レオンの独り言
初めてリリーナを見たとき、私はリリーナが光って見えた。
私は小さい頃の出来事から女性が苦手だ。一時期よりはマシになったがそれでも話したり近くに寄られるのは避けたい。
こんなことでは王子として役立たずなことは自分が1番わかっている。
しかし、どうしても心と体は言うことを聞いてくれない。
リリーナに会ったとき私は13歳。
王族としては婚約者がいない方が問題のある年齢だった。
しかしその頃の私は、女性と共にある未来なんて全く想像出来なかった。
そんな時に突如現れた希望の光。
女性が苦手になってから初めて好意を持った相手、それがリリーナだ。
最初は戦っている姿に見惚れた。
そして私に興味を持たずに、普通に接する姿に微かな好意を持った。
きっかけなんて些細なことだ。
リリーナは今まで会ったどんな令嬢とも違う魅力を備えた素晴らしい存在だと気づくのに時間はかからなかった。
私の気持ちはすぐに父上や母上にばれた。
今まで全く興味を持たなかった女性というものに興味を持ったのだから当たり前だ。
この頃の私は必死だった。
初めて好意を持ったリリーナとの関係を繋ぎ止めることに。
父上や母上に無理を承知でリリーナを婚約者に迎えたいことを訴えた。
2人はその事を喜び、1ヶ月後にはリリーナを婚約者にする話がまとまった。
しかしそこからが受難の始まりだったのだ……。
ケース1 挨拶
リリーナが王妃教育を受ける為に城に通って来るようになった。
私は毎日が楽しくてしょうがない。
しかし、まだ体が受け入れてくれない為リリーナを見るときは細心の注意が必要だ。
リリーナは私を見つけると挨拶に来てくれる。
しかしその時の笑顔がヤバイのだ。
初めて近くでその笑顔の洗礼を受けたとき私は体に電流が走った。
実際アレは心臓が少しとまったと思う。
本当は私も笑顔で挨拶を交わしたいのだが、今の私はその都度目を合わせないようにして早口で挨拶を返すのが精一杯だ。
リリーナが不思議そうな顔をしている。
本当にすまない。
いつか笑顔で挨拶が出来る日が来るだろうか……。
ケース2 訓練
私が剣の訓練中に怪我をしたことがあった。
かすり傷だったが思ったより血が出ていた。
すると偶々訓練を見学していたらしいリリーナが近づいて来た。
リリーナが私の訓練を見ていてくれたことに、私は舞い上がるほど嬉しくなった。
そしてリリーナはなんと私の手当てをしてくれようとしたのだ。
リリーナが私の手に触れた。
ああ、なんていい匂いなんだ。
こんなに近くにリリーナがいるなんて……いるなんて?
うわーーーー。
私はリリーナの手を振り払い逃げるようにその場を後にした。
あ、あんなに近くにリリーナがいたのだ。
心臓が今までにないぐらいの勢いでドクドクいっている。
顔が熱い。たぶん恐ろしいくらいに赤くなっているはずだ。
こんな姿をリリーナには見せられない。
……だが、リリーナはこんな私をどう思っただろうか。
手当てをしようとしたのに全力疾走で走り去るなんて。
ああ、何で私はリリーナの側に行けないんだ。
行きたい気持ちは有り余るほどあるのに、体は言う事を聞かない。
いつかリリーナの近くにいても冷静でカッコいい男になれる日は来るだろうか……。
ケース3 パーティー
私も王子の為、絶対に参加しなければならないパーティーがある。
これが非常に厄介なのだ。
絶対女性に絡まれる……。
何だってあんなにグイグイ来るんだ?
私にはリリーナという最高に素晴らしい婚約者がいるのに。
毎回毎回飽きもせず面白くも何ともない話を持ちかけてくる。
女性は苦手だが狭い場所で一対一などでは無ければ逃げなくても、まあ大丈夫だ。
ただ大丈夫とは言っても油断すると震えそうになったり、固まったりしそうになるが。
ある時パーティー会場でリリーナが数人の女性に囲まれる場面があった。
心配になり気配を消して近づいてみると案の定、絡まれていた。
「どうして貴女のような田舎育ちの方がレオン王子の婚約者になれたのかしらね?」
「あら、きっと宰相様であられるお父君の御力ではなくて?」
「レオン王子とは合わないようだと伺いましたわ。早めに領地にお帰りになったほうがよろしいのではなくて?」
……怖え。
こほん。何ていうか凄いな。
どうしてここまで嫌味が言えるのだろうか?
だいたいこいつらはリリーナがどれだけ真剣に王妃教育を受けているか知らないのだろう。
しかしリリーナはいくら文句を言われようと笑みを浮かべて話を聞いている。
貫禄が違う。
だけどいくらリリーナが平気そうにしてたって私には耐えられない。
リリーナが辛い目にあうのは嫌だ。
私が出来ることと言えばこいつらをリリーナから引き離すことだけだ!
私は然も今来たように現場に近づいた。
リリーナと奴らが私に気がついた。
「やあ、こんなに端にいたのではせっかくのパーティーなのに勿体無いではないか。あちらに行き少し話さないかい?リリーナ、君もパーティーを楽しんでおくれ。」
私はリリーナを囲んでいた奴らを全員引き連れてリリーナから離れた場所に誘導した。
私が出来るのはこのぐらいだ。
リリーナと2人になった方が良いのはわかっている、しかしそれは無理だ。
私の心臓がもたない。
そして心とは反対に余計リリーナを傷つけることになる。
……だけど、本当はこの方法が失敗だったことは気づいている。
壁際でリリーナが1人佇んでいる。
……ごめん。
やっぱりまた私は間違ったんだね。
いつも行動してから、リリーナの反応を見て思うんだ。
私の行動でリリーナを悲しませたり、呆れさせているって。
私はどうしたら良いんだろう?
1番良い方法を私は知っている……。
でも、それは出来ない。
だってリリーナを手放せば良いってことだろう?




