散策➂
先生が面倒いという理由で捕まえてきちゃった3人だけど、どうしようか?
たぶん、おそらく、いやほぼ確実にスミレ様関係だよね〜。
関わりたくないんだけど……。
すると先生が3人に話しかけた。
「お前達、まだシノビとしては一人前ではないのじゃろう?3人揃ってやっとと言うところかの〜。3人でも足りていない気もするが……。」
先生の言葉に1番若い、たぶん12、3歳ぐらいの子が反応した。
「馬鹿にするな!俺たちはもう一人前だ。こんな紐なんてすぐに……」
そう言って縛っている紐を取ろうとしてはいるが全く取れない。
うんうん、昔先生に習った結び方だね〜。
あれはもがけばもがくほど食い込んでいくエゲツない結び方だ。
最終的にその子は全く動けなくなってしまった。
「なあ、何でリリーナ様を尾行したんだ?誰に頼まれた?」
アレン君が3人に質問したが答える気は無さそうだ。
まあ、仮にもシノビだとするならその対応は納得出来る。
ここでペラペラ話すようじゃ逆に心配だよ。
でも、殺気はなかったからただ動向を探っていたのだろうけど……。
ちょっとだけイジワルしてみようか?
「ねえ、スミレ様は私のことを何とおっしゃっていましたか?私のことが気になっているようだから3人を連れて会いに行こうかしら、ね?」
私は笑顔でこう言ってみた。
もちろん会いに行く気なぞこれっぽっちもない。
でも私の言葉を聞いた3人は顔色が悪そうだ。
「ふぉっふぉっふぉ、それは面白そうじゃな。」
「おお〜〜、リリーナ様笑顔ですがかなりイラついてますね。」
先生もアレン君も面白がっている……。
私だってもうそろそろご立腹ですよ。
3人はお互いに顔を見合わせている。
コンコンッ
そんな時、先生の家のドアがノックされた。
あれ、どちら様?取り組み中ですよ。
先生が入り口に向かった。
私とアレン君は3人が逃げ出さないように目を光らせている。
まあ、紐がこれでもかって言うくらい食い込んでいるから逃げられないと思うけど念には念ね。
先生が戻って来た。
………誰か連れて来た。誰?
先生が連れて来た人物を見て3人が声を上げた。
「「「あっ!」」」
その人は縛られている3人を見ると、高速で3人の頭にゲンコツを落とした。
「「「痛って〜〜」」」
そしてこちらを振り向くとまたもや高速で………え、土下座?
「申し訳ありませんでした!」
もう展開についていけないよ。
この人誰なの?
私とアレン君が呆然としていると先生が説明してくれた。
「ふぉっふぉっ、その人は『ハンゾウ』さんと言うらしい。その3人の保護者のようなもんだということじゃ。」
ハンゾウさんとやらは確かに東の国特有の黒髪だ。
だけど黒い衣装ではない。
普通のこの辺りの人が着ている洋服を着ている。
でも、とりあえず土下座はやめさせないと。
「あ、あのハンゾウさんお顔を上げて下さい。とりあえず土下座もやめてくださいませんか?」
「いや、しかしこの度のこと誠に申し訳なく思っております。私なぞの謝罪では済まない問題でしょうが本当に申し訳ありません!」
話しが進まないよ。
ハンゾウさんは土下座の体勢から全く動かない。
「ほれ、ハンゾウさんとやら。リリーナ嬢も困っておるから謝罪はその辺にしといて事情を説明してはくれんかの〜。何となくはわかっているつもりじゃが、一応確認はしたいのじゃ。」
先生の言葉にようやくハンゾウさんは顔を上げてくれた。
ただまだ座り込んではいるけど。
「はい、わかりました。説明させていただきます。この3人は気づいておいででしょうが、スミレ姫のシノビです。ただ、まだ半人前のため本来であればこのような任務は禁止されています。」
まあ、そうだよね。
こんな真昼間に覆面で黒い衣装って馬鹿にしているのかって話だ。
プロなら普通周りに溶け込むような格好するでしょう。
「この者達の本来の役目はスミレ姫の護衛です。こんな馬鹿なことをしてすぐに捕まってはいますが、一応強さだけならかなり上位に位置するのです。経験不足もあるでしょうが捕まえたこのご老人が本当に凄すぎます。」
「師匠は1人で魔物20匹相手にしていたこともあるから………まあ、この3人ぐらいだったら簡単なんじゃないかな。」
アレン君の言葉を聞いたハンゾウさんと3人組は『に、20匹……』とかなりビビっている。
「そ、そうでしたか……。それならこの3人では全く歯が立たないのは当たり前ですね。ただ今回のこの尾行はスミレ姫は知りません。この者達が暴走したのです。もちろんスミレ姫をかばっているわけではありません。まあ、スミレ姫に全く責任がないわけではないのですが……。」
なるほどスミレ様の為にと勝手にやっちゃったのね。
大方スミレ様から私のことを聞いて、軽い気持ちで後をつけてみたのかな?
たぶん見つかるなんて思っていなかったんだろうね。
………馬鹿だよね?




