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魔物狩り➁

私と母は部屋を出るとそのまま母の部屋へと移動した。


「リリーナ、今日は帰って来たばかりだし休息をとって、明日から働いてもらうけど大丈夫かしら?」


「はい大丈夫です。お母様、私は明日みんなと一緒にサイ村に向かえばよろしいですか?」


母は少し考えてからこう答えた。


「サイ村へはリカルド達が到着してから行ってもらうわ。あなた達の力を疑うわけではないけど、正体不明の敵がいる以上そこへメインの戦力を割いて負けるわけにはいかないの。あなた達にはまず近隣の村に向かってもらうわ。明日だけで魔物を狩れるだけ狩ってもらうから。」


確かにサイ村のことは気がかりだけどここで負けることは出来ない。

母の言う通り出来ることからしなければ。


「わかりました。明日は本気で狩ります!」



それから私は明日の予定をみんなに伝える為に屋敷内を探し歩いた。

みんなはトーマの隊の人たちの手当てにあたっていた。

トーマ程ではないがみんなの怪我も深い。

サナが中心になって怪我の治療をしている。

私が近づくとそれに気づいたアンジュ様が走ってこちらに来た。


「リリーナお姉様!トーマさんは大丈夫でしたか?」


「ええ、薬を塗ったら少し落ち着いたようよ。こちらはどうかしら?」


「今治療していましたが皆さん大丈夫そうです。そういえばそのうちの1人が気になるものを見せてくれたんです。なんか皮膚にくっついていたようなんですが、見たことがないものだったので。リリーナお姉様ならわかるかもと思って………コレです。」



アンジュ様が見せてくれたものは透明なヒラヒラしたものだった。

何かが乾燥したもののようだけどコレって……。

アンジュ様と2人でそれを観察しているところにアレン君もやって来た。


「リリーナ様こちらにいたんですね。実は見せたいものが………ってアンジュも持ってきていたのか。」


アレン君が持ってきたものも同じような形状のものだった。

なんかコレ見覚えがあるような。

………あ!例の海の生き物図鑑か!

確か名前はクラゲ。

なんでまた海の生き物が現れているんだろう?

たまに魔物の中に海の生物がいるんだよね。


「アレン、アンジュ様、コレはたぶんクラゲだと思いますわ。しかも魔物ですね。たぶんなんですがトーマの隊の人たちが急に痺れた原因はコレだと思います。今は何故か乾燥してペラペラですが本来はもっとみずみずしい感じかと。」


私の考えを聞いた2人は今まで手に持っていた乾燥したクラゲを下に落として踏み潰している。

さすが双子行動が同じだ。

痺れさせた犯人がクラゲだとしてこんな小さくて透明だとヤりにくい。

やっぱり兄達が来てからじゃないと難しいね。

そうこうしているうちにサナもこちらにやって来た。


「サナ、ご苦労様。もうみんな大丈夫そうかしら?」


「はい、リリーナ様。リリーナ様の薬が効いてますわ。」


さすがうちの特別製の薬草で作った薬だ。

また作っておかなきゃね。


「みんな揃ったところで明日の予定を伝えるわね。明日はこの付近の魔物を狩れるだけ狩ります。そしてお兄様達がこちらに到着したら今回トーマ達の部隊が行こうとしていた村へと行こうと考えています。今日はしっかり休んで明日に備えてね。」


私の言葉に3人は揃って「はい!わかりました!」と返事をしてくれた。

それからはそれぞれ明日に向けて準備をした。


私はトーマのことが少し気になったので部屋をもう一度訪ねることにした。

その際、血が足りなくなっているトーマの為に特製ドリンクも用意してみた。

怪我などで血が大量に出た時に飲むやつだ。

良く効くんだけど唯一の欠点が美味しくないというところ。

でも、あんなに顔色悪かったんだから飲んだ方が良いに決まっている。



トーマの部屋のドアをノックすると中から小さく返事が聞こえた。

起きてたんだね。

私はそっとドアを開けて中へと入って行った。


私の姿を見るとトーマはちょっとビックリしたような顔をした。


「リリーナ…さま、…なんで……いや、どうしてこちらに?」


どうやらトーマはまた慣れない敬語を私に使おうとしている。


「トーマ、前にも言ったけど慣れない敬語は使わなくて良いわよ。それに今はお母様もいないしね。どうしてここにって聞いてきたけど、私はトーマにこれを飲ませたくって来たのよ。」


そう言って私は特製ドリンクをトーマに見せた。

それを見たトーマはちょっと顔をしかめた。

どうやらトーマも私が何を持ってきたのかわかったようだ。


「あら、そんな顔しないでちょうだい。これでも少しは味を調節してきたのよ。そんな青い顔しているんだから飲まなきゃダメよ。」


「………これ、リリーナが作ってくれたのか?」


「ええ、そうよ。料理長に場所を借りてね。確かに美味しくはないけど……。」


「いや、ありがとう。リリーナが俺の為に作ってくれたものを残すわけにはいかない。」


そう言うとトーマは私からドリンクを受け取り一気に飲んだ。

って一気?!

そのドリンク、あまりの美味しくなさに普通は一気飲みなんて無理だ。

でもトーマは勢い良く飲み干したのだ。

私は慌ててトーマに口直しの水を手渡した。


「ちょ、ちょっとトーマ、飲んでくれるのは嬉しいけど一気飲みって。ほら、口直しにお水飲んで。」


「あ、ああ、ありがとう。」


ゴクゴク、トーマが勢い良く水を飲んでいる。

やっぱり美味しくなかったよね〜。


「ふう、リリーナありがとう。リリーナが俺の為に作ってくれたから飲めたよ。」


トーマが笑顔でそう言ってくれた。

なんだか照れる。


「良いのよ、これで少しでも良くなれば良いけど。後は大人しくしててね。」


「………リリーナは明日から魔物狩りに出るんだよな?リリーナ、無理しないでくれよ。俺、出来るだけ早く復帰できるように頑張るから……だから、俺のいないところで怪我とかしないでくれ。」


トーマが心配そうにこちらを見てくる。

実際すごく心配しているんだろうな。


「わかっているわ。私だってやられたくないもの、十分気をつけますわ。だからトーマはしっかり傷を治して下さいね。治ったらまた一緒に戦いましょう。」


私の言葉を聞きトーマは力強く頷いてくれた。

待っているからね、トーマ。


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