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王子再び⑧

パーティー会場に全員が集まったタイミングで姿を見せていなかった王様とレイチェル様が現れた。

壇上に現れたお二人はみんなに話しかけた。


「今宵は王家主催のこの会場に集まってくれてありがとう。さて、この場を借りて皆に伝えたいことがある。」


伝えたいこと?

何だろう?

父も兄も何も言っていなかったけどなぁ。


「我が息子レオンの婚約者を発表したいと思う。」


………え?

レオン様の婚約者?!


王様の発言を聞き周りもざわついている。

そりゃそうだよ、聞いてないもん。

このびっくり発言を聞いている間にアレン君が飲み物と果物を持って戻ってきた。


「リリーナ様、今の王様の御言葉聞きましたか?ちょっとびっくりしましたよ。」


うん、私もびっくりした。

でもその後のアレン君の言葉もちょっとびっくりだ。


「婚約者ってまさかリリーナ様の名前は出しませんよね?もしそんなことしたら……俺たぶん大暴れしますよ?」


アレン君が大暴れ?

それは止めとこうね、ね!


そうこうしているうちに王様がまた話し出した。


「レオンの婚約者は………東の国の三の姫、スミレ姫だ。」


王様がそう言うと誰かが壇上へと登って行った。

そうか、あの人がスミレ姫なのね。


スミレ姫は東の国特有の流れるような漆黒の髪に、フッと風が吹けば倒れてしまいそうな儚げな雰囲気の人だった。

私がスミレ姫を見てまず初めに思ったことは、あの方アノ王妃教育受けて大丈夫かな?のそれだけだ。

だって今にも倒れそうな程肌も白いし、私よりも年下に見える。


そういえばレオン様が見当たらないけどどうしたかしら?

本来であれば自分の婚約発表にいるはずの人がいない。

私がキョロキョロしているのに気づいたアレン君が私にそっと教えてくれた。


「さっき飲み物取りに行く時に見かけて不思議に思っていたんですが……謎が解けました。レオンが兄上と他の騎士団の人達に捕まっていたんです。たぶんこの発表を邪魔しないように捕獲したんですね。さすが兄上、仕事が早い。」


アレン君が妙なことに感心しているけど、まあそうだよね。

他国の姫を迎えての婚約発表の場で騒いだら国際問題に発展する。

しかもあのレオン様なら絶対騒いでいたよ……。


会場はレオン様の新しい婚約者に興味津々だ。

だけどいつの間に決まっていたのかしら?


この日はこの突然の婚約発表で幕を閉じた。

なかなかのインパクトだったよ。

いざ帰ろうとした時やっとアンジュ様と合流出来た。


「アンジュ様大丈夫でしたか?」


「リリーナお姉様!お側をずっと離れてしまい申し訳ありませんでした!」


アンジュ様が涙目で謝ってきた。

ま、まさかいじめられたとか?

よし!誰だそんなことしたのは?剣のサビにしてくれるわ、と考えていたところでアンジュ様が今まであったことを教えてくれた。


「リリーナお姉様やアレンと離れてからはずっと騎士団の人達と一緒にいたんです。最初はすぐに戻ろうと思っていたのですが……ちょっと目に余る隊が騎士団の中に生まれていたので話し合いをしてきてたんです。なかなかしつこくって……。まあ、最終的には何とかなりましたけど。」


一体何が行われてきたのかな?

ちょっと怖くて詳しく聞けないけど、アンジュ様がいじめられていたわけではないならそれでいいよ。


アンジュ様とも会えたので私達は屋敷へと帰った。

屋敷に戻るとサナが出迎えてくれた。


「お帰りなさいませ。リリーナ様大丈夫でしたか?」


サナが心配そうに聞いてきた。

私は明るく答えた。


「ええ、ただいまサナ。私は大丈夫よ。」


サナはホッとしたように笑顔になった。

うんうんサナには笑顔が似合うよ。


私達が部屋に戻ろうとしたタイミングで兄も帰ってきた。


「おっ、リリーナ達も今帰ってきたのか?今日は驚いたよな〜〜。」


どうやら兄も知らなかったようだ。

するとここでアンジュ様が衝撃の一言を放った。


「本当に驚きましたよ〜。リカルド様が貴族の令嬢に囲まれているなんて。オモテになるんですね〜リカルド様って。」


固まった。

主に私とサナが。

兄はことの重大さに気づいていない。


私は恐る恐るサナの方を見た。

そして後悔した。

ど、どうしよう表情がない……。

さっきまでの笑顔はいづこ〜〜。


しかも何やら兄はヘラヘラしている。

このバカ兄!!

見ろ!サナを見ろーーーー!


私の心の声が届いたのか兄がサナの方を見た。


「おっ、サナ。ただいま。ほらっ、サナに土産だぞ。1人で留守番だったしな。これ美味いぞ。」


き、気にしていないですとぉ〜〜。

さすがだよ兄。

サナは無言だ。


「うん?どうした?やっぱりサナも連れて行けば良かったな〜。」


「……いえ、私は貴族の令嬢ではございませんので行けません。リカルド様も私などに構わずパーティーで仲良くなった方と共に過ごされて下さい。」


あ〜〜、サナがいじけてる。

ただこの兄にそれが通じるか。


「……もしかしてサナ、妬いているのか?」


兄が嬉しそうにサナにそう問いかけた。

うん、馬鹿だ。

サナはフルフルと震えながら拳を握りしめて、そして兄の鳩尾に一発打ち込んだ。


「リカルド様なんて、リカルド様なんて……バカルド様で十分ですわーー!!」


サナはそう言うと走り去ってしまった。

残された兄は鳩尾を押さえながら悶えている。

何やら苦しそうな声で「くっ、サナまた腕を上げたのか……やっぱりサナは良いな……」と呟いている。


うん、一回兄も記憶失った方が良いんじゃない?

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