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誘拐②

程なくしてサスケさんがお祖父様とお祖母様を連れてきてくれた。


「これは……ふむ、お嬢さん少し事情を聞いてもよろしいかな?」


お祖父様が女の子に話しかけた。


「は、はい。あの、私の名前はユーリと申します。皆さんに助けていただいて本当に……良かったです。」


ユーリさんはまだショックな様子で、ちょっと震えていた。

さっきから安心させる為に私が手を握っている。


「ああ、運よく孫達が通りかかったようだね。さて、まだショックなところ申し訳ないんだがこの覆面達に心当たりはあるかね?」


「…………はい。」


ユーリさんはとても小さい声でそう返事をした。


「そうか。もし良かったら教えてくれないかな?何か手助けが出来るかもしれない。」


「で、でも……皆さんにご迷惑がかかってしまいます。」


最後の方はか細い声で、何かを我慢するように答えた。

私は少しでも気持ちが伝わるようにギュッと手を握ってユーリさんの顔を見た。


「ユーリさん、お祖父様なら絶対力になってくれますよ。それに先ほども見た通り私達結構強いの。だから教えて下さいませんか?」


ユーリさんはしばらく考えた後、こう切り出した。



「あ、あの。私、わたしはある家の御令嬢の侍女をしていました。だけど……お嬢様が、うっうう。」


ユーリさんは途中で何かを思い出してしまったのか泣き出してしまった。

私は流れる涙を拭き取って、なだめるように頭を撫でた。


「大丈夫ですよ。ゆっくりで良いのよ。」


「は、はい、ありがとうございます。……私はお嬢様に託された紙をある人に届ける途中だったんです。だけどその途中でこの覆面の人達に襲われて。」


ナルホド、ということは覆面軍団はユーリさんのその紙が目当てだったわけね。

それにしても少女1人にこの人数で捕獲作戦とは……かなり重要なものなんだ。


「それでユーリさんはその紙をどこまで運ぶ予定なんだい?ああ、そうか。私としたことが……こちらの自己紹介がまだだったね。私は隣国の前辺境伯をしていたリードと言う。それからこっちが妻のリーフィア、孫のリリーナに、その友達のサナ、アンジュ、アレン、サスケだ。」


私の友達と紹介されたみんなはそれぞれ何故かちょっと照れている。

……なんでサスケさんも照れているの?


「え?あ、あの貴族の方々だったんですね。…………実は私はこの国の王子様にこの紙を届ける途中だったんです。この紙を届ければお嬢様をお救い出来るはずなんです!」


「そうか、その紙を王子に……。ならば私達と共に行けばいい。私達もちょうど王城に向かうところだったんだ。それに私達と一緒に行けば王族にも会えるだろう。1人で行くには危険も多いだろうからな。」


「え?良いのですか?私、この紙の内容も何も皆さんに伝えていないのに……。」


「これでも前辺境伯、良い人間と悪い人間の違いぐらいはわかるさ。君からは必死さが伝わってくる。困っている者を見捨てることなんて出来ないからな。」


おお〜〜、さすがお祖父様!

カッコ良いです!


「まあ、出発前にこの覆面達には一応話しを聞いておくか。」


そう言うとお祖父様は、いつの間にかお祖母様が用意していた桶に入った水を勢いよく覆面軍団にぶっかけた。

気絶していた覆面達は状況がわかっていないのか何かわめいている。

そんな覆面軍団にお祖父様が低い声でこう言った。



「おい。一度しか聞かないからよく聞け。お前達は誰に頼まれた?」


うわ〜〜、凄い殺気……。

もうお祖父様ヤル気満々じゃん。

覆面達はお祖父様の殺気にあてられたのか自然と身体が震えているようだ。

確かにあの殺気を自分が受けたら動けないかも……。

しかしお祖父様の質問に答える気がないのか、それともビビり過ぎて話せないのかわからないが無言が続いた。


「ふむ、答えないか……。」


いや、たぶん答えたくても声になっていないのが正しいのかも。

だってさっきから覆面の何人かがかすれた声で何か言っているもん。

ただそれが全く聞こえない。

人間、恐怖が過ぎると声って出ないんだね〜。


そんな時お祖母様が間に入った


「あなた、それでは話したくても話せないでしょう。さあ、この人が暴れないうちにとっとと言ってしまいなさい。これ以上時間が過ぎるともう止められないわよ。」


こ、これはお祖父様とお祖母様の連携プレー?

お祖父様が脅してお祖母様が宥めて情報を引き出す?

そんな、結構バレるんじゃないかと思う作戦が成功したのか覆面のうちの1人が話し出した。


「ま、待ってくれ!俺達はただその娘を連れて来いと言われただけなんだ。それ以上のことは……わからない。ほ、本当だ!」


「ほーお、そうか……か弱い娘を連れて帰る簡単な仕事とでも言われたのか?それから私は誰に頼まれた?と聞いたんだが……質問にはきちんと答えてくれないかな。」


そう言うとお祖父様はまた殺気を出し始めた。

おおう、なんか急に気温が低くなった気がする。


「誰かはわからない!前金を弾んでくれて、成功すればそれ以上の金をくれるって言われたんだ。指定の場所に連れて来いって。」


「で、その場所は?」


「…………王都の近くの村の外れの小屋だ。」


うーん、嘘は言ってないような気がする。


「そうか……おい、サスケ、アレン、こいつらを運ぶの手伝ってくれ。サスケは荷車を探して来い。ここの領主は知り合いで信頼出来るヤツだからこいつらを預けて先に進もう。」


お祖父様はそう言うと、迅速に荷車を見つけてきたサスケさんとアレンくんと3人でどんどん覆面軍団を荷車に放り込んでいった。

そしてあっという間に詰め込むと領主の館へと向かっていった。

残された私達女性陣は一先ずユーリさんを休ませるために宿屋へと戻ることにした。


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