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兄、現る ➁

それから隊員さん達は何人かの班に分かれたようだ。

1つの班に必ず魔物と戦ったことのある人が組み込まれているらしい。

本当は私もついて行きたかったが、訓練ということで断念した。


それにしても兄も仕事ちゃんとしてたのね〜。

いつも母に鉄拳制裁されている姿ばかりを見ていたから忘れつつあったけど、騎士団の隊長なんだもんね。

レオン様のお守りじゃなかった。


班分けが済んだようで出発するらしい。

私は行きたい気持ちを抑えつつ、兄達を見送った。



さて、私は何をしようかな。

領地に帰って来てからは要請があれば魔物狩りに出かけたり、見廻りしたり、薬を作る手伝いをしたりと忙しく動き回っている。

主に魔物関係なのは……まあ、今までの反動だね。


そういえば最近アレン君とばかり行動していたら、アンジュ様がいじけているってサナが言ってたような。

よし、今日はアンジュ様にお付き合いしようかな。

どこにいるかな〜。


私がキョロキョロし始めたことに気がついたアレン君が話しかけてきた。


「リリーナ様、何かお探しですか?」


「あ、アレン。アンジュ様がどこにいらっしゃるかご存知ですか?」


「アンジュですか?でしたら先程まではサナさんと2人で何かしていましたよ。たぶんアンジュの部屋だと思いますが。」


「そうでしたか。最近アンジュ様とサナは仲が良いのですね。」


「そうですね〜、何だか2人で盛り上がっている姿をよく見かけますよ。どうせ俺のことでも話しているんでしょうけど。」


「うん?アレンのことですか?何かあったのですか?」


「いえ、リリーナ様は気にしなくて大丈夫ですよ。2人で面白がっているだけですから。」



その話はそこまでとばかりに、アレン君は「じゃあ、俺は見廻りに行って来ます。」と出かけて行ってしまった。

あれ?アレン君は見廻りに行くの?

じゃあ私も…………いや、ダメだ。

そうだよ、いつもこのパターンでアレン君と見廻りとか行っちゃうからアンジュ様と過ごせなくなるんだった。

危ない、危ない。


私はアンジュ様の部屋に向かうべく屋敷内に戻った。

さてアンジュ様は、っと。


アンジュ様の部屋の前までやって来た。

ドアをノックすると中からアンジュ様が「開いているので入って大丈夫ですよ〜」と返事をしてきた。

私は失礼しますと中へと入っていった。


「わあ!リリーナお姉様!」


アンジュ様はビックリした声を出しこちらを見た。

そんなに驚かれるとこっちがビックリするよ。


「こんにちは、アンジュ様。あら、サナはいないようですね?」


部屋の中にはアンジュ様だけでサナの姿はなかった。


「あ、サナさんでしたら先程まではいたのですが。サナさんにご用事だったんですね?」


そう言うとアンジュ様は急に元気がなくなってしまった。

どうやら私がサナに用事があって来たのだと思ったようだ。


「あの、誤解させてしまったようでゴメンなさい。サナに用事があって来たわけではないのですよ。アンジュ様にお会いしに来たんです。」


私の言葉にアンジュ様の顔に笑顔が戻った。

もしかしたら妹がいたらこんな感じなのかもしれない。


「あ、あの私に会いに来てくださったんですか?う、嬉しいよ〜。」


アンジュ様がちょっと泣き出した。

え、待って!そんなに?泣くほどなの?

私は焦ってアンジュ様にハンカチを差し出した。


「アンジュ様、こちらをお使い下さい。せっかくの可愛いお顔が……。」


すると私の言葉にアンジュ様が赤くなっている。

差し出したハンカチで顔を覆うようにモゴモゴ何かつぶやいているようだ。

『うう〜〜リリーナお姉様が男前過ぎるよ〜〜。かっこいいよーー』


微妙に聞き取れないが涙は止まったようなので良しとしよう。


「う〜〜、ゴメンなさい泣いたりして。ところで私に用だったんですよね。 」


アンジュ様が目を輝かせて私を見ている。

どうしよう、会いには来たけど用事ってほどでもない。


「あのですね、用事と言いますか……その、最近アンジュ様にお会いしてなかったので、会いに来てしまったのですが……用事はないんです。」


私は素直に言った。

また泣かれたらどうしようと思ったが、アンジュ様を見ると……。

え?満面の笑顔?


「私に本当に会いに来てくださっただけなんですね!リリーナお姉様が私に!」


本当に嬉しそうに体をクネらせている。

うん、今度からは定期的に会いに来るから落ち着いて。

可愛い子がその動きはマズイって。

私は密かにアンジュ様にもっと頻繁に会いに来ようと心に決めた。


コンコン。


その時部屋をノックする音が聞こえた。

「はーい!」と返事をしながらアンジュ様がご機嫌でドアを開けた。


「失礼いたします。」


入って来たのはサナだった。


「あ、こちらにいらっしゃったんですねリリーナ様。」


サナがホッとしたように言った。

もしかして私のこと探してた?


「あらサナ、私のことを探してたいたのかしら?何かあったの?」


「はい、実はさっき見廻りに出ていた者から魔物が現れたと連絡が入りました。しかもどうやら騎士団の方達が向かった方角に結構な数が出現したようで、リーザ様がリリーナ様に行ってもらえないかと。今、みんな出払っていてすぐに動ける者がいないらしいのです。」


「わかったわ、今すぐ向かいます。」


そんなのすぐに向かうに決まってるじゃない。

さあ、行こう!

私が部屋を出ていこうとすると。


「リリーナお姉様!私も連れて行って下さいませんか?」


え?ダメでしょ。危ないよ?

私がためらっているとサナが会話に入ってきた。


「リリーナ様、私も参ります。アンジュ様もお連れになられても大丈夫ですよ。アンジュ様は結構お強いですから。」


え?そうなの?

本当にサナとアンジュ様は仲良しなのね。


「では、急いで行きましょう。ふふ、今日は女性だけの魔物狩りね。」


いつもアレン君やトーマとばかりだから新鮮だ。

これはこれで楽しそうね。

うん、でもこれも人助け!気合い入れて行こう!

私達は急いで支度をして屋敷を後にした。




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