提案
しばらく手紙のことで荒れていたけど、みんなも漸く落ち着いたようだ。
その時を待っていたようにお祖父様が話し出した。
「リリーナちょっと考えていたんだが、私達と一緒に少し旅に出ないか?」
お祖父様達と旅に?
それって魔物が発生しないようにする見回りの旅っていうこと?
…………た、楽しそう!
だって旅に出たことないし、それにこの揉めている状態から抜け出せるってことだよね。
もしかしたら旅に出ている間にレオン様とスミレ様の結婚も済んでるかもしれないし。
「行きたいです!」
つい心の声が漏れてしまった。
でも、それが1番良いような気がする。
しかし、その答えに黙っていなかったのがクリス様だ。
「待って下さい。リリーナを連れて行かれるんですか?まさかそのまま違う国に………わかりました、私もついて……」
「駄目ですよ。」
クリス様の言葉を遮ってソールさんが言葉を紡いだ。
「絶対ついて行くなんて言わないで下さいね。まだ国では解決していない問題もあるし、中にはクリス様しか出来ないようなものもあるんですよ。いくら愛しのリリーナ様が旅に行くからってホイホイついて行かれたら困るんですよ。」
「だが、しかし……」
「だがでも、しかしでもないんです!だいたい魔物も落ち着いているようだしそろそろ帰りますよ。」
ソールさんが押している。
あのクリス様相手にここまで出来るなんて只者ではないね。
2人が言い合っているのを横目に今度はサナが話しかけてきた。
「リリーナ様、もちろん私も一緒にお供させていただけますよね?」
サナがいつになく真剣な口調で言ってきた。
そうだね、もちろん私もついて来てほしいけどお祖父様がどう言うかだね。
それよりも今のサナの発言を受けて兄が挙動不審になっている。
その場を行ったり来たりして真剣な顔で何か呟いている。
なになに……『リリーナについて行くのか?それっていつ帰って来るかわからんだろう。何より俺の目の届くところにいないってことは変な奴が近づく可能性が増える……のわ!まずい、非常にマズイ。どうする俺?騎士団隊長辞めるか?でもそんなことしたら余計嫌われるかも……それは駄目だ。サナに冷たい目で見られたくない。うおー、どうしたらイイんだ〜〜。』
というようなことを延々と呟いている。
……ヨシ!放っておこう。
すると今度はアレン君とアンジュ様が不安そうな顔でこちらに近づいて来た。
「あ、あのリリーナお姉様…………私達、一緒に行けるでしょうか?」
アンジュ様が泣きそうな顔になっている。
「リリーナ様、俺、いや俺達絶対旅の邪魔しませんから、だから一緒に……行きたいんです。」
アレン君も不安な表情のまま私に訴えかけてきた。
そうだった、安易に旅について行きたいなんて言ったけど、今まで私を支えてくれていた3人のことを考えていなかった。
……こんな自分のことばかり考えているなんて駄目だ。
とにかくお祖父様に聞いてみよう。
「お祖父様。旅に出たい気持ちはあるのですが、今まで私を支えてくれていたこの3人も一緒に連れて行くことを許して頂けますか?」
「ふむ、出来れば人数は少ないにこしたことはないのだが……そうだな、その3人ならば大丈夫だろう。自分の身は守れるぐらいの力量はあるようだし、何よりリリーナの良き理解者のようだ。」
お祖父様は3人を見ながらそう答えた。
やったーー!
お祖父様から許可が下りたよ〜〜。
お祖父様の答えに3人の顔に笑顔が戻った。
「みんな私が勝手に旅に行きたいなんて言って不安にさせてごめんなさい。でも、3人がついて来てくれるなら百人力だわ。」
しかしここでソールさんと言い合いをしていたクリス様が乱入してきた。
「リリーナ……どうしても旅に出てしまうのかい?……やっぱり王子なんて辞めて臣下に下っておけばよかった。」
なんか物騒な発言が聞こえたような。
「クリス王子、とりあえず落ち着きなさい。旅にリリーナを連れて行くとは言ったが行き先はまだ言ってなかっただろう。ひとまずリリーナには1度西の国を見せようと考えている。西の国の王もリリーナに1度会ってみたいと言っていたしな。それからまた違う国にも行こうかとは思っていたところだ。」
お祖父様がクリス様に言い聞かせるようにそんな話しをした。
最初の旅の目的地は西の国ですか?
結構近いはずなのに行ったことがない。
大きな国ということ知っているけど。
まあ、他にも王妃教育でいろいろ習ったっけ。
「では、我が国にリリーナが来てくれるんですね。ふふ、嬉しいな。リリーナ、もし良かったらそのまま我が国に住んでもかまわないんだよ。家だって用意するしね。」
何やらご機嫌になったクリス様が嬉しそうにそんなことを言っている。
でも、その発言に双子が不機嫌になっている。
うーん、どちらの機嫌も良くなることはなさそうだね。
そしてその傍らでは兄がイジイジしている。
ゴメンね、サナは連れて行くよ。




