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  作者: 堀 雄之介
35/50

第35話 改心

 会社は休もうかとも考えたが、家にいるのが怖かった。


 布団を見るのも恐ろしかった。


 平山は普段よりも1時間も早くアパートを出る。勿論、出社前にはシャワーを浴びていた。


 毎日始業時間ぎりぎりに出社する平山が、まだ閑散としているオフィスに現れると、他の社員たちは訝しんだ。


 終に辞表を持ってきたのか、心を入れ替えたのか、と囁き合う同僚たちの声が聞こえた。


 そんな雑音を無視し、平山は一心腐乱に仕事を始めていた。


「午後から雹でも降るんじゃねえのか?」


 上司が嫌味を言っても、平山はただ黙々と業務をこなしていた。




「おい平山、もうひと段落ついてんだから、そう根つめなくてもいいぞ。今日はもう帰れ」


 午後11時。平山はまだオフィスに残っている。


「あと少し見直ししてから帰ります」


 上司は目を見開き、呆れたような、驚いたような顔をしてから帰っていった。


 平山は最後の一人となり、日付が変わるまで働き続けた。




 終電には間に合った。


 もう、歩いて帰ることはないだろう。


 いつものコンビニでは、弁当の代わりにウイスキーを買った。


 アパートに戻ると、平山はストレートでウイスキーを呷りはじめる。




―― 酔わねば、寝れない。




 普段、体外離脱を行うためにしてきた行動と、真逆のことをすることで、通常の眠りを期待した。


 脳を眠らすには、アルコールが最も効果的だ。


 終いに平山は、ウイスキーを一瓶空にしていた。アルコールは足の先まで回っている。


 何度か猛烈な吐き気に襲われたが、平山は耐え抜いた。


 そうすることで、アキヒデに勝とうと考えていた。それが単なる逃避であることに、平山は気づいていなかった。


 無駄なアガキであるということにも。


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