手紙
兄達が王都に帰って1ヶ月程経ってから兄から手紙が届いた。
兄から手紙なんて珍しい。
いっそ開けずに額縁に飾ろうかと思ったくらいだ。
さて、何が書いてあるのかな〜〜。
『リリーナへ
リリーナこの間はありがとな。
今回はリリーナへお願いがあって手紙を書いたんだ。
実はリリーナに王都に来てほしいんだ。
ちょっと、いやかなり困ったことが起きたんだ。
この手紙と一緒に父上から母上にも手紙が届いているはずだ。
王都に来る許可は母上から出るはずだ。
申し訳ないがよろしく頼む。
追伸
ちなみにサナは元気か?
俺の贈った髭は良い鞭になったか?
王都へはサナも来るよな?
リカルド 』
……まず言いたい事がある。
絶対サナのことの方が気になっているよね?
何だろう……なんか兄をいじめたくなる。
いっそサナは今回留守番とか?
でも、サナは否定するだろうけど兄に会いたかったりするよね?
で、問題は王都に来てほしいということだ。
何故今になって私が行かなくてはいけない問題が起こるの?
しかも兄ったら内容書いてないし。
もう、おバカさんなんだから……。
考えたってわかんないし母のところに聞きに行こうかな。
私は自室を出て母の部屋に向かった。
コンコン
「お母様、リリーナです。入ってもよろしいですか?」
中から「入っていいわよ〜」という声が聞こえた。
中に入るとちょうど手紙を読んでいるようだった。
「リリーナ、要件は手紙のことかしら?」
「はい。お母様がお読みになっているのはお父様からのお手紙ですか?私にはお兄様から届いたのですが、理由が書かれておらずとにかく王都に来てほしいとのことで……。」
お母様は大きくため息をついた。
「まったくリカルドったら。何のための手紙なのよ。」
「たぶんサナのことが気になっているようですよ。追伸と題してサナについてだけ書かれていましたから。」
「もういいんだか悪いんだか。まあ、あの子のことはいいわ。王都に来てほしい理由は簡単よ。レオン王子がやらかしたんですって。ただ手紙には詳しく書けないからとにかく王都に来てほしいとリーフも手紙に書いてたわ。リリーナ、行きたくないなら行かなくてもいいわよ。それだけのことをされてたんだし。ただ王都に行くって言うなら特に止めもしないわ。あなたが行くか行かないかは決めなさい。」
母の言葉に私はちょっと考えた。
王都に私が行ってレオン様がやらかしたことが何とかなるのかな?
私は婚約破棄が成立している今、別にレオン様に会うのが嫌なわけではない。
むしろ困っているなら助けてあげたいぐらいには思っている。
なら答えは決まっている。
「お母様私は王都に行ってみようと思います。困っているなら、私が助けられるなら助けたいと思ってます。それに……サナは拒否するかもしれませんが、お兄様にサナを会わせてあげたいので。」
「ふふっ。リリーナならそう言うと思ったわ。いいわ、行ってきなさい。そうね〜、サナとアレンとアンジュも連れて行きなさい。護衛としては最高でしょう。」
「ありがとうございます。では急いだ方が良さそうなのですぐに3人にも話しをしますね。用意ができればすぐにでも出発したいと思います。」
「ええそうしてちょうだい。危ないことはないとは思うけど、注意は怠らないでね。」
母との話しも終わりすぐにみんなに話しをした。
「リリーナ様……お人好し過ぎます。」とサナ。
「リリーナ様、とっとと終わらせてこっちに帰って来ましょう!」とアレン君。
「リリーナお姉様と王都に!嬉しいですわご一緒出来て!リリーナお姉様の素晴らしさをみんなにも広めましょう!」とアンジュ様。
うん、アンジュ様だけちょっと違うね。
というかかそれはやめてね。
みんなとも話し合って翌朝には出発しようということになった。
全員馬にも乗れるし、急げばその日のうちに王都に入れるはずだ。
さてレオン様は一体何をやらかしてくれたのかな?
ーー翌朝
私達は朝早くに屋敷を出発した。
道中特に何もなく、スムーズに進んだ。
別にちょっとくらいだったら魔物でも盗賊でも出てもいいんだよ。
そんな私の願いは届かずあっという間に王都に到着した。
私達はすぐに王都にある父の屋敷に向かった。
「お帰りなさいませ、リリーナ様。」
出迎えはいつもの通りセバスチャン。
「久しぶりねセバスチャン。お父様かお兄様はいるかしら?」
「お2人ともリリーナ様の到着をお待ちしておりました。部屋にいらっしゃるのでご案内いたします。サナとお2人もこちらに一緒に来てください。」
セバスチャンの案内で部屋に向かった。
父も兄も待ってるなんて結構深刻な話なのかな。
私は急に不安になってしまった。
そんな私に気づいたのかアレン君が小声で話しかけてきた。
『リリーナ様、大丈夫ですよ。俺もアンジュもサナさんもいます。何があったって絶対リリーナ様を領地に連れて帰りますよ。』
少しおどけながら声をかけてくれた。
私はちょっと笑顔になってアレン君に頷き返した。
そうだね、とにかくやらかしたレオン様を助けて早く帰ろう!