魔物狩り③
ーー次の日
私達は朝早くから行動を開始した。
とにかく兄達が来るまでに魔物を狩りまくる。
トーマ達以外の部隊の人達も動いてはいるが怪我人も日に日に増えているようだ。
魔物が増えた原因は何なんだろう?
本当は元を絶たないとダメなんだろうけど今はそれどころではない。
まずは近くの村へ向かった。
もともと我が領地の人々は他の領地に住まう人達よりも強い。
単独では難しい魔物狩りも数人で手際良く狩れるぐらいの実力はあるのだ。
ただ今回はあまりに数が多く広範囲に拡がっている。
どの村もやっとこさ守っている感じだ。
だからこそ私達がやらねばならなかったのだが………。
どうしてこうなったの?
「サナ様!南側の村はサナ様………隊の2番隊が魔物を狩り尽くしました!」
「アンジュ様!東側の村はアンジュ様………隊の3番隊が頑張りました!」
「リリーナ様!北側の村はリリーナ様………隊の1番隊が制圧しました!」
………あ〜、いろいろ突っ込みたいけど、とりあえず最後の制圧はダメじゃないかな?
何を制圧しちゃったの?村?村なの?
なんか騎士団の人達が張り切っちゃってる。
到着は明日以降だと思っていた騎士団は予想を裏切り今日やって来た。
私達が村をまわり始めた時にちょうど到着したのだ。
そこからは良く分からないけど瞬く間に行動を起こしていたようだ。
まあ、兄はいたんだけど……何故かもう話しはついていたようであっという間に班分けが済んで、勝手に人の名前を冠した隊で行動していた。
兄よ、これでいいのかい?騎士団は……。
そして兄は報告をしに来た騎士団の人達に何やら叫んでいる。
「お前達!本当に今回だけだからな!非常事態だからその隊の名前を許したんだからな!ちゃんと約束は覚えておけよ、いいな!絶対、絶対、打たれたいとか蹴られたいとか言うなよ!特にサナには必要以上近づくなよ、………ってお前!言ってるそばから何サナに話しかけようとしてんだ!お前、アレだな、確かサナに婚約持ちかけただろう?ふざけんな、今は非常事態なんだからな!」
……兄よ、なんか非常事態が嘘のようだよ。
だいたい何でそんなふざけた隊の名前でそんなに連携取れてるの?
この間の魔物相手に苦戦していた人達と同一人物だとは思えない戦いぶりだ。私のそんな視線に気づいたのかアレク様が苦笑しながら教えてくれた。
「リリーナ様が不思議に思うのもしょうがないですね。この間リリーナ様達に救われた時から騎士団全体の雰囲気が変わったんですよ。今まで平和な王都でそれなりに訓練はしていましたが、それではダメなんだと身にしみたようです。もともと隊長は別格で強かったんですが、みんながそこを目指すようになったんですよ。」
あらら、騎士団の意識が変わっていたんだ。
でも、この短期間でここまで変わるなんてさすが騎士団ってところなのかな。
私がちょっと感心していたらアレク様の眼鏡がなんかキラッと光った。
「何勝手にうちのアンジュに近づこうとしているんだ?そんな元気があるならまだまだ行けそうだよな?ほら、まだまだ魔物はいるんだ今度はあっちに行って来い!死ぬ気で狩って来いよ!」
アレク様って実はシスコン?
たぶんアンジュ様は意外と強いから大丈夫だと思うけど。
……うん、今確実に不意に近づこうとした人を躊躇うことなく蹴ってたよ。
しかも笑顔で。
なんかアレク様とアンジュ様、それにアレン君は似ている。
離れて暮らしていたのに血の繋がりを非常に感じる。
とにかく騎士団の人達が思っていた以上の活躍をしてくれたおかげでかなり狩ることが出来た。
私と兄は母の元へ報告に向かうことにした。
「……ということで思っていたよりも多くの魔物を狩ることが出来ました。」
「そう、本当にお疲れ様。正直そこまで騎士団が頼りになるとは思っていなかったわ。リカルド良く短期間で鍛えたわね。」
母から褒められたのに兄は微妙な顔をしている。
「お兄様どうしたんですか?そんなお顔をして。嬉しくないのですか?」
「あー、いや騎士団が強くなったのは良いんだが……あいつら本気で俺を倒そうとしてあそこまで強くなったんだよ。」
うん?別に良いんじゃないの?
兄を目指して強くなったんでしょ。
「問題は倒したい理由だ。 あいつら俺が言った言葉を信じている……俺を倒せばリリーナやアンジュ嬢それからサナに結婚を申し込めると本気で思っている。」
………兄よ、頼むからこれからも鉄壁の守りを見せてくれ。
まあ、サナが絡んでいるから負けないだろうけどね。
「……こほん、まあ、この際理由は何だって良いわ。とにかくこれでサイ村にも行けそうね。リカルド、リリーナ、お願いね。あなた達が頼りなの。」
「はい、お母様。必ずサイ村を助けに行きますわ!」
「了解。あいつらちょっと調子に乗ってるからこき使ってやる……。」
兄よ、騎士団の人達は味方だよ。
でも、兄がいると妙に安心感もあるんだよね。
まあ、言わないけど……。