散策➁
さて、どうしようか?
➀ 振り切って逃げる
➁ 相手を特定して何故後をつけていたか問う
➂ 叩きのめす
まあ、妥当なのは➀かな?
私とアレン君なら出来ると思うけど……。
でも、つけられていたなら理由は気になる。
「リリーナ様、もう少し行くと知り合いの家が近いのでそこに一旦隠れましょう。」
アレン君が小声で話しかけてきた。
知り合いの家……か。
申し訳ないけどちょっとだけかくまってもらおうか。
「わかったわ。」
アレン君の案内で大通りから小道に入って行くと目的の家が見つかった。
小道に入ってからは私とアレン君はダッシュで家へと向かったので後をつけていた人も油断したと思う。
ドアをノックすることもなくアレン君は家の中に入っていった。
私も後に続いた。
「師匠!いますか〜〜?」
師匠?
もしかしてアレン君の武術の師匠!
すると奥から声が聞こえてきた。
「そんな大声を出さんでも聞こえておるわい。」
そして現れたのは………あれ?
「もしかしてダン先生………ですか?」
「うん?そうじゃが……おお〜〜、リリーナ嬢ではないか。久しぶりじゃのう。」
やっぱりダン先生だ。
ダン先生は私の王妃教育中のある教科の先生だった。
それが護身術。
もともと自分の身は守れるぐらいには強いつもりでいたが、先生には技術を教えてもらった。
厳しい王妃教育の中である意味気の休まる時間を過ごせていたのだが……まあ、すぐに合格が出てしまいあっという間にその授業は終わってしまったのだ。
「あ、はいダン先生お久しぶりですね。ダン先生がアレンの師匠なのですか?」
「まあ、そんなもんじゃな。こいつは見所があったからの〜。それに姉の方もな。だいたい技術は教えたがいきなり冗談で言った『魔物でも倒せたら一人前』という言葉を実践するバカはこいつぐらいじゃぞ。」
確かに前、魔物で修行したって聞いたような。
「リリーナ様、師匠と知り合いだったんですね。凄い偶然ですね。」
本当に……こんなことあるんだ。
アレン君も心底驚いている。
「ところで2人でいきなり来てどうしたんじゃ?」
私とアレン君は今までの出来事を簡単に先生に説明した。
もちろんつけられていたこともだ。
「ふむ、お前達をつけるなんて命知らずじゃのう。」
先生……命知らずって。
先生は面白そうにしている。
そうだった、こんな感じの先生だったよ。
「どれ、ワシがちょっと外を見て来ようかのう。この辺はよそ者はあまり来んから怪しいやつがおったらすぐにわかるじゃろうて。」
「すいません、師匠。」
「申し訳ありません、先生。」
アレン君と私は先生に謝った。
だけど先生は笑いながら
「いいんじゃ、久しぶりに教え子2人に会えたからのう。では、ちょっと見てくるぞ。」
そう言うと先生は外へと出て行った。
「それにしても師匠がリリーナ様の先生をしていたなんて……世間は狭いんですね。」
「本当にそう思うわ。それにしても先生は何故こんなところにお住まいなのかしら?」
「うーん、貴族の生活に飽きたから跡をとっとと息子に譲って気ままに過ごしているって前に言ってましたよ。師匠って変わってますよね。」
確かに変わっているよね。
何となくだけど祖父母に似ている。
「アレンはいつ頃先生にお会いしたんですか?」
「俺ですか?えーっと、あれは確か今から3年ぐらい前ですかね。俺、自分では結構鍛えているつもりだったんですが、ゴロツキ20人ぐらいに囲まれた時ちょっと危なかったんですよ。その時助けてくれたのが師匠で、すぐに弟子入りを志願したんです。最初は断られていたんですが粘り強くお願いしてやっと許可をもらいました。」
そうだったんだ……。
確かに先生は一見強そうに見えないのに、見た目に反して恐ろしく強かった。
私とアレン君が先生の話しで盛り上がっていたところドアが開く音がした。
先生が帰って来たのかな?
私とアレン君が入り口の方へと向かうとそこには驚きの光景が広がっていた。
「あ、あの〜、先生?これはどういうことでしょうか?」
「うん?とりあえずいろいろと面倒いので捕まえて来たんじゃ。」
「………そうでしたか。」
目の前には覆面をし、黒い衣装を身に纏った見るからに怪しい者達が3人いた。
「とりあえず覆面を取るかの〜。」
そう言うと先生が抵抗しようとする3人からあっという間に覆面を剥ぎ取った。
覆面の下から現れた顔は思いの外、若い者達だった。
何より1番の特徴はその黒い髪だろう。
黒い髪………東の国特有のものだよね。
「ほっほう、お前達は東の国の者か。確か東の国には王族に仕える黒い衣装を身に纏った『シノビ』という者達がいると言うの〜。」
聞いたことがある。
確か王妃教育の中で他国のことを習った時に聞いた。
いわゆる諜報部隊だとか。
その人達が何で私とアレン君のあとをつけていたんだか………。
って、想像はつくよね〜。