八話 「ネイティブ」
さて皆さん、こんなほのぼのした話にも飽きてきた頃だろう?
ご安心ください、
色々と俺たちもヤバいことに巻き込まれたばかりなので…
ラクスラズルから出発した俺たちは、
次の町『エリュシオン』へと向かっていた。
「そういえばさ、セトって死んだらどうなるんだ?」
「あぁ~考えたことも無かったなぁ?」
「師匠ってなんかあるんスか?」
「師匠…?」
いきなりビートに師匠と言われても、
驚愕以外の何物でもない。
「え?なんで師匠?」
「いや、呼び方決めてなかったんで」
「えぇ…」
恐らく、
彼女の中ではそれが呼びやすいのだろう。
「と言われてもなぁ…」
「ってか!リノアちゃん、可愛いッスねぇ!」
「///」
「聞けよ。」
などど突っ込んでいると、
ジャンが俺の肩に手を置く。
「なんだ?」
「いや、女の子の戯れる姿はいいのぉ~」
「失せろ」
って、コイツにかまっている場合じゃない、
早く町に向かわなくては…
『ドケドケーーーー!!』
「は?」
振り返ると、
後ろから勢いよくフォンに乗って荷物を運ぶ集団が、
こちらに向かってきているではないか。
「うわっとと!あぶねぇじゃねぇか!」
突き飛ばされそうになり、
ギリギリでかわせたから良かったものの。
「我らは『シュベルク』様の使い、道を開けるのが決まりだろう!」
「ハァ?いやいや、冒険者でもない"NPC"が何を言っているのやら…」
一人の騎士が馬から降りて告げた、
どうやら『シュベルク』とかいうやつの手下のようだが…
『NPC』
ノンプレイヤーキャラクターの略であり、
プレイヤーが操作しないキャラクターのことを指す。
「いや、セト。あれはNPCじゃないぞ」
「そうっス、よく見るっス」
「ん?あ本当だ。キャラネームちゃんとあったか」
いや、でも不可解だ、
騎士全員のキャラネームが似通っている。
「ナイト1」「ナイト2」「ナイト3」…
どうもおかしい、
なぜこんなに同じような名前が…
「ちょっと、行ってみる必要がありそうだな…」
そのまま追跡することにした、
しかし、街に入った後はなるべく距離をとる。
「さてと、無駄に広い町だが…」
町の形は城下町に近く、
中心部には"城"ではなく"聖堂"が建てられている。
「あれは…?」
リノアが聖堂を指さす。
「あぁそうか、リノアは知らないんだったな」
「あれは『シュライト聖堂』ッス」
恐らく、あの聖堂にさっきの奴らは居るんだろうが、
さすがにいきなり乗り込むわけにはいかない…か。
「おっと!私もせっかくこんなに大きな町に来たんスから、矢の補給をしてくるッス。誰かさんのせいで減ったッスからね」
「いや…あれは違うだろ…」
セトの話をスルーし、
ビートはそのまま走って行ってしまった。
「さてと、俺たちはどうする?」
「とりあえず宿屋にでも泊まるか」
「うん」
こうして宿屋に泊まることになったのだが…
「ハァ!?一泊「1000G」!?いくらなんでも高すぎるだろ!」
「と言われましてもねぇ、お客さん。私らも「税・税・税」で大変なんだよ」
「ん?昔のこの町はこんなじゃなかっただろう?」
『ネイティブさ』
「え?」
するとカウンターの近くのテーブルに座っていた男が立ち上がる、
そしてこちらに歩いて話す。
「お前も"ネイティブ"だな」
「俺?」
「そっちのお嬢さんも。」
男はセトとリノアを指さして言った。
「…ネイティブってなんだ?」
「俺やお前さんのようなプレイヤーのことだよ」
「お前は一体…」
男は「ハァ」とため息をつきながら、
椅子から立ち上がり言った。
「まぁ、言うならば…」
『seto』だな。
…またかよ、
やはりおかしいんだ。
このゲームで同じキャラネームが使用・登録できない、
故に、setoが複数人いるというのはおかしいのだ。
「さてと、んじゃ俺はこれで…な」
「お、おい!ちょっとまて…」
男は出ていってしまった
「ネイティブ…」
「あぁ、恐らく俺たちのようなゲーム内に閉じ込められたプレイヤーのことだろう。」
「ま、とりあえずあとで考えようぜ」
「あとでかよ…」
俺はベッドに飛び込んだ、
そして仰向けになると思いだす。
『ネイティブ』…
俺はともかく、
リノアはどうなのだろうか。
記憶を失っているようだし…
「なぁ、セト。せとよぉ、今考えたって仕方ねぇじゃねぇか」
「あぁ、まぁな」
そして俺はビートに言う。
「頼みがある」
「頼み…?」
―――それから1時間後
「あれ、セトとジャンさん…」
「あぁ、今ちょっと出てるよ」
「…?」
聖堂前にて、
二人の男が立っていた。
「さてと」
「行きますか!」