散策➃
じゃあ、この3人をどうしようか?
なんかこのまますぐに解放するのも嫌なんだけど。
とにかくもう関わってほしくない。
とりあえず少しは話しが通じそうなハンゾウさんに言おうかな。
「ハンゾウさん、私はレオン様とスミレ様とはもうお会いすることはないと思っています。なのでこのように後をつけられることはかなり不本意です。スミレ様がこの3人に何をおっしゃったかわかりませんが、これ以上私に関わってくるのであれば………少々私も怒らねばなりませんよ。」
私は内心のイライラが滲み出た感じでハンゾウさんに話しかけた。
正直ハンゾウさんには悪いけど少し、いやかなり嫌になってきている。
婚約破棄は完全に成立、新婚約者決定、どこに私の入る余地があるの?
レオン様とスミレ様に問いただしたいところだが、実際に会うのは………ちょっと。
「は、はい!もう二度とリリーナ様の前にシノビは現れないようにいたします!この3人については国に戻すようにいたしますので、何卒命だけはお助けいただけませんか?」
ハンゾウさんはそう言うとまた土下座を始めた。
……土下座はもういいよ。
それから私を何だと思っているんだろうか?
こんなことで命をとるようなことはしないよ。
「………別に命を取ろうなんて思っておりませんわ。とりあえず主人の指示もなく勝手なことをしている3人は東の国に戻ってもらうのは賛成です。ただそのことでまたスミレ様が私に何か言うような事があれば、次はちょっとこちらも考えますよ。」
ハンゾウさんは必死に首を縦に動かしている。
だけどそこで空気を読めない人が口を挟んできた。
「スミレ姫からレオン王子を奪っておいてその言い方は何なんだよ!」
3人組の1人が叫んだ。
と、同時に私の横にいたアレン君が風のように動いて………ドカッッーー!!
蹴り飛ばしていた。
あ〜〜あ、やっちゃった。
確かに今のセリフは私もカチンときた。
叫んでいたシノビは今先生の家の壁とお友達になっている。
ちょっとピクピクしているから生きてはいるようだ。
「………なあ、あんたらもう喋んなくていいからここから消えてくんない?リリーナ様のこと知らないくせに何してくれてんの。これ以上暴言吐くようなら本気でヤルよ?」
アレン君が完全にキレてしまった。
とういうかアレン君がかなり怒ってくれているからか、私は意外と冷静だったりする。
「あなた方の国に私の事がどのように伝わっているかはわかりませんが、私から望んで婚約したわけではないですよ。なのでそれについて恨まれているならかなり間違っているとしか言えませんね。ましてやスミレ様のことは今回の婚約発表で知ったばかりですから。」
キレているアレン君と完全に戦意喪失しているシノビ達、この場をどう収めようか考えていたら先生が助け船を出してくれた。
「ふぉっふぉっふぉ、もうそれぐらいにしておけアレン。お前の馬鹿力でそれ以上やったらわしの家で死人が出るわい。それからハンゾウさん、どうせこの半人前達ぐらいなのじゃろう?リリーナ嬢のことをよく知らん奴らは。東の国の諜報部隊であるシノビともあろう者達がリリーナ嬢のことを調べん訳ないからの〜。余計な知識を与えん理由があったにしろこの結果はお粗末じゃ。わしからレイチェル王妃には話しておくからそのつもりでおるんじゃな。」
レイチェル様に報告ということは、3人組の強制帰還は決まったね。
どうせ他にもシノビがスミレ様にはついていそうだし諦めてもらおう。
先生には迷惑かけるけど、それが確実だ。
「先生、ご迷惑おかけしてしまって申し訳ありません。」
「リリーナ嬢が気にすることはないぞ。それにリリーナ嬢はあやつの孫だしな、こんなもん迷惑にはならんよ。」
あやつの孫?
先生ってもしかして祖父母の知り合い?
知らなかった。
「あ、あの先生。私のお祖父様ともお知り合いでしたか?」
「ふぉっふぉっふぉ、言わんかったかの〜。あやつとは昔からの飲み友達じゃわい。よく一緒に修行と称して魔物狩りにも行ってたぞ。あやつはほんに打たれ強くての〜、どんなに酷い傷でも次の日には元気に動き回っておったわい。今も世界各地を動き回っておるのじゃろう?たまにはこっちに顔を出せと言っておいてくれんか。」
ああ〜なんか納得。
祖父の知り合いならこの強さもわかる。
類は友を呼ぶってやつだ。
そして兄は確実に祖父の血を受け継いでいる、打たれ強さがハンパない。
結局私は城に行かずにすんだ。
先生がシノビ達を連れて行ってくれたからだ。
私は興奮気味のアレン君をなだめて、サナとアンジュ様がいるであろう待ち合わせ場所に向かった。
待ち合わせ場所にはすでに2人が待ち構えていた。
なんでちょっと期待のこもった目でこちらを見ているの?
特にアンジュ様は目がキラキラしている。
なに?アレン君の武勇伝でも聞かせようか?
なかなかステキな蹴りでしたよ、と。