出発
2日後私達は西の国に向けて出発した。
この2日間兄が非常にウザかった。
とにかくサナの周りをうろちょろ。
サナが少しでも休憩の素振りを見せればいそいそとその隣へと移動、そしてお茶やお菓子を勧めている。
でもね、そのお茶もお菓子もサナが準備したものだから。
最初はやっと兄がサナに気持ちを伝えようとしているんだと喜んで見守っていた母とお祖母様だったが、その後の兄の行動を見ているうちに考えを改めたようだ。
最終的には一応仕えている家の跡取りに強く言えないだろうサナに代わり、母とお祖母様がブチ切れた。
「この馬鹿息子!あなたは一体何をしているの?そんな馬鹿にサナはもったいないわ!」
「ええ、そうね。本当にどうしてこうなってしまったのかしら?大切な女性を上手に口説けないなんて情けないわ、このヘタレ孫は。」
最恐の2人に攻められ兄はタジタジだ。
そして母が兄に最終通告を行った。
「リカルド、あなた自分のしていることをよく考えなさい!とにかく自分の気持ちが何なのか気付くまではサナへの接近は禁止です!」
「そ、そんなぁ。」
接近禁止命令で兄が凹んだ、5分程。
でもすぐに復活してもうすぐ旅に出てしまうサナに懲りずに近づこうとしたのだが……。
最恐の女性陣2人に頼まれたお祖父様が目の前に立ち塞がった。
「リカルドよ、お前の気持ちもわかるがすまんな……リーフィアとリーザには逆らえん。」
お祖父様……お祖母様と母には弱いのね。
その後兄はひたすらお祖父様にやられ続けた。
やっぱりお祖父様は強いね。
あの兄が全く歯が立たない。
だけど兄はめげずにお祖父様に立ち向かっていった。
たぶん当初の目的であるサナへ近づくことを忘れつつあるような……アレだね、久しぶりにお祖父様と打ち合いして楽しくなっちゃったんだろうね。
やっぱり馬鹿だ。
その様子を見てお祖母様と母は大きくため息をついていた。
目論見とは違ったんだろうね。
お祖父様とお祖母様からは出発の日は日の出前に出ることを伝えられた。
兄には内緒。
さすがにサナが出発の時にごねられると面倒くさいから。
私はその事をこの後面倒を見てもらうであろうアレク様には伝えておいた。
「アレク様、お兄様が非常にご迷惑をお掛けしますがよろしくお願い致します。」
「ああ、大丈夫ですよ。いつものことですから。本当にしょうがない人ですね、妹であるリリーナ様にまで心配をかけて。それよりリリーナ様、うちの双子の方こそ申し訳ないですがよろしくお願いします。何とかリリーナ様について行きたくて無理やりになってしまったようですが……。」
「いえ、私の方が申し訳ないですわ。2人にはいつも助けられていますし。2人に危害が及ぶようなことがないように気をつけますので安心して下さい。」
「ありがとうございます、リリーナ様。」
はあ、なんて落ち着いた会話なのかしら。
何でこんな良い人が兄の部下にいるのかな?
いや、むしろ今の騎士団アレク様がいなかったら大変なことになっているよね。
改めてアレク様の偉大さを知ったような気がする。
そして今、領地を出た。
もちろん今日出発の事は兄も知っていたがこんなに早く出るとは思っていない。
ちょっと可哀想だけど、サナに接するなら自分の気持ちときちんと向き合ってからにしてほしい。
今頃騒いでいるかもしれないけど、母とアレク様がやってくれるだろうから安心だ。
予定通り私達は西の国を目指している。
お祖父様、お祖母様、サナにアレン君にアンジュ様に私と計6名だ。
今私達は馬車で移動中だ。
さすがに人数がそれなりだし、今回の移動は急ぐものでもないので馬車を使用した。
でもお供はいないから馬車はお祖父様が走らせている。
最初はアレン君がやると言っていたのだがお祖父様がやりたいと言って聞かなかった。
お祖母様いわく操縦が好きだから好きにさせてあげてとのこと。
そんなお祖父様が気分良く走らせていた馬車だが、スピードが落ちてきたなあと思っているうちに止まってしまった。
何か起きたのかとお祖父様に確認しようとしたら、その前にお祖父様がこちらを向いてこう言った。
「無視しようか思ったが気が変わった。面倒だし一緒に連れて行こうかと思う。」
え?
どういうこと?
お祖父様が言った言葉が理解できない私達はポカーンとした顔をしていた。
唯一理解出来ていたお祖母様だけは「そうですか」と答えていた。
説明を求める!
しかし説明もないままお祖父様は止めた馬車から降りると、今来た道を少し戻って行った。
おお〜〜い、お祖父様〜〜!
どういうことなのか説明してから行ってくださいな〜〜。
しょうがないから私は唯一事情を知っていそうなお祖母様に聞いてみた。
「お祖母様、お祖父様は一体どちらに向かわれたんですか?」
しかしお祖母様からの答えは……。
「大丈夫、すぐに帰って来ますよ。」
ええ〜、そんな笑顔で言い切られちゃったら他に何も言えないよ。
もう、どうにもならなさそうなので私達はただお祖父様が戻るのを待つことにした。




