魔物狩り④
一夜明けて私達はサイ村を目指して出発した。
前を行くのは騎士団の人達、その後を私、サナ、アンジュ様、アレン君と続いた。
兄とアレク様ももちろん騎士団の人達と一緒にいる。
なかなかの大所帯だ。
「もうすぐあのクラゲの魔物が出没する森みたいね。みんなも気をつけてね。」
私の言葉にみんな頷いている。
もちろん兄を通じて騎士団の人達にもその事は伝えてある。
森の入り口に着いた。
森は大きく、昼間でも薄暗い。
私達は覚悟を決めて進み始めた。
森の中に入り10分程経ったがまだ何も現れない。
やけに静かで不気味だ。
何で鳥の鳴き声もしないんだろう?
と、その時先頭にいた騎士団で動きがあったようだ。
何やら騒がしい。
私達は周囲を警戒した。
周りは木しか見えない。
「うわーーー!」
比較的近くにいた騎士団の1人が声をあげた。
注意しながら近づくとその人の周りの数人とともに膝をついてちょっと震えている。
「どうしましたか?傷は?」
私が言葉をかけるとその騎士は苦しそうにしながらも声を発した。
「り、リリーナさ、ま、お逃げ、く、くださ…」
騎士は必死に私にそう伝えてきた。
でも逃げることなんて出来ない。
周りを見れば前を行ってた他の騎士団メンバーも何人か膝をついているようだ。
サナ、アンジュ様、アレン君が私を囲むように周囲を警戒している。
透明なせいで近くに来るまで気づかないんだ。
そして隊列が乱れているところへ他の魔物がやって来たようだ。
すっかり私達は魔物に囲まれているようだった。
一定の距離を保ちながらこちらをうかがう数種の魔物。
今回はどうやら猿、狼それから熊型が何匹か紛れている。
熊型はいくらパワーアップした騎士団でも厳しいはず。
しかも痺れている人達がいるし。
そしてにらみ合いが続いていたが、ついに猿型が襲いかかってきた。
私達は怪我人を庇いながら猿型を斬り伏せていく。
猿型は森の中からドンドン溢れて来る。
対するこちらは少しずつだが痺れている人が増えているような……。
ちょっとマズイね。
今のところ戦闘力のある人はやられていないけど庇いながらの戦闘は難しい。
退却もあり得ると思い始めたその時、突然何かが飛んできた。
ヒュン!ダンッ!
え?ナニ?
見れば木に何かが刺さっている。
これはたぶん鉄製の武器?
そしてその先にはクラゲの魔物が刺さっている。
これは何処から飛んで来たの?
飛んで来た方向を見るとそこには………
「あなたは………誰?」
今、私の目の前には顔を布で覆った2人組みが立っている。
そのうちの1人が顔を覆う布をとった。
「リリーナ様、ご無事ですか?」
「まあ、あなたは確か……ハンゾウさん?」
布をとった顔はついこの間会ったばかりの、東の国のシノビのハンゾウさんだった。
何でここにいるの?
「はい、ハンゾウです。実はスミレ姫に頼まれてこっそりついて来ていたんです。ああ、すいません!ただ私達はリリーナ様に危害が及ばない限りは出るつもりはなかったんです。ですが、ちょっと劣勢になってきたので手助けをと思いまして……。申し訳ありません!迷惑は承知しているんですが……。」
スミレ様が手助けを?
何で?
そんなことを話しているうちにもう1人のシノビと思われる人が何かまき始めた。
……あれ?
今まで見えなかったクラゲ型の魔物が見え始めた。
なんかキラキラしている。
「ああ、あれは私と同じくシノビで名前はサスケと申します。今あいつがまいたのはガラスの粉に色を付けたもので……まあ、あのように見えない物が見えるようになります。これでだいぶ戦いやすいかと。」
うわ〜、あのバカ3人組とは全然違う。
「ご助力ありがとうございます!迷惑なんて思っていませんわ。助けていただいてありがとうございます!」
「おお、なら良かったです。では我らはこのままあっちの方の敵を狩ってきましょう。」
そう言うと2人はスッと消えた。
そして向かうと言っていた方向で戦闘の音が聞こえる。
これが本物のシノビ……カッコいい!!
って、それどころじゃなかった。
私達は色がついてキラキラしているクラゲ型を先ず狩りまくった。
こんなに近くにいたんだ……。
動き自体はとても遅く、漂っているっていうのが正しいようだ。
もしかしたらクラゲ型にしてみれば攻撃しているというよりも、自分のテリトリーに入ってきたモノを排除しようとしていただけかも。
サナとアレン君は熊型に挑みにいっている。
アンジュ様はご自分の実力を過信せず狼型を狩りまくっている。
まあ、普通に考えて狼型だって十分すぎるほど凄いんだけど……。
私は痺れていた騎士団の人達の周りにいた魔物を一通り狩ってから熊型を狩りに向かった。
サナのところに、と思って来たけど……そうだよね〜。
見れば兄がいた。
人に騎士団の人達のお守りさせておいて自分はサナと2人で魔物狩りか?
……ああ、なんか楽しそうに?熊型ボコっているみたいだし……しょうがない今回は見逃してやろう。
気を取り直してアレン君は、と来てみれば既に勝負はついていた。
そうだよね、アレン君ったら出来る子だもんね。
でも、今回はシノビの2人に感謝だね。
さて、あの2人はどうしたかな?