問題児登場
さて、みんな手加減って言葉は知っているかな〜〜。
私が今頃暴れ回っているであろうみんなの事を考えていたら王様から話しかけられた。
「いろいろ心配だと思うが部屋を用意するからそこで待っててもらってもいいかね?」
「はい、わかりました。」
そう答えて私はお祖父様とお祖母様を見た。
「リリーナ悪いが部屋に戻っていてくれ。私達はすこーしばかり王と話しがあるから。」
お祖父様がそう言って王様を見た。
何やら王様は怯えているような気が……気のせいだよね。
「ソール、ライアン、リリーナ嬢を部屋へ案内してくれ。クリスは聞きたいことがあるからここに残りなさい。」
私はソールさんとライアンに付き添われて新しく用意された部屋へと向かった。
部屋に行く道すがらソールさんが話しかけてきた。
「リリーナ様、うちの国のバカどもがすいません。」
「いえ、ソールさんが謝る必要はありませんよ。それに私が心配しているのは誘拐犯の方ですから。」
私の言葉に2人は「え?」という顔をした。
「私の友人達は、その……おそらくかなり強い方だと思うんです。そしていつもなら私が行き過ぎを止める役割を担っているのですが、あの4人だけが連れ去られてしまって……。連れ去った人はきっとある程度は武芸を嗜んでおられますよね?魔物を1人で狩れるぐらいの実力はお持ちですよね?」
私の質問に2人は顔を引きつらせている。
だって、少なくとも魔物を1人で狩れるぐらいの実力がないと……マズイよね。
1人だけじゃなく、4人だよ?
いくらユーリさんという守る対象がいたとしても、きっとその実力を余すことなく発揮することだろう。
部屋から連れ出された時点であのメンバーならそれが罠だとわかっていたはずだ。
それをおとなしくついて行ったということは、確実に潰す気満々でしょ。
「あ、あのこの国でも魔物を単独で狩れるものは限られると思います。正直、連れ出したものにその実力はないかと……」
「そうですか…………無事だと良いですね。」
そんな会話をしているうちに部屋に着いたようだ。
「リリーナ様、申し訳ございませんがこちらでお待ち下さい。剣神様達もお話しが済み次第こちらにいらっしゃいますので。」
「私達は部屋の外に待機しております。今、侍女にお茶を用意させますのでもうしばらくお待ちくだい。」
ライアンさんとソールさんはそう言うと部屋の外へと出て行った。
ふぅ〜〜、それにしてもみんなは今頃どこにいるのかな?
あのメンバーだとサナがストッパーになってくれると信じたいが、果たして双子の暴走を阻止できるだろうか?
きっとサスケさんは見て見ぬ振りをしそうだし……、とにかく夢中になり過ぎてユーリさんを忘れることだけはしないでほしい。
みんな信じてるからねー。
私がそうやってみんなのことを考えていたら部屋の外が騒がしくなった。
なんだか言い争っている声が聞こえる。
かすかに聞こえるのはソールさんとライアンさんの声と、……たぶん女性の声も聞こえる。
さっきお茶を用意するって言ってたからその人が来たのかとも思ったが、それにしては話しが長引いているような?
それから、ますます声が大きくなってきたなぁと思っているうちに部屋のドアがノックもなく開かれた。
……兄じゃないんだからノックしようよ。
そして入って来たのはなかなか豪華な衣装を身に纏った令嬢だった。
その後ろからライアンさんとソールさんがその女性の従者らしい人達に押さえつけられながらも必死に抵抗をしながら叫んでいる。
「ナターシャ様!勝手に入られては困ります!」
「許可も得ずに部屋へと侵入するなんていかに公爵家の御令嬢とはいえ許されることではありません!」
ライアンさんとソールさんはそう言って入って来た女性に警告している。
なるほどこの人が公爵家のお嬢さんなのね。
改めてその女性の方を見ると笑顔を張り付けてはいるが目が怖い。
相当追い詰められているようだね。
「貴方がリリーナさんという方なのかしら?……随分シンプルな服装ですわね。それでこの城に来るなんてなかなか度胸のある方ね。」
ナターシャさんは嘲笑うかのように私の姿を見つめた。
この人は何をしにここに来たのだろう?
「あなた達、そこの護衛の者を外に出してそのまま部屋の外で待機していなさい。私はこちらのリリーナさんにお話しがあります。」
ナターシャさんの従者達はライアンさんとソールさんを無理矢理部屋の外へと押し出した。
そしてこの部屋には私とナターシャさんが残された。
別にあのナターシャさんの従者達を排除することは可能だったけど、ナターシャさんが何の為にここまで来たのか興味があったからそれはやめておいた。
ナターシャさんは私の目の前まで来てこう言った。
「貴方の大切なお友達は今どこにいるのかしらね?確か行方不明と聞いたけど……心配ではなくて?」
うん、ここに犯人がいます。




