第32話 反抗
「もう止めだ。こんなの、俺面白くないわ」
ライフルを捨て、平山は言った。
「なんだよ。じゃあ、俺が撃ってやる」
アキヒデがライフルを構え、小象を狙った。
「もう止めろや」
アキヒデのライフルを奪い取ろうと平山が手を伸ばしたが、掴んだ銃は、ピクリとも動かなかった。
「なんだよ。邪魔すんなって」
微動だにしないアキヒデは、そのまま弾を放った。小象が、粉みじんに吹き飛んでいた。
「きたねえ花火だ」
そう言って、アキヒデは笑い転げた。
ゲラゲラと笑っているアキヒデを背に、平山はジープを降りる。
「どうした? もう終わりかよ」
「お前とは、もう一緒にいたくない。消えろ」
その途端、アキヒデの馬鹿笑いは止まる。
「なんだと?」
「キエロって言ったんだ。お前の遊びには付き合いきれない。もう、消えちまえ」
「なんだよ。とんだ甘ちゃんだな。動物たちに情でも芽生えたのか? いいか、あいつらはただの夢の産物だぞ。お前の妄想に過ぎないんだよ」
「そうだとしても気分が悪いんだよ。お前は、消えろって」
サバンナは既に消えていた。周囲は、平山が住む町の景色に変わっている。
「消えろと言われて、はいそうですかと、オレが消えるとでも思ってんのか?」
平山はアキヒデと対峙する。そして、島津を消し去った方法と同様に、自らの分身を作りだした。
10名の分身たちが、アキヒデを囲んでいる。
「最初は楽しかったが、お前とも合わないみたいだ。もう消えちまえ」
平山は分身たちに、攻撃を始めるように命じた。