新婚約者って?➁
嫌だけど、すごく嫌だけど手紙の封を開けた。
これは……お茶会への招待状だね。
何だろう見なかったことにして領地に帰りたいけどそれも無理だ。
まだこの屋敷に私がいることをレイチェル様もご存知なんだろうから。
ふう〜、しょうがない行くか……。
手紙にはありがたいことにサナも連れて来ていいと書いてある。
今回はアレン君とアンジュ様はお留守番だ。
「しかしこのタイミングでお茶会ですか……何だろう嫌な予感しかしない。」
「王妃様がリリーナお姉様をお呼びになるって……面倒な話の予感しかしないわ。」
双子は今回も息が合っている。
さすがだね。
「そうね考えられるのは……たぶんスミレ様のことだと思うわ。」
私はこれ以外の話しはないと思っている。
具体的に言うとスミレ様とレオン様についてだ。
実際この2人が結婚まで行くには大変な労力が必要だと思う。
むしろ今私が入ったらまずいのでは?
お茶会は3日後。
いつになったら領地に帰れるのかな?
ーー3日後
この3日間面倒くさいことしか起きなかった。
具体的に言うとお見合い話とか、お見合い話とか、お見合い話……。
って全部それかい!
本当にどこから湧いてくるのかわからないけどやたら話が来ていたらしい。
とはいえ私のところまで話が持ってこられることはないけどね。
全部お父様が丸めてポイッてしてた。
そして、あってもおかしい事ではないけれどアレク様の話しではアンジュ様にも申し込みが来ていたらしい。
主に騎士団所属の方から。
そうだよね〜、アンジュ様カワイイから。
ただ騎士団の人っていうのが素直に喜べないんだよね。
まあ、その話はアレク様が笑顔で断ったらしい。
そりゃそうだ、だってその騎士団の人達ってみんな例の隊のメンバーらしいから。
さすがにカワイイ妹が怪しい隊の人に嫁ぐのは阻止したようだ。
それからサナにも縁談が持ち込まれた。
それについては大変なことになったのだけど……。
縁談を申し込んできたのはまたもや出現、なかなか消えないあの騎士団のメンバーだった。
父の方に話がいったのだけど、父はどういう人間か調べる為に手っ取り早く兄に聞いてしまったのだ。
サナに縁談が持ち込まれたと知った兄は………暴れた。
縁談の話しを聞いたと同時に縁談を申し込んできた騎士団のメンバーがいる訓練場に突撃したらしい。
その時の叫び声が……
『サナに結婚を申し込む気なら………俺を倒してみろ!!』
そのセリフとともに暴れまくったようだ。
全部その場にいたアレク様から聞いたのだけど。
最終的に全員潰したそうだ。
兄よ、あなたは騎士団の隊長でしょう?
有事に全員潰れてたらどうするのよ……兄じゃないんだからそんなに簡単に復活できないよ。
まあ、そんなこんなでお茶会何だけど……
で、この状態は何なんでしょうか?
今、城の庭園の一角でお茶会が開かれている。
そのメンバーといえば、私とレイチェル様と………スミレ様だ。
まさか直接会うことになるとは。
最初に軽く自己紹介してからはレイチェル様はニコニコとしている。
スミレ様は……うーん、これはどうなんだろう。
イマイチ何を考えているかわからない。
私はというと何とか笑顔作れているよね?
サナはちょっと離れたところに控えている。
埒があかないので思い切ってレイチェル様に聞いてみた。
「あの、レイチェル様。私は何故このお茶会に呼ばれたのでしょうか?」
ストレートに聞いてみた。
だって早くここから帰りたい……。
「ふふ、それはスミレ姫がリリーナに会ってみたかったそうなのよ。あのパーティーの場では話すことは難しかったでしょう?だからここでお茶会にしてみたの。」
スミレ様が私に?
何で?
ここにきて軽い自己紹介しか口を開かなかったスミレ様が話し始めた。
「リリーナさん………私貴方に勝ちますわ!」
いきなりの勝利宣言!?
そして何で勝つの?
「あ、あのスミレ様……どういうことでしょうか?」
「私はレオン王子の婚約者として貴方よりも完璧に王妃教育をこなしますわ。もともとはレオン王子の婚約者候補は私だったはずなのにいつの間にか貴方が婚約者になっていました。でも、今回レオン王子から婚約破棄をしたと聞いてやっと私のことを思い出してくれたと喜びました。なのにレオン王子は未だにお会いしてくれません。なら私は貴方よりも優れていることをアピールするだけですわ!」
おお〜、なんと心強い発言!
もしかしたらこの方ならレオン様を相手に出来るかも……。
私は嬉しくなってちょっと頬が緩んでしまった。
「っく!笑っていられるにも今のうちですわ!必ず貴方よりも優秀なことを証明してみせます!だから貴方は私の近くで私のことを見ていなさい!」
え?
近くで見るの?
ちょ、ちょっと待って下さいな。
何故元婚約者を近くに置こうとするのよ。
私は対応に困ってレイチェル様を見た。
レイチェル様は扇で顔を隠してはいるが確実に笑っている。
「ス、スミレ様。私が近くにいない方がいいと思うのですが……。」
「近くにいなきゃわからないじゃない。」
うわ〜〜どうしよう、非常に面倒だ。
サナの方をチラッと見たら……あ〜、ちょっと怒っているね。
その時レイチェル様が口を挟んできた。
「スミレ姫、あまりリリーナをいじめないでちょうだいね。大丈夫よ貴方が王妃教育に取り組んでいる間はリリーナだって王都にいてくれるわ。ね、リリーナ?」
無理。
もう、絶対無理。
領地に帰る。
魔物狩る。
私はたぶん今笑顔が作れていないはずだ。
ちょうど私の正面にいるスミレ様がちょっとビビっているようだし。
「な、なんですの、そんな顔したって怖くなんてないですわ!」
涙目で言われても、ね。
ここは一つはっきり言っときますか。
「レイチェル様申し訳ございません。私は王都には残るつもりはないです。このままここにいてはスミレ様にもレオン様にも良くないと思います。近日中に領地に帰りたいと考えております。」




