十六話 「seto 死す」
世壊樹の根元、
多くのプレイヤー達が復活していた。
「まさか、これが生き返っているんじゃなくて"魂のみを新しい肉体に移す"ことだったなんてなぁ…」
「seto様…いったい何を…」
「今からこの木を切り倒す、世界樹を復活させる」
そう告げて背中の剣を抜き、
世壊樹に向かって歩き出した。
「そうはさせるかよ!」
その声とともに世壊樹の上からデリトが降りてきた。
「デリト…!」
「うーん?私の因子を植え付けたはずだが、どうして効果が無いのかなぁ?」
「さぁな。ただ、お前を倒せばそんなことは関係なくなる!」
剣を突き刺さりやすい角度に持ち替えて、
勢いよくデリトに向かって走り出した!
「また私とやる気か?懲りないなっ!」
剣と剣が再び交差する、
しかし今回は強弱がハッキリしていた。
「おや?今回はあのカタナじゃないのかい?」
「生憎、あのカタナは改修中でなぁっ!」
「そいつは残念、後で私が破壊してきてあげよう」
ナイトメアソード同士が交差する!
◆ ―数時間前― ◆
「アナライ!いるか!」
「お?ん?あれ?サブのほうのセトじゃねぇか、どうした。キャラ変わってるぞ?サブだからか?」
「あぁそうだ、サブキャラとメインキャラじゃどうやら一心同体じゃないみたいでな」
「ほう、それはまた面倒な」
「今日はそんな話をしに来たんじゃない、コイツの修理を頼みたくてな」
setoはアイテム欄から二つの武器を取り出して、
アナライの目の前のカウンターに置いた。
「こいつは…!」
「アナライ、お前。武器屋営んでいるから職人スキルは高いんだろ?」
「ま、まぁな…だがこんな武器は見たことがない。」
「こっちの武器の名前は"神刀・壊世"。」
もう一つのほうは…
◆ ―現在― ◆
「おやぁ?やっぱりあの武器が無いと勝てないのかなぁ!?」
「少しは黙るってことを知りやがれ!」
両側、
一歩も引かない戦いとなっている。
(setoのナイトメアソード、やっかいね…それなら!)
「あーっと!手が滑っちゃったなぁ!」
「っ!?」
デリトは持っていたナイトメアソードを投げた!
その先には…
「カルマッ!!」
「今はフラッシュスタンスの発動時間圏内、カルマには絶対にかわせないぜ!ヒヒッ!」
「クソッ!!」
setoは後ろに精一杯、
光の速さで
"飛んだ"
「…へ?」
カルマからすれば一瞬だった、
それゆえに理解できない。
「くっそ…フラッシュスタンスの分のダメージが来やがった…」
「seto様!」
身体にナイトメアソードが突き刺さっているsetoはその場に倒れる、
それに気づいて駆け寄るカルマ。
「さぁてと、もうそろそろいいかなぁ~」
そう言うと、
デリトはカルマに後ろから近づいてその心臓を手刀で突き刺した。
「うっ!」
「ちょーっと手こずったじゃないかぁ~悪い子だなぁ~」
「か…るま…」
setoが手を伸ばすと、
その手をカルマが強く握り、笑った。
「大…丈夫、seto様…カル…マはいつでも、seto…さまの…お傍…に……」
「カルマ…!」
俺の手を握っていたカルマの手が崩れていく、
破壊エフェクトなんかじゃない。
「とりこんだ…のか?」
「そうそう、もとは私の半分だからね~」
「カルマだってプレイヤーだったんだ…ろ!」
「知ったことじゃないなぁ?だって、プレイヤーなんていくらでもいるし」
「テメェ…」
するとデリトがsetoの身体に刺さっているナイトメアソードを一度抜いて…勢いよく刺しなおした。
「もう、うるさいなぁ~!」
「ヴッ…!」
そのままsetoの身体は崩れ去った。
◆ ―世界樹― ◆
「setoさんが落ち(死亡)ました…」
「…」
「今なら魂だけでもなんとか…」
「いや、いい」
「え?」
セトはリンクの話を割って、
そのままテレポートクリスタルを出した。
「あいつが消えたのに俺が消えてないってことは俺に実態が戻ったってことなんだろ?」
「えぇ…まぁ」
「じゃあ、それでいい」
「え?」
「行ってくる」
「セト様!」
そのままセトはテレポートクリスタルを使用して消えた。
◆ ―ラクスラズル― ◆
「うっう~ん!久々の外の空気はうめぇなぁ!」
セトはラクスラズルへとテレポートしていた。
「おっと、ジャンに連絡しなきゃな」
メニュー画面からジャンを選択して決定する。
「おう!ジャンか?」
『セト…?セトか!?生きてたのか!?』
「まぁ、一回死んだがなw」
『そうか、良かった』
セトが全てを話す。
「…というわけだ」
『そうか、そんなことがなぁ…』
「頼みがあるんだ」
『ん?』
「リノアをラクスラズルに連れてきてくれ、俺もそこで落ち合うよ」
『おう、ちょっと待ってろ』
そしてリノアとの会話が通話を通して聞こえてくる、
久しぶりに聞いたな…リノアの声。
『これでいいのか?セト。』
「あぁ、すまない。ありがとうな」
『いいのか?生きてるって言わなくて』
「あぁ、完全に生き返ってるってわけじゃないからな」
『そうか』
そうして通話は切れた。
リノア、会えるんだな…
少し、
寂しさがなぜかあったが嬉しかった。