永遠に眠れ。馬鹿ども!
「ところでさ。」片方の幽霊は聞いた。
「お前ってなんで死んだんだっけ?」
それを聞いた途端、急激に頭の中に様々な思い出が流れ込んできたのだ。
「……ごめんね。ごめんね。」
その様子を見て聞いた本人は同様する。何があったんだと。
「辛いなら思い出す必要は無いさ。悪かったな。俺の死因なんて馬鹿らしいなぁ。崖から滑り落ちたなんてな……」
「っっ…ああ!な、なんとか大丈夫みたい。何でだろ?」
その原因はきっと知らない方が良いだろう。だが、知りたくもある。そう思った。もう、片方だった。
──────さてあの男は?
「いい加減なんかさぁ、盛り上がる事起きねぇかな?」ニヤリと笑う。時刻はもう、三時を回っている。
「まさか……あれを使うのですか?」
カメラマンが言った。
「正解。」そう男は答えた。そして、急に走り出した。
「この部屋だ!」扉を蹴破ると、そこには大量の血糊が撒き散らされた部屋があった。
「うわ!こりゃ盛り上がりますね!」カメラマンは部屋を撮影しだした。
「これは恐ろしい出来事があったに違いない!よし、霊を呼び出してみるか。」
男が札を剥がそうとしたその時だった!
「させるか!」幽霊の一人が男の手を叩いた。しかし、男には見えなかった。当たり前だがな。
「ちょっと!いきなり何をするの!?」
もう片方の幽霊が止める。
「お前、この男に見覚えがないか?」
そう言われて頭の中が急に整理された。そして、邪魔をどかした中に真実を見つけた。
「そうだ!そうだよ!この男だ!この男に殺されたんだ!!」
「ちっ!幽霊の仕業か!」男は何か撒いた。
「塩だ!避けろ!」さっと避けた。
「カメラマン……撮ってろよ!俺がなぁ、呪いを解いてやるからよ。」
そこへふよふよと幽霊が近づいて男の首を締めた。
「そうだ!お前に殺されたんだ!お前に刺されて!」
鬼の形相で首を締める!が、男も反撃をする。
「これでも喰らえ!」ポケットからお札を出した。それは偽物なんかでは決してなく、本物だった。
「ぐぅぅああ!……さような……」
こうして男の首は助かった。
「……っっはぁ!死ぬかと思ったぜ!クソが!」
立ち上がった男を転ばせたのはまだ成仏してなかったもう一人の幽霊だった。
「 痛っ!今度はなんだ?……ひゃあ!!」その姿がを見た途端男は逃げ出したが、その足を捕まえた。
「覚えているよな。お前が崖から落とした、男。俺だよ!!」
「ゆ、許して……許してくれ!悪かった!悪かったから!!」
そんな事で許す筈もなく、幽霊は手を離さないどころか更に握る強さは強くなった。
「あ…あああああ!痛い!痛い!痛いいいいいい!!!」
男は必死で抵抗したが、無駄だった。
「そうだ。いっそ崖から落としてやるよ。お前が落としたみたいにな。」
そう言い放つと、男は窓から投げ飛ばされた。そして、石が転がる様に転がってゆき、崖に当たって男は死んだ。
「さてと。俺も逝くかな。」すっと手を戻し、部屋の隅にあるお札を取ろうとした。
「待って!全く見えないが、何かやったのか?」
カメラマンは聞いた。
「聞こえないなら無駄じゃないか。」
聞こえない筈のその声はなぜかカメラマンに聞こえた
「無駄じゃない!だから、次はいい人に生まれて来いよ。」
ふっと笑った。
「その映像好きにするがいいさ。じゃあ。」
べりっと一枚のお札を剥がし身体に貼り付けた。
光の様に幽霊は消えた。
それから暫くして、その幽霊屋敷は取り壊されて、墓地になった。妙な事にお盆なんかには笑顔の心霊写真が撮れるらしい。それに崖には策が付けられて、自殺なんか出来ない様になってる。
だけど、たまに一人の元カメラマンが墓参りに来るらしい。偽物のお札と血糊を持って。
(完)