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Read New World  作者: りのあ
過去の産物 -Past of product-
14/55

十二話 「世界樹」

 輝き、

 全てが本当の意味で輝いていたそこは、死後の世界などという穢れは毛頭感じられない。

 あたりは金色に輝き、

 その中心には深く見覚えのあるものがあった。


「世界樹…」


 そう、

 世界樹である。

 しかし、

 あちらの世界とは様子が違う。


「光っている…だと?」


 ゲームの頃も、

 この世界に来た後も。

 世界樹は緑色だった、

 ラクスラズルでそれは視認している。

 しかし、ここの世界樹は金色に輝いている、

 一体どういうことなのか…


 世界樹の前で立ち止まり、

 考えていたとき。真後ろから足音が聞こえた


「やれやれ、ここに居たとはな」


 そこに立っていたのは、

 背中にナイトメアソードを背負ったsetoだった。


「お前…」

「もうとっくに気づいてるんだろ?俺の正体を」


 驚く反応をするセトを受け流すようにsetoは言う、

 正体をセトが知っているということを既に知っているようだった。


「もともと俺とお前は1つだ、だろ?セト」

「あぁ。setoお前、サブか。いや、サブは俺かもな…」


 すると、

 話の途中にも関わらずsetoは木に近づいていく。


「何する気だ」

「この世界の真実を見る」


 そのままsetoは木にそっと手を触れる、

 すると木は輝きだした。


「出て来い、精霊ッ!!」


 あたりが瞬間的に真っ白になる、

 正確には明るすぎて真っ白に見えたというべきか


「これが…精霊…!!」


 そこには、

 世界樹から光の粒子とともに現れ出た女神のような姿があった。


「精霊というか、女神だよな…」

「あぁ…」


 精霊はゆっくりと目を開くと、

 ニッコリと微笑んで話し始めた。


『感謝します、よく私の封印を解いてくださいました』

「それで、俺たちに頼みがあるんだろ?」


 setoが前に出て言い放つ、

 まるで精霊のことを知っていたかのように


『はい、あなたがた二人も気づいているでしょうが。貴方たちは元は1人、ゲーム上では2キャラ居たというだけの話です』

「つまりはサブキャラだな。」

『はい。ですが、ここからが少々厄介な話でして…』


 俺たちはそれから精霊の話を聞いた、

 俺たちが2人存在する理由。


 精霊の話によると…


 

 どうやら俺がこのゲームにログインして間もなく、

 現実(リアル)のほうの俺の身体は死んでしまったらしい。

 故に、その際のショックによってシュベルクのようなサブキャラ量産のようにいかず、

 俺たちはそれぞれの命を持って生まれてしまったようだ。


「そんじゃあ、俺たちは一生このままってことか……いや、俺がこのままか?」

『いいえ、諦めるのはまだ早いです。先ほど私は封印されていたと言いましたね?そこが重要なんです。』


 そう、

 精霊は封印されていたと言っていた。


『あれは、この世界が作成されたときの話です。私は第一号、つまりこの世界のプロトタイプでした…しかし、この世界に新たなものが出来ていくにつれて私は見切られるようになりました。』

「この世界の作成、β(ベータ)テストの時か…」

『そののち、私によく似た世界が作られました。それが今まであなたたちが居た世界、「Lost new World」です。創造者達は元々の世界(ワタシ)をLost…つまりはもみ消して"New World"を作ったわけです。』

「そうか…それであのゲーム名…」

『私の名前は「世界名:リンク」と申します、そして今ある世界が「世界名:デリト」といいます』

「だが、デリトを作った時に完全にリンクを消さなかったんだ?」

『あなたはこの世界樹にたどり着く前に深遠を見たはずです』

「深遠…あの黒い霧みたいなのか!」


 確かに見た。

 あの時はあまり気にしなかったが、

 アレがなんだったのかはわからない。


『あれこそがプレイヤーの命の塊です、死んでいったプレイヤーの…』

「どういうことだ?」

『私のことをデリトが消さなかったのは、利用するためです。"深遠"はプレイヤーが死んだ際の抜け殻のようなもの。つまり私がいないとプレイヤーを蘇生できないのです。』

「なるほどな、それでデリトはお前を残したと…」


 いや、

 まてよ?

 今のリンクが世界樹だとしたら…


「まさか…」

『そうです。あちらの世界樹こそがデリト、私は「世壊樹」と呼んでいます。』

「でもなぁ、俺たちは死んだっぽいしなぁ…」

『いいえ、方法ならまだあります。二人で力を合わせるのです』


 リンクが言うには、

 リンクの世界は死後の世界ではなく。そのはざまにあるものらしいのだ、

 故にまだ生きられるのだが…


「えっと…つまり?俺とsetoが一体化すると?」

『そうです、どうか世界をお救いください。』

「俺は嫌だが、まぁ。この際だやむを得ない」

「俺もかな。元はといえば本当にこっちの世界で死ぬつもりだったしな~」

『ありがとうございます、では始めます』


 そういうと、

 セトの身体を光が包み始める。


「おっと…消える前に!こいつを渡しておくぜ。」


 そう言うと、

 のんきにもセトはアイテムリストを開いて武器を1つ取り出した。


「もう片方は、お前のアカウントに昔おいておいたハズだぜ。」

「あぁ、確かに受け取った。」


 剣を手渡すとセトはゆっくりと消えていった。


「さてと、俺もそろそろ出してもらえるか?」

『任せましたよ』


 念押しするようにリンクはひとこと言い、

 setoを元の世界へと転移させた。




 ◆ ―シュライト聖堂・屋上― ◆

 

 精霊石とともに横たわるセトの遺体、

 それはリノアの目の前で消えていった。


「セト…セトッ…!!」


 必死にすがるようにセトの遺体のあった場所に手を置く、

 しかしもうそこにセトはいない。


「遅かったか…!!?」


 扉からジャンとビートが走ってくる


「あれ?師匠はドコっすか~?」


 空気を読めないビートに対してリノアは涙目で振り向く。


「セトが…セトがぁ…」


 そして、あったことを全てジャン達に打ち明けた。


「そうか…セトが負けたか…」

「しっかし、リノアちゃん。なんて恰好してるんスか~」


 たしかにリノアは全裸にコート一枚という、

 かなりマズい装いをしていた。


「ん?ていうかそのコート…」

「ジャン先輩、何かしってるんすか?」

「いや、ちょっとな…」

「?」




 ◆ ― ルーラー ― ◆


 くらい闇の町に、

 一筋の光とともに男が現れる。


「せ、seto様…!」

「心配かけたなカルマ。」

「よくぞご無事で…!」


 急いで駆け寄ってきたのは、

 seto(セト)の側近であるカルマだ。


「ん?ラルゴはどこに行った?」

「それが…」


 ラルゴというセトに使えていた大柄な男、

 どうやらセトがリンクにあっている間にしびれを切らして個人行動に出たらしい。


「やれやれ、止めに行くか」



 



 ―こうして世界はまた動き出す―

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