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Read New World  作者: りのあ
異世界 -Different world-
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一話 「ログイン」

 では皆さん、最初の問題の答え合わせといこうか。

 答えは⑤の現実からの脱出でした~


「って…なんじゃこりゃあ!」


 俺の最もやりこんでいたゲーム「Lost new World」を今回も起動した、どうせなら一番付き合いの長かったゲームで死にたいからな。

 いつも通り起動に成功したと思っていたのだが


「手に…感覚がある。体にも!」


 どうやらそのゲーム内に入り込んでしまったらしい。

 「Lost new World」は体感型でも装着型VRでもなく普通のMMORPGである、ゆえにこのような現象はありえない…はずなのだが。


 ちなみに俺の今いる場所はこのゲーム内で最も好きな場所である「天空のラクスラズル」というフィールドである。

 このゲーム内でレベル30以上になったプレイヤーに対して解放されるフィールドである。

 周りは雲と青空のみ、地面は石英のようなもので出来ているといったいかにもRPGな感じが好きなのだ。理由は他にもあるが…


「さて、どうしたものか…」


 実をいうと俺はきまったフレンドとしかほとんど交流しておらず、このあたりにそのフレンドはいないのだ。

 フレンドリストから呼び出しをかけてもいいが…


「ほとんどログインしていないなぁ…」


 困ったな、ログインしているのが二人くらいしかいない。しかも特に話をしたわけでもないフレンドである、一応あとで消しておこう。


 と、助けを求めるのに困っていた時だった、

 フレンドのログイン通知が届く、俺は急いで通知を開いた。そこには、

「"ジャスティンさんがログインしました"」と書かれていた。

 その時俺は心の奥から喜んだ。

 この「ジャスティン」というプレイヤーは最も俺との付き合いが長いユーザーである、ゆえに連絡で気を使い困る心配はないのだ。


 さっそくフレンド名の横のコールボタンを押す、ちなみにメニューもフレンドリストも頭で思い浮かべただけで出てきてくれた。

 昔見たアニメで同じようなことがあったが、まさかその知識がここで役立つとはな。


『フォン…』


 コール音が途切れるとともにジャスティンが応答する。


「もしもし?セトか?」


 この世界での俺のキャラ名はseto(セト)で通っている、当たり前ながら本名ではない。

 昔貰った名前である。

 それ以来どのMMOでもsetoで通っている。


「よかったぁ~!繫がらないかと思ったわ」


 俺はホッとしてため息をつくと、ジャスティンに自分の場所に来てもらうように伝える。


「わかった、ラクスラズルに行けばいいんだろ?」

「あぁ、頼む」


 そうして通話が切れる。これでひとまずは何とかなりそうだ、ゲームの中で知らない奴に声をかける度胸は生憎ながら持ち合わせていないからな。

 ジャスティン、通称ジャンは俺と同じギルドで活動していたプレイヤーの一人でギルド初期から一緒だった。だからフレンドでは最も古い旧友だ。


 しばらくするとテレポートゲートからジャスティンが手を振って走ってくる。


「おーい!セトー!」


 背中に背負った大剣に鉄の鎧をまとったその姿はどう見ても西洋の騎士を連想させる。

 ジャスティンは俺の横に座ると口を開く。


「いやぁ!一カ月近くもログインしないもんだから心配したぞぉ!」

「こっちこそ、もう引退したかと思ってハラハラしたよ」


 ハハハとジャンは陽気に笑う。


「ところでお前が俺を呼び出すなんて珍しいじゃねぇか」

「いやな、ちょっと厄介なことになってよ」

「厄介なこと?」


 俺はジャンに全てを話した。

 すると、ジャンは一瞬難しい顔をした後、スッキリしたようないつもの顔に戻る。


「ゲームの世界かあ…昔は憧れたもんだぜ」

「そうか?」


 俺も憧れた時期はあったが、実際になってみると楽しくはない。

 ジャンはどうやらログアウトできるようなので現時点では俺だけがゲームの世界に入ってしまっているのかも知れない。

 もしも、他にも俺と同じ目にあっている人がいるのだとしたら騒ぎになっているはずだ。


「それで?」

「ん?」


 いきなりジャンが口を開く。


「それでお前はどうするんだ?」

「それを聞きたいんじゃないか」


 ジャンはため息をつくと剣を壁に立てかけて立ち上がる。

 身長は俺のキャラの3まわりくらい大きく、俺は見上げる形となる。


「俺は特に何も言えない、お前自身の問題だからな」

「はいはい、そうですか」


 キザなセリフを吐かれたところで俺は嬉しくとも何ともない、求めているのは…


「あれ?俺って何がしたいんだろう…」

「ほら、見つかったんじゃないか?」

「え?」

「つまりは目的を見つけることだな」


 普通ならここで現実に戻りたいところなんだろうが俺は逆だ、現実に戻った際のメリットがない。

 だから現実に戻るという選択肢は無しだ。

 だとしたら…


「ま、難しいことを考えずに一旦世界を見てみることだな」

「世界を…」


 ジャンがいきなり紙を俺に差し出す。


「なんだこれ?」

「クエストの詳細が書かれた紙だ」

「ほう?」


 ジャンはとりあえずクエストでもまわしてみればいいと言っていたが、クエストの難易度が初心者向けなのだ。

 現在レベルが約90の俺とジャンが行ったら不審者である。


「おまえ…クエストランク見てる?」

「あぁ?見てるよ?行けばわかるって」


 なんだか釈然としないがとりあえずついていくしか道はなさそうだ。


 目的地はここから北に行った先の「石の町リリール」だ。

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