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とりあえず今日は屋敷に帰ることになったので、城を出ようとしたところ見覚えのある後ろ姿を見つけた。

あれはアレン様?

それから……もう1人いる。

私が声をかけようと近づくと、2人がこちらに気づいた。


アレン様は笑顔で近づいて来ようとしているが、もう1人は……。

え、ダッシュ?

凄い勢いで近づいて来た!


「リリーナお姉様ーーーー!!」


そう言って私に抱きついてきた。

たぶんこの人がアンジュ様なんだよね?

思っていた感じと違った……。

今の勢いで抱きついてきたら普通の人、吹っ飛ぶよ。


「やっと。やっとリリーナお姉様にお会いできました!私感激です!」


アンジュ様は涙目で私にしがみ付いている。

ああ、なんかかわいい子を泣かせているみたいで凄く困る。

私はちょっと周りを見て助けを求めてみた。


あれ?何でみんなちょっと離れたところから微笑ましいものでも見るみたいに見学しているの?

今助けが必要な場面だよ〜。

私がかなり困っていることに気づいてくれたのはアレン様だけだった。



「こら!アンジュ、リリーナ様を離せ!リリーナ様すっごく困っているぞ。」



アンジュ様はアレン様の言葉を受けて私のことを見つめてきた。


「リリーナお姉様がお困りに?……あ、あの申し訳ありません。私、ずっと、ずっとお会いしたくて。それで、あの、暴走してしまって……本当にすいません!」


アンジュ様はさっきまでの嬉し涙を浮かべた顔ではなく、心細そうな不安な顔で謝罪してきた。

別に困りはしたが怒っているわけではないよ。

私は怖がらせないように出来るだけ優しい口調で話しかけた。


「怒っているわけではありませんわ。ただ突然だったので驚いてしまいましたの。あの、あなたがアンジュ様ですよね?本物の。」


私の言葉に勢いよく首を縦に動かしている。

あれ?誰かも同じ動きを最近していたような……まあ、いいか。


「すいませんでしたリリーナ様。アンジュがどうしてもリリーナ様にお会いしたいってきかなくて。」


「だってアレンばっかりずるいわ!私だってリリーナお姉様とお会いしたいってわかってるくせに。」


アンジュ様が頬を膨らませてアレン様に抗議している。

あ〜〜、なんか子リスみたいで癒される〜。

でもさっきから微妙に気になっていたんだけどお姉様って、何で?


「お2人は私と会うためにこちらで待っていて下さったのですか?」


「あ、はい!一応俺たち公爵家の者ですが今回の騒ぎのことや、この間まで平民だったのでリリーナ様のお屋敷に訪ねて行くのはちょっとと思いまして。なのでここで待たせてもらいました。」


「そうでしたの。わざわざ待っていてくれたのですね。ありがとうございます。私もアンジュ様にお会い出来て嬉しいですわ。」


私がニッコリ笑ってそう言うとアレン様とアンジュ様は2人とも真っ赤になってしまった。

なんか2人でコソコソ会話している。

『うわ〜〜リリーナ様の笑顔破壊力半端ねえ』

『う、う、女神様がいるよ〜〜。お姉様カッコいいだけじゃなく綺麗過ぎる〜〜。』

2人は仲良く深呼吸をしてこちらに向き直った。


「あの、不躾な質問で申し訳ないんですが……。リリーナ様はこの後領地に帰られるんですか?」


アレン様が聞きにくそうにそんなことを聞いてきた。

そうだね、婚約破棄も成立したことだし王都にいる理由もなくなったもんね。

領地に帰って母の手伝いをしながらゆっくり過ごすのもいいよね。


「そうですね、今すぐとはいかないかもしれませんが領地には戻りたいと考えております。」


私の答えを聞くと2人は顔を見合わせ頷いた。

そしてアレン様がこう切り出した。


「リリーナ様!お願いがあります。どうか俺たちを一緒に連れて行ってはもらえないでしょうか?」


一緒に連れて行く……えっ?

アレン様とアンジュ様を領地に?


「あの、何故そのような事を?先程公爵から伺いましたが、お2人には自由にしてほしいと公爵は考えているようでしたよ。」


「リリーナお姉様、私達はずっとリリーナお姉様にもう一度お会いしたかったんです。そして改めてお会いしてリリーナお姉様の人柄に惹かれてしまいました。どうか私達を雇っていただけませんか?知っての通りアレンは戦うことが得意になりました。私もリリーナお姉様のようになりたくて修練を積みました。足手まといにはなりません!お役に立てるように一生懸命頑張りますのでお願いします!」


2人は揃って頭を下げている。

この間まで平民として生活をしていたとは言え、ここ何ヶ月間は公爵家で生活していたのだ。

そんな人達を雇っていいの?

確かにアレン様のあの腕前なら領地での魔物狩りだって楽勝だよ。

だけど……。


私が悩んでいるとさっきまで姿がなかった兄がひょっこり現れた。


「別にいいんじゃないか?こいつらだっていろいろ考えての事だろうし。」


「お兄様……突然現れて何を……。それにお2人のお母様はよろしいのですか?王都にいるのではないのですか?」


「母は……バカ親父について行くそうです。なんか俺たちも昨日聞いたばかりでアレなんですが……。実は異母兄だと思っていたアレク兄さんが、実兄だったんですよ。母が産んだそうです。なんか、ここで言うのはアレなんで詳しいことはまた今度。ただ、親父と母はお互いを想いあっているようです。」


アレン様はどこか恥ずかしそうにしながらそう言った。

公爵ったら領地で永蟄居でも楽しそうですな。


さて、私はここですぐに返事をしなければいけないのかな?

2人とも縋るような目で見てくるし。

ああ、もうわかったよ!面倒見るよ!


「……わかりました。一応お父様にも確認してみますが、お2人に覚悟がお有りなら一緒に行きましょう。」


私の言葉を聞きアンジュ様がまた暴走しかけたが、アレン様がおさえこんだ。

さすが双子。

良いコンビだね。


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