表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/187

王子再び➂

私は机に向かうレオン様の前に移動した。

レオン様は仕事に集中しているのかまだ私の存在に気づかない。



「そういえばリカルド……お前の領地で魔物が多発した件を調べていたんだが……」


うん?

うちの領地の魔物について調査してくれているの?

確かにこの間兄達が来ていた時はかなりの大量発生だった。

レオン様気にしてくれていたんだ……。


レオン様が書類と睨めっこしながら兄にまた話しかけた。


「昔の記録も調べていたんだが、何故か他国で争いが起きている時に魔物の発生件数が増幅しているようなんだ。まあ、ちょっと資料が足りないから確かなこととは言えないんだけどな。」


他国での争い……ね。

じゃあ今回もどっかで何か起こっていたのかな?

それにしてもレオン様って本当に仕事は早いんだね。

私は感心しながらレオン様の話に耳を傾けていた。



その時レオン様が兄が返事をしないことに気づいたらしくずっと下に向けていたお顔を上げた。

すると目の前にいるのを兄とばかり思っていたレオン様は私がいたことにより………固まった。



しかもいつもとは違い目を逸らさない。

むしろ絶対に目を逸らそうとしない。

うーん、ここまで正面から向き合ったことはあったかな〜?

さすがにそろそろ恥ずかしくなってきたのだが……。



するとそれまでジッと私を見つめてきたレオン様が席をたった。

あれ?どうしたのかな?

私が不思議に思っているとレオン様は私の前まで来て………片膝をついた?

うん?どういうこと?


私は何がしたいのかわからない為そのままレオン様を見つめていた。

レオン様は私の右手をとって、また私を見つめながら言った。



「私と………結婚して下さい!」



「え?」「は?」


私と兄は思わず疑問の声を上げてしまった。

今なんて言った?

聞き間違いでなければなんか結婚して下さいって言葉が聞こえたんだけど……。


レオン様は私の右手を握ったままだ。

あの〜、私、まだ名乗ってもいないんだけど。

その時兄がやっと混乱から立ち直りレオン様に問いただしてくれた。


「いや、レオン王子。まだ名前も教えていないのに何でこうなったんですか?!っていうか記憶戻ったんですか?」


レオン様は兄を何言ってんだこいつ、みたいな目で見ながらこう言った。


「記憶は戻っていないぞ。名前か……名前がわからなくても自然とこうするのが正しいと思って結婚を申し込んでみたんだが、ダメだったか?でも……名前は知りたいな。君の名前を教えてくれないか?君は私のことを知っているんだろう?っとそれよりもまず確認することがあった。リカルド、お前この子の何なんだ?婚約者とか言ったら……潰すぞ。」


「はぁ〜〜?婚約者なわけないでしょう?俺の婚約者は……いないけど、でも結婚するなら!………アレ?結婚するなら?何で俺サナを思い浮かべたんだ?」


はぁ〜〜。

兄が絶賛混乱中だ。

しかも場合によってはサナが危険かも。

こんな鈍感兄じゃサナがかわいそう過ぎる。


「とにかく婚約者ではないですよ。さあ、名前を教えてやってくれ。」


兄が投げやりになっている。

そんなんでいいの?

それにまだ手を握られているんだけど……。

私は手は諦めてレオン様に話しかけた。



「レオン様、覚えていらっしゃらないと思いますが私の名前はリリーナです。」



私が名前を教えるとレオン様はブツブツと何回もリリーナ、リリーナと唱えている。

呪文じゃないんだから人の名前を唱えないで。

何回か繰り返していたがやっとおさまった。

ついでに手も解放して。



「リリーナ………最高に良い名前だな!君にとっても似合っている!」


レオン様が今まで見せたことのない満面の笑みでそう言った。

うわ〜〜、こんな表情のレオン様見たことないよ。

こんな感じで笑うんだ……。


もう、何年も婚約者をやっていたはずなのに婚約破棄してから笑顔を見るってどういうことなんだろう。

笑顔が眩しすぎる。

って、いろいろ流されている場合ではなかった。

記憶は戻ってないんだよね?


「レオン様、やっぱり記憶は戻りませんか?私のことも覚えていないようですよね。」


「そうだな……正直記憶は戻っていない。だが何故か君を、リリーナを見た時にパッと光が差したんだ!なんか懐かしいような暖かい感じがした。こうなかなか言葉では難しいな。」


レオン様は困ったようにそう言った。

記憶は戻らないけど少しは何か感じ取ってくれたのかな。


兄は私達の様子を見ながら何かつぶやいている。


「やっぱりリリーナにだけ態度が違い過ぎる。どんだけ好きなんだよ……。」


……聞かなかったことにしても良いかな?

なんかムズムズする。

恥ずかしいんだけど……。


「ああ!」


兄が突然叫んだ。

私もレオン様もびっくりして、ついにレオン様が手を離してくれた。


「そういえばみんなから面会は長くても5分ぐらいにしとけって言われてたんだった。サナになんて念押しされて、忘れたら許しませんよって可愛い顔されたんだった。」


おい、兄よ。

言いたいことがいっぱいあるセリフだな〜。

まあ、もういいよ。兄だし。

じゃあ、なんか気疲れしたから今日は帰ろう。


最終的に兄とレオン様が帰る帰さないで争っていたけど隙を見て抜け出させてもらった。

大丈夫、兄が「先に行けーーー!」と体を張って出してくれた。

きっとサナに言われたからだ。


とにかく一旦撤退だ。

なんかどっと疲れた。

押せ押せのレオン様って……苦手だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ