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「ねえ、レオン。隠し通路の一つや二つあるんでしょ?」


隠し通路か……。

確かにありそうだね。

うーん、例えばあの暖炉の中とか。


「……ある。緊急事態だししょうがない。この事は言うなよアレン。」


「わかってるよ〜。さあ早く早く。」


早速レオン様が暖炉の中をいじりだした。

あ、暖炉正解だった。

何かボタンを押したのかカチッという音がして暖炉の奥の壁が開いた。


「ふう、開いたぞ。この通路は二カ所につながっている。一つ目が城の外、もう一つが謁見の間だ。ちょうどカーテンで隠された場所に出る。とりあえず謁見の間に向かって様子を見てみよう。」


3人で謁見の間を目指す事にした。

前からレオン様、アレン様、私の順番だ。

道が複雑だから前を歩くわけにもいかない。

ここにまで追っ手が来なければいいけど。

後ろを警戒しながらも私は前を歩くアレン様に聞きたい事があったので聞いてみた。


「アレン様、歩きながらで申し訳ありませんが質問してもよろしいですか?」


「はい!リリーナ様からの質問でしたら何でも答えますよ。さあ、どうぞ!」


すっごく喜ばれてる?

顔は前を向いているから表情はわからないけど、声の調子は明るい。


「あの、公爵はアレン様の姉君のアンジュ様をレオン様に嫁がせようとしていたんですよね?なら、何故このタイミングで反乱なんて起こしたのでしょうか。たぶんですけど公爵は私が婚約破棄されたこともご存知だったのではないのかしら。」


「うーん、あのバカ親父はバカはバカなんですけど、一応建前は国の為って言ってましたよ。レオンのリリーナ様に対するイロイロを教えてくれたのはアイツでした。そしてそれこそが理由らしいんですよ。要はこんな王子で今後の国は大丈夫なのか?ってね。」


「ウワッ」

前方で今の会話を聞いていたらしいレオン様がコケそうになっている。

まあ、散々な評価ですからねぇ。


「おい、レオン大丈夫か?え?いいから先を急ぐぞって。はいはいわかりましたよ。んで、何でしたっけ?あ、そうだ。今反乱を起こした理由ですね。たぶん、アンジュを嫁がせるのが難しいと思ったからですかね。詳しい事はさすがにわからないんです。すいません。でも、婚約破棄を仕掛けた事はバカ親父に報告しちゃいました。俺的には実現させたかったので。」


ふむふむ、じゃあ婚約破棄の事は公爵も知っていたのね。

では領地に帰る時に襲ってきた覆面男達に依頼したのは……。


「答えてくださってありがとうございます。」


「いえいえ、リリーナ様に頼まれたら何だってしますよ。遠慮しないで何でも言ってくださいね。」


私、もしかしなくてもメチャクチャ懐かれている?

何か幻の尻尾が見えるわ。

尻尾がスゴくブンブンしているような錯覚が。


しばらく歩いていたら、レオン様が立ち止まった。


「ここの角を曲がればすぐに謁見の間に出る。まず、私が見てくるからここで待っていてくれ。」


レオン様1人で行くの?

大丈夫かな?

私とアレン様は黙ってレオン様の帰りを待った。

数分後レオン様が帰ってきた。

その顔は暗い。


「どうだったレオン?」


「ああ……。父上と母上は捕まっているようだった。怪我などはなさそうに見えたが……。」


レオン様はショックを受けているようだ。

そりゃそうだよね、いくら稽古をしていたからといってこんな実戦モードはあまりというか今までないんじゃないかな?

昔、うちの領地で魔物に襲われそうになっていた後は戦争もないし、魔物も王都には出ないし、いたって平和なんだよね。

レオン様に荒事って似合わない。


「レオン様、反乱軍は謁見の間に何人ぐらいいたかお分かりになりますか?」


「そうだな……見える範囲には15人ぐらいだった。公爵の姿も見えた。」


15人か……。

人質がいなければ余裕なんだけど。

でも、たぶん公爵は私の腕前を知らないようだし油断するはず。

後はレイチェル様がどう出るか、かな?


「だが公爵はこの反乱を成功させた後どうするつもりだったんだろうな?」


「うーん、確かアンジュをレオンの正妃に据えて自分が操るみたいな?王様や王妃様は殺すことはせずにどこかに軟禁状態にするつもりだったみたい。血は流さずにって言ってたけど。」


おーい。

血を流さずの割に、私には容赦ないんじゃないかな?

さっきだって逆らったら生死を問わないって言ってたし。


「ふん、傀儡か。」


「そんなに上手くいくものかねぇ。正直俺やアンジュみたいにこの間まで平民だった者にしてみれば国が荒れずに平和ならレオンがバカでも問題はないんだけどね。」


あ、本人目の前にバカって言っちゃったよ。

さすがにマズイのではと思いレオン様の方を見ると……怒ってない?

むしろあきらめ顔でこうつぶやいた。


「そうだな、バカだよな。リリーナに甘え、父上や母上にも甘えこんな状態になって……。」


すっかり落ち込みモードに入ってしまった。

今その状態は困る。


「レオン様、今はお二人を救う事に集中しましょう。もしも今までのことを悔いているのであればここで名誉を回復いたしましょう!」


「……ああ、わかった。今は二人を救う事だけを考えよう。すまんリリーナ弱気になっていた。俺が救わないで誰が救うんだ。」


よし、何とかやる気を出してくれた。

さてそうしたら準備をしなきゃ。

私は持っていた紐で下ろしていた髪を一つに結んだ。

そしてさっき襲ってきた兵士から奪った剣でドレスのスカート部分の下を切った。

ちょっと短いけどこれでだいぶ動きやすい。


「ちょ、ちょっとリリーナ!何をしているんだ!」


レオン様が真っ赤な顔をして叫んでいる。

アレン様も少し顔が赤い。


「え?何って、動きやすくする為にドレスを切ってみたのですが……。」


「いやいや、何でそうなる?しかも男が二人もいるのにいきなりそれはマズイだろう?」


「あ、申し訳ありません。変な姿を見せてしまって。」


「……あーー、うん、もういい。リリーナ今は緊急事態だから良くはないけどしょうがない。だけど今度から男の前でそれをやったらダメだからな!」


あら、レオン様に怒られてしまった。

でも、さっきの変な落ち込みからは回復したようだし良かったね。

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