表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: 堀 雄之介
19/50

第19話 殺意

 島津は時間をかけて、上位世界の素晴らしさを説いた。


 仏陀の教えを直接聴くこともできれば、キリストの愛を感じることもできる。


 人々が神や天使として認識している存在に出会うことも可能だという。


 しかし、平山は全く耳をかそうとはしなかった。島津が力説する横で、レースクイーンを10人ほど召喚し、一緒にプールに飛び込んで遊びだした。


「おい、まじめに聴けって。そんなくだらないことにこの世界の時間を費やすのは、本当に馬鹿げたことなんだぞ」


 島津も苛立っているようだったが、平山はそれ以上に頭にきていた。


 元から、島津の存在は気にいらなかったのだ。いつも上目線であれやこれやと指示を出す。消えろと言えばいなくなるが、直ぐにまた現れる。こちらがどれほど嫌おうとも、必ずまたやってくる。


 それまでは単に嫌な奴だと感じていただけだったが、しつこく上位世界とやらに勧誘する島津を見ていると、平山の心の奥底に、黒く重い感情が沸き起こってきた。


―― こいつ、殺してやる。


 初めて抱いた明確な殺意だった。


 それまでも、銃で撃ったり刀で斬りつけたりはしていたが、それはあくまで夢の世界での出来事であると割り切っていた。通常の現実世界で抱くような、相手を完全に消し去ってしまいたいという願望が、平山の心を支配しつつあった。


 水着姿で島津の前に立った平山は、渾身の力を込めて撲りかかった。


 この世界は、平山の思い通りにことが進む。平山の拳は衝撃波を伴うほどの威力となり、豪華客船であるクイーンエリザベス号のほぼ1/4を破壊した。拳の先にあった海面にも巨大な凹みが生じ、辺り一面に盛大な水しぶきを巻き上げる。


「何度も試してるのに、学ばない男だな君は」


 島津はいつの間にか背後に回っていた。やはり傷ひとつ負ってはいない。


 船は半壊し沈みかけている。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ