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Read New World  作者: りのあ
過去の産物 -Past of product-
12/55

十話 「光速」

 階段を駆け上がる、

 ひたすら駆け上がる。


 (リノア…リノア…!!)


 フラッシュスタンスを使っている間だったし、逃げたばかりだったから、

 まだそう奥までは行っていないはず…!!


 ん?フラッシュスタンス…?


「しまった!」


 フラッシュスタンス中に逃げれたということは、

 シュベルクも何らかの加速魔法を使っていたというわけだ。


「もう、かなり奥か…!?」


 リノアのことを考え、ひたすら階段を上るが

 やはりそう楽にはいかない。


 セトの足元に大きい鎌が突き刺さる!


「何ッ!?」

「ここは通さないわよ?」


 鎌はまるでゴムのように持ち主のほうへと戻っていき、

 そこには女性がいた。


「誰だテメェ…」

「ネイティブの味方…とでも言っておきましょう」


 黒いカラスの羽のような装飾が施されたドレスに、

 大きな宝石のゴスロリな雰囲気の鎌を持ったその姿はまるで西洋の魔女か死神。


「おとなしく道を開けろ」

「あら?聞いて無くて?「通さない」といいましたわよね?」


 一瞬、

 その文字通り瞬きをする間に喉元に刀の先が触れる。


「通せっつってんだよ」

「あら、流石ですね…でも」


 セトの背中から大量の血が出る、

 続いて足からも出血。

 その場に足からよろめき崩れる。


「なっ…!?」

「フラッシュスタンスを使うことは読んでおりました、故に。とどめを刺さないことも…」

「この…!!」

「甘いんですよ、あなたは」


 すると女性は突然耳元に手を当てて話を始める。


「もしもし?」


 そこから微かに声が漏れてくる。


「カルマ、何をしてるんだ。」

「も、申し訳ございません!ただいまそちらへ向かいます!」

「余計なことをするなよ?」

「は、はい!」


 するとどうやら通信が切れたようで、

 そのまま耳から手を放す。


「どうぞ、お通りください」

「テメェ…」


 やり返そうとも思った、

 しかし今はリノアが先決。これ以上の時間ロスをするわけにはいかない!


「フラッシュ…スタンス…!」


 一気に光速の速さで階段を駆け上がる、

 シュベルク戦に備えてあまり使いたくはなかったが…この際やむを得ない。


 そうして階段の先のドアへと向かう。



 ◆ ―シュライト聖堂 屋上― ◆


 屋上には二つの影。

 片方は杖を持って後ずさりし、もう片方はどんどん歩み寄っていく。


「どうかね?なぁに、不自由な暮らしはさせないよ。安心して私と一つになりたまえ」

「お断りします…」


 あと数歩下がれば聖堂の真下へと真っ逆さまだ、

 ならばここで決着をつけるしかない。


 先に牙をむくのは…


「『ヴァーン・ライド』!!」


 シュベルクの頭上に炎が集まり、

 急降下を始める!


「フフ…可愛らしい魔法だ、気に入った…『ルーン・アルテミス』!!」


 シュベルクの周りにシャボン玉のようにキラキラとした膜ができ、

 炎の塊はうち砕ける。


「まだまだ!『チェーン・オブ・ディストラクション』!!」

「うっ…!!」


 リノアの身体に紫色に妖しく光る無数の鎖が巻きつく、

 身動きを封じられてその場に座り込む。


「どうです?MPがどんどん吸われていくでしょう?」

「っく…!」


 とうとう持っていた杖も落としてしまう、

 そしてMP0になった瞬間鎖が解ける。


「どうやらもう力は残っていないようですねぇ…それでは…」


 シュベルクはガタイの良さもあってか、

 軽々とリノアを持ち上げる。


「手錠と猿ぐつわを自力で解いた時は驚きましたよぉ?まぁ、無意味でしたが…」


 屋上には大きなベッドが設置されていた、

 シュベルクはリノアをそこに寝かせると話を続ける。


「さて、男女がこうしてベッドで一緒ということは…わかりますね?」

「…」

「無視、ですか。まぁいいでしょう、返答がないということは受け入れたも同然!!」


 シュベルクは手のひらに短剣を取り出すと、

 それを一気にリノアに突き刺す!


「うがぁぁぁああああっ!!」

「おぉ…我慢してください。痛いのは一瞬です、すぐ終わります」


 すると一気に服が破壊エフェクトと共に砕け散る、

 リノアの白い肌が晒される。


「フフ、破壊力の高い武器を取り寄せて正解でした。短剣ならば刺しても一撃死する心配はないですからねぇ」


 するとリノアの上にまたがり、

 そのまま抱きつく。


「やっと念願が叶いますよ……私たち二人で神となりましょう…」

「…ト」

「ん?」

「―セトーーー!!」


 いきおいよく屋上の扉が開く、

 否!破壊される!


「シュベルクゥゥァァアアアア!!!」


 身体中から光の残光と粒子を散らせ、

 刀を突きさす形で持ちながらセトがこちらに向かって来る!


「『クロック・エディション』…!!」


 あたりの時が止まる。


「ハァハァ…MPをかなり消費したが、いくら光速と言えど止まった空間では動けまい!」


 セトは剣を突き出し、

 ベッドに向かって走っている状態のまま停止させられている。


「『ヴァーン・トリニティ』『ブリザード・トリニティ』『スパーク・トリニティ』!!」


 シュベルクの放った魔法で囲まれる、

 その間にシュベルクはベッドに横たわっているリノアを連れ出す。


「"クロック・オーバー"」


 瞬間、

 すべての時が再び動き始める。

 

 セトは気づく、

 逃げ場が無いことに!


「しまっ…!」


 轟音、

 それとともにセトに全ての魔法が降り注ぐ!


「フフ、それらは各属性の中でも最高クラスの魔法。完全に死にましたね」


 リノアの顔は絶望で染まる、

 今すぐにセトがいた場所に立ちあげている煙をかき分けて、生死を確かめたい。

 しかし、シュベルクに強く抱きしめられているため動けない。


「さて…続きを…」




 ―待てよ―



「何…!?」


 立ち上げる煙の中、

 両手に刀を持った影がうつる。


「やってくれるじゃねぇか…」

「なん…だと…!?確かに命中したはず…!!」

「スケルトンマントだよ」


 いくら光速とはいえ、

 最大級の魔法に囲まれた状態では逃げきれない。

 しかし、

 光速でアイテムを使用することはできる。

 自らの身をそのスケルトンマントに入れたのだ。


「しかぁし!私にはまだMPが残っている!このリノアちゃんのおかげでなぁ!」


 そう叫ぶと、

 リノアの顔に舌を這わせる。


「テメェ…人を怒らせるのが得意みたいだな…!『フラッシュスタンス』!!」

「無駄ですよ…!『クロック・エディション』!!」


 またも時が止まる、

 止まった時の中、セトからはスキル発動時の光が溢れ出ている。


「せめてものプレゼントです」


 先ほどリノアに突き刺さっていた短剣をセトの心臓に突き刺す、

 そのまま後ろへ距離をとると


「"クロック・オーバー"」


 勢いよく腹部から出血、

 内臓が破壊されたからか、口内も鉄の味で満たされ、そして吐き出す。


「グボァ…ッ!!」

「フフフ…フフフフフ!!ハッハーーー!!ハハハハッ!!」


 その場に倒れる、

 しかし顔はシュベルクのほうを向き




 "笑っている"




「何がおかs…」


 言葉が途切れる。

 視界がゆがむ。

 世界が半分に見える。



 身体が真っ二つに割れている。



「な、ナニィィィィイイイイイッッ!?」


 驚きのあまり体勢を崩す、

 身体が半分失われたことでバランスが取れない。


「へへ…『スウィフトソード』…」



 『スウィフトソード』リキャストタイム:3分

 武器を瞬間移動させ、

 絶対的部位破壊をする。

 ただし、武器の耐久値もかなり落ちる。



「き、キサマァァアアアアアアアアアアアアア!!」


 体勢を戻せないまま足を引っかけ、

 そのまま聖堂の真下へと落ちていく。


 瞬間移動に時間停止は関係ない。

 シュベルクはセトに気を取られている間に、

 自らがリノアと立っていた位置の真上にセトの武器が転移されていたのに気づかなかったのだ。


「こんな単純な攻撃にも気づけないなんて……話にならね…ぇ…ぜ……」


 そのまま上げていた顔が地面へと触れる、

 HP表記が0/21000へと変わる。


「セト…!」


 急いで駆け寄り、蘇生魔法をかけようとするがMPが無い。

 シュベルクに全て持っていかれたのだ。




 ―seto・死亡(ゲームオーバー)

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