈なんですが。全く出来ていない黒雪です。

 それでもようやく環境がましになってきまして、週一投稿は出来るように。

 ・・・ですが最近、ゲームなんかもやっていたりするので、投稿遅れていたら「ああ、サボってるな」程度に思っていてください。

 さて、こんな感じではありますが、今回も最後までありがとうございました。

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