第45話 先制
ぞろぞろと、学生たちが屋上へと上がってきた。それぞれ手製の弁当や購買で買ったパンを持っている。
「さあやろうぜ。本当は小学校へ行こうかと思ったんだが、お前にはまだ刺激が強いと思ってな。オレは優しいだろ? 段階を踏んでから、ガキんとこ行こうな」
生徒達は、小さなグループにまとまり、食事を始めている。高校生らしく、ケタケタとみな笑っていた。
「うるせえよな、あいつら。今に泣き喚くくせになあ」
アキヒデは背中にナイフを隠し、生徒たちへと歩いてゆく。
「先に始めさせてもらうぞ。競争で負けた方は、小指切断な」
平山は青ざめつつ、殺されるであろう生徒達を見た。
そこには、平山の高校生時代のクラスメイトがいた。時間を越えて、友人達がいる。何も構えず、何も怯えず、何も疑うことなく過ごせていた時間がそこにはあった。
平山がひそかに思いを寄せていた女生徒もいた。弾けるような笑顔で、笑っている。
平山は駆け出していた。
「ようやくやる気に……」
振り向いたアキヒデのわき腹に、平山はナイフを深々と突き立てる。
「なんだこれ?」
アキヒデは苦しんではいない。痛みは感じないようだ。しかし、驚いてはいた。
「なんのつもりだよ、これは?」
怒りの色が、顔に浮んでゆく。
平山は恐れたが、怯みはしない。
「……殺してやる」
アキヒデと平山の二人は、同時に叫んでいた。