第37話 殺戮の理由
アキヒデに促され、平山は叫びながら村へと駆けた。
突撃銃は滅茶苦茶に発砲される。
村人たちは驚いているが、逃げる素振りは見せない。戸惑うのみだった。
―― 逃げろ。逃げてくれ。
平山の願いは届かない。
平山はまず、男達に照準を合わせる。
一人の勇敢な青年が、鍬を構えて向ってきた。そんな勇猛な男は、比較的容易に撃つことができる。平山はその青年を粉砕する。
それを見た村人達は一斉に逃げ出した。
平山が喜ぶ前に、村人達の行く先にはアキヒデが待ち構えていた。
「こっちに来る奴は酷い目に遭うぞお」
アキヒデが楽しそうに銃を撃ち捲くっている。
残念なことに、村人達は反転し、平山に向って逃げてきた。
仕方なく、平山は村人達へと銃を向ける。
剥げて前歯がない老人を撃つ。手を取り合って逃げる若い男女を撃つ。転んだ妹を助け起こす少年を撃つ。
赤子を背負う母親に照準を合わせた時点で、平山は限界を迎えた。
その場にうずくまり、吐いた。実際に嘔吐物は出なかったが、気持ちの悪さはリアルだった。
平山の左右を、村人達が通り過ぎてゆく。
「おい、真面目に遊ぶ気がないのか? もう一度、気合入れてやろうか」
うずくまる平山の視界に、アキヒデのブーツが入ってきた。
「もう、許してくれ。頼む、許してくれ」
泣きながら、平山は懇願した。アキヒデのブーツにすがり、頭を地面に擦り付けながら頼み込んだ。
しかし、アキヒデは冷酷に笑うばかりだ。
「オイオイ、お前まさか、オレが無理にお前をつき合わせていると思っているんじゃないだろうな。オレは、お前の一部なんだぜ。お前が深層心理で求めていることを、オレが実体化させてやってるに過ぎないんだ。もっと楽しめ。もっと素直になれ。お前は、残虐な男なんだ。楽しもうと思えば、こんな遊びを楽しめるんだ」
高らかに響くアキヒデの笑い声を聞きながら、平山は再度吐いた。