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「……公爵領の3分の2を没収。家督は長男のアレクが引き継ぐものとする。反乱の首謀者の公爵は領地にて永蟄居を命じる。」


今、謁見の間では今回の反乱グループの処分が発表されている。

公爵以外の反乱軍の貴族は、公爵以上の処分を受けていた。

その理由は反乱を起こした貴族が叩けばこれでもかというぐらいホコリが出てきたためだ。

税の違法徴収、奴隷の売買、取り引きが禁止されている商品の売買、これ以外でも出てくる出てくる。

証拠も一緒に出されれば反論だって出来るはずがない。

彼らは調査の手が自分達に届く前に反乱を起こしてしまえと安易な考えに至ったのだ。


反乱に関わっていない貴族は公爵だけが領地にて永久的に謹慎処分になっていることへは一定の理解を示した。公爵が不正は行っていないことや、父が各貴族に根回しをし反乱をこの程度に抑えた原因が公爵のおかげだということを匂わせたのだ。


ただ今回の反乱理由に挙げられたレオン様の次期王への資質については……。


「レオンについては今の段階では王の資質を認めないものとする。このまま何もせず自動的に次期王になることだけはない。何らかの功績を残し、皆に認められない限り王位はつがせないことを今ここに宣言する。」


少なからずレオン様の行動に疑問をいだいて貴族もこの発表には安心したような顔をしている。

やっぱりレオン様の私に対する態度は普通に考えておかしいものだったんだ。

そして王様はこう続けた。


「レオンとリリーナ嬢の婚約は……解消する。」


視線が痛い。

みんながこちらを見ている。

本来であれば私はこの場にいないはずの人間なのだけど、反乱騒動にも関わっているしそもそも婚約破棄の問題が少なからず関係しているので出席していたのだ。

視線の中で一際強烈なモノがある。

ちらっと確認したが、もちろん今回もレオン様だ。

いつもは私と視線が合うとすぐに違う方を見るのに、今日は目が合うとビクッとなったあとちょっと嬉しそうな悲しそうな微妙な表情を見せている。

反乱の時に今までで1番一緒にいて、話しもしたから多少慣れたのかな。


「これにて今回の騒動の報告は終わりとする。皆には心配をかけたがこれからもよろしく頼む。」


報告会は終了のようだ。

ただ私達家族と公爵それから何故かクリス様が当たり前のようにいるんだけど、いいの?



「リリーナ嬢、この何年もの間時間を取らせておいて婚約解消になってしまい本当に申し訳ない。」


王様が土下座しそうな勢いで謝っている。

レオン様は何か言いたげだけど珍しく空気を読んで黙っていた。


「貴方が本当の娘になる日を心待ちにしていたのに……本当にバカ息子のせいで!」


レイチェル様が愛用の扇を握りしめている。

なんかミシミシと音が聞こえるような気がする。


「お詫びではないがリリーナ嬢の望みを叶えたいんだが、何かないかな?宰相にも聞いてみたんだが実際に苦労したのはリリーナだからリリーナの望みを叶えてくれと言われてね。」


あら、父ったらそんなこと言ってたんだ。

私の望み……か。

いきなり言われても思いつかないものだね。


「申し訳ございません。突然の御言葉で何も思いつきません。ただ、気になっていることがあるのですがお聞きしてもよろしいですか?」


「うむ、答えられることなら何でも答えるぞ。」


「アレン様とアンジュ様はどうなってしまうのでしょうか?先程のお話では特に処分のお話は出ていませんでしたが。」


「ああ、公爵が引き取ったという双子だな。それだったら公爵から話をした方がいいだろう。」


そう言うと王様は公爵に説明するよう促した。


「リリーナ嬢、我が子供達を心配してくれてありがとう。あの子達は凄くリリーナ嬢に懐いているようだ。あの子達には自由にするように伝えた。平民に戻るのも良いし、貴族として生きていくならそれでも良いと。少し考えてみると言っていたが……答えは出ていたのかもな。」


とりあえず罪に問われることはなさそうでよかった。

きっと貴族なんて嫌になって前の生活に戻るのかもね。


ここで不意にクリス様が口を開いた。


「リリーナの婚約が白紙になったということは、新しい婚約を結んでも罪には問われないですね。」


クリス様はニッコリ微笑んでそんなことを口走った。

途端にレオン様から不穏な空気が……。


「リリーナ。私の国に来ないかい?魔物はあまりいないけどこの国では見られないものがたくさんあって楽しいよ。……えーっと端的に言うと私の婚約者になってくれないかな?」


……え?

ええーーーーー!!

何でこんな場所でそのセリフ?

内心かなりビックリしている私とは逆にクリス様といえばニコニコしている。


「クリストファー、貴方展開が早すぎてリリーナが驚いているわよ。」


レイチェル様がクリス様の暴走を止めようとしてくれている。

あれ、でもレイチェル様クリス様のこと呼び捨てにしているようだ。


「しかし伯母様、早めに対処しないとリリーナは人気がありますからね。他の誰かにさんに奪われる前に結ばなければまた奪われてしまうでしょう。」


伯母様ってレイチェル様とクリス様の母親は姉妹ということかしら?

私が変なところに引っかかっているうちに話しが進んでいた。


「で、リリーナ私の婚約者になってくれるかな?」


「いい加減にしろ!リリーナはおれの……フガフガ」


レオン様が何か騒いでいるが、兄が口を塞いで遠くに運んで行った。

たまに「バカルド離せ!」とか「誰がバカルドだ!」なんて聞こえる。

相変わらずの2人だね。

現実逃避したくなるけど、目の前にはクリス様の綺麗なお顔がこれでもかと微笑んでいる。

流されそうだけど、ここはグッと堪えて。


「クリス様、私はたった今婚約が白紙に戻ったばかりです。なのにすぐに違う方の婚約者になるというのは世間体が悪すぎます。御言葉はとても嬉しいですがすぐにはお応え出来かねます。」


大国の王子に失礼だとは思ったけど、レオン様がダメだからハイ次というのは自分が許せない。

確かにクリス様に惹かれている部分は私の中にあると思う。

だけど今すぐは無理だよ。


私の失礼な言葉にクリス様は破顔された。


「はは!やっぱりリリーナはイイね。流されてくれるかなぁと少し思ったけど、やっぱり無理か。うん、わかった。でも私は諦めないよ。もう何年も待ってやっときたチャンスだからね。」


クリス様は笑顔で私の頭をポンポンっとした。






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