第27話 快感
平山は、激しい痛みを感じていた。
怪物が吐き出す炎が熱い。崩れ落ちてきた建物の破片にぶつかって痛い。自らが放つ銃声もうるさく、鼓膜が痛い。どんなダメージも直ぐに消え、怪我もしないのだが、痛みはリアルだった。
そんな酷い環境であるにも関わらず、平山はかつてないほど、その戦いを楽しんでいた。
無数に弾を撃ち込んでも、怪物はなかなか倒れようとしない。隙をついて、炎を放ってくる。
平山の体が炎に包み込まれそうになると、横からアキヒデが救ってくれた。
「ぼやっとするな。死んだら目が覚めちまうぞ」
口は悪いが、遊びのノリは良い男だ。いつしか平山は、その戦いに夢中になっていた。
平山が連続で放ったバズーカ砲が、見事に怪物の脳天に命中する。大きな体を反らせ、怪物は悲痛な叫びを残して倒れた。
「なかなか手強かったな」
アキヒデは握手を求めていた。素直に、平山はその手を握る。
「痛みがあったほうが燃えるだろ」
アキヒデの言葉は正しい。自信が無敵なゲームは、面白みなど何もないのだ。スリルや困難を乗り切ることで、面白味、快感は得られるのだ。
「あんたは良いガイドだ。気に入った」
一緒に遊べる仲間がいるということも、面白味を高めている理由だと平山は悟る。島津はただ見ているだけだった。見ていて、文句を言うだけだった。しかし今度のガイドは、一緒になって遊んでくれる。
「今度こそ疲れた。もう帰るな」
「ああ、じゃあまた明日な。次はもっとスリルを味合わせてやる」
平山は充実した気分でホワイトアウトを向かえた。